本稿の要約を10秒で
- 効果的なコミュニケーションやコラボレーションのスキルといった「ソフトスキル」の獲得は、チームの成功に欠かせない要素である
- 目標や責任についてチーム全員の足並みをそろえることは、チームのリーダーにとって大切なミッションと言える
- 意思決定や問題解決にあらかじめ定めた手順を用いることで、チームがボトルネックに振り回されないようにすることができる
チームワークのパワーを最大限に引き出すために
チームワークが持つパワーは強力だ。個々人の強みを生かしながら、多様な視点、アイデアを融合させることで、難度の高いプロジェクトであっても効率的に遂行していくことが可能になる。
ただし、チームワークのベネフィットが得られるのは、チームのメンバーが効果的に協力し合っている場合に限定される。言い換えれば、チームの成功は自然にもたらされるものではなく、メンバーによる自律的な意思決定や積極的な行動を促し、チームとして最高の仕事ができる環境を築くことで初めて実現されるものなのである。
そうした環境を築くうえで必須となるのが、以下に示す7つのスキルである。もし、あなたがチームのマネージャーであり、自分のチームのパワーを最大限に引き出したいと望んでいるのであれば、以下に示すスキルが自身のチームに備わっているかどうかを点検していただきたい。
スキル1: コミュニケーション
We never listen when we are eager to speak.
(自分が話したいときは、決して人の話を聞かないものである)
── フランソワ・ド・ラ・ロシュフーコー
コミュニケーションのスキルは、チームワークを強固にするうえで欠かせない、きわめて重要なスキルである。実際、プロジェクトが失敗に終わる場合、その要因の多くはチームにおける「ミスコミュニケーション」にある。
ゆえに、チームをうまく機能させるには、メンバー同士が適切にコミュニケーションをとり、物事に対する見解、認識を一致させておかなければならない。また、そのためにはチーム内で仕事に関するあらゆる情報をオープンに共有し、相手の期待に沿った行動をとること、そして、相手の仕事に対して建設的なフィードバックを提供することが必要とされる。
さらに、チームワークを強化するうえでは、チーム内でメッセージを共有するだけではなく、相手の話に全神経を集中させて耳を傾ける「アクティブリスニング」のスキルも必要とされる。このスキルには、メンバー間の相互理解と信頼関係を深め、誤解やすれ違いを防ぐ効果がある。
良質なコミュニケーションを実現するテクニック
- チームの全員が「外交的」であるとは限らず、メンバーの中には自分の意見を人前で言うのが苦手な「内向的」な人もいる(はずである)。
このうち、外交的な人は会議の場で他者の提案、アイデア、意見に即座に反応し、自分の意見を述べようとする。それは決して悪い行動ではない。ただし、その行動が行き過ぎると、内向的な同僚から発言の機会を奪うことになる。したがって、会議の主催者は、すべてのメンバーの声を全員に届けるべく、会議のアジェンダを参加者全員に事前に送り、考えをまとめてもらっておくことが大切である。そのうえで、会議中にすべてのメンバーに発言の機会が与えられたかどうかを確認しなければならない。
なお、チームにおける会議運営のより詳細なガイダンスは、アトラシアン「Team Playbook」にある「インクルーシブミーティング」のプレイを実行することで確認できる。 - チーム内のコミュニケーションは常にフォーマルである必要はない。例えば、少し砕けた対話を通じて個人的な趣味・嗜好を互いに知ることで、情報やアイデアをより伝えやすくなる。また、チームの全員に「自分自身のユーザーマニュアル(取扱説明書)」を作成してもらえば、それぞれが好むコミュニケーションチャンネルやフィードバックの受け取り方、さらには、ともに仕事を進める際の細かな注意事項を相互に、かつ精神的なストレスを感じることなく伝え合うことができる。
- チーム内の情報がサイロ化しないように、定期的にスタンドアップミーティングを開催する。これは、チームの目標、仕事の進捗状況、直面している課題について確認し合う短時間(15分程度)のミーティングだ。その実施によって、チームの全員が互いの情報、状況を共有し、足並みをそろえることができる。
スキル2: コラボレーション
Alone we can do so little; together we can do so much.
(人間は一人ではほとんど何もできない)
── ヘレン・ケラー
コラボレーションとチームワークは同義語であり、人を集めてチームを組織しただけでは効率的で効果的なコラボレーションは実現されない。
チームにおけるコラボレーションを有効なものにするための最初の一歩は、メンバー各人の役割、責任、タスク、タスクの期限を明確にし、個々の仕事が全体にどのような影響を与えるかをメンバー全員に理解してもらうことが必要とされる。また、そうすることでメンバー各人の責任感が強まり、直面した課題に対して自ら解決策を見い出そうとしたり、能動的、かつ積極的に課題解決を図ろうとしたりするようになる。
効果的なコラボレーションを実現するテクニック
- チームのメンバーは、大抵の場合、自分が何を成すべきかを理解している。ただし、自分のチームメイトたちがどのようなミッションを背負い、いかなる仕事に携わっているのか、また、その仕事の進捗がどうなっているのか、さらには、どのような課題に直面しているかがよく見えていないことが多い。こうした状況は、コラボレーションの効率性や効果を低下させるものだ。したがって、まずはメンバー全員の役割と責任を詳細に記した共有ドキュメントを作成するのが適切である。ちなみに、アトラシアン「Team Playbook」にある「役割と責任」のプレイを実行することで、チームのメンバー各人の役割分担や責任の所在を明確にし、各人の担当業務に疑問や混乱が生じないようにすることが可能になる。
- チーム内のコラボレーションがうまく機能しなくなる大きな要因の一つは、メンバー各人がタスクの依存関係が把握できていないことだ。例えば、チームの「メンバーA」のタスクの1日遅れることで、「メンバーB」のタスクに多大な負の影響が出るにもかかわらず、メンバーAはそのことを知らず、自分の担当タスクについて「1日程度完了が遅れても大した問題ではない」と見なしてしまっているかもしれない。このような状況を避けるためにも、タスクの依存関係を明確にし、メンバー各人のタスクが、チーム全体のタスクとどう関係しているかを把握できるようにすることが大切である。
アトラシアン「Team Playbook」にある「依存関係マッピング」のプレイを実行することで、チームが担うすべてのタスクの依存関係を明らかにし、どこがボトルネックになりうるかを特定して、それに対するマネージをプロアクティブに行っていくことが可能になる。 - 例えば「ビデオ会議で自分が話していなときには音声をミュートにする」「メールで長いメッセージを伝える際には、箇条書きにする」など、チーム内には(正式に明文化はされていないものの)日常的に遂行されてるコミュケーションルール、ないしはコラボレーションルールがあるはずである。
そうしたルールについては、明文化して共有し、定期的に見直しをかけるようにするのが適切である。そうすることで、仮にチームに新人が加わっても、すぐにチームの文化(仕事の進め方)に馴染むことができる。
なお、ワーキングアグリーメントを作成することで、これまで暗黙の了解となっていたコミュニケーション、コラボレーションの取り決めを明文化し、整理したかたちで共有することができる。
スキル3: 目標設定
If you don’t know where you are going, you will probably end up somewhere else.
(自分の行き先がわからなければ、自分の望みとは異なる場所に行き着く)
── ローレンス・J・ピーター
チームワークとは、メンバー全員が共通のゴールを目指す作業でもある。したがって、まずはチームが目指すべきゴールを明確にし、それに対する全員の合意を形成しなければならない。
この合意形成は、チームマネージャーの仕事となるが、マネージャーの多くは「チームの目標はすでに明白であり、改めて明確に示さずともメンバーの全員が理解し、同意している」と思い込みがちだ。ところが、チームの目標をしっかりと理解していないメンバーのほうが多いのが現実と言える。実際、ある調査によれば、企業の従業員の72%が会社の戦略を十分に理解していないという(参考文書 (英語))。
したがって、チームのマネージャーは、会社の目標と、その目標がなぜ設定されたのか、また、その目標の達成に向けてチームやメンバー各人が何を成すべきかを、メンバー全員に明快に説明できるようでなければならない。また、それだけではなくチーム目標を設定するプロセスにチームの全員を参加させる必要もある。そうすることで、メンバー各人はチーム目標を自分ゴトとしてとらえ、チームの成果に対するオーナーシップマインドを抱くようになるからである。
目標設定のテクニック
- 目標設定フレームワークの「OKR(Objectives and Key Results:目標と主要な成果)」や「チームの目標、シグナル、指標」のプレイなどを使用することで、チームが何を目指しているのか、いつそれを達成できるのかをメンバー全員が把握できるようになる。
- 設定したチームの目標をアトラシアンのデジタルワークスペース「Confluence」のページなどに記載し、保管することで、チーム全員が必要なときに参照できるようになる。