アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、ハイブリッドワークの効力を高める「ワーキングアグリーメント」の作り方について指南する。

本稿の内容を10秒で

  • ワーキングアグリーメントとは、仕事の進め方に関するチームの文化を明文化したものである。
  • ワーキングアグリーメントがあることで、チームの新人の“立ち上がり”がスピーディになる。
  • 「行動ルール」や「コミュニケーション」に関する正式な合意がないと、チームの士気は下がり、パフォーマンスの低下やストレスの上昇を招く。
  • ワーキングアグリーメントは、変更不可の「掟(おきて)」ではなく必要に応じて修正や刷新が行える。

「ワーキングアグリーメント」とはそもそも何か?

「ワーキングアグリーメント」とは「チームアグリーメント (チーム協定)」とも呼ばれ、チームで取り決めた仕事上のルールや価値観などを明文化した文書を指している。

この文書には、「仕事の手順(プロセス)」をはじめ、仕事で使う「ツール」や仕事に関する「価値観」「説明責任」、さらには「意見の相違を解決する方法」に至るまで、幅広いトピックが含まれる。以下は、ワーキングアグリーメントの文例である。

ワーキングアグリーメントの例

  • 私たちは(チームが拠点を置く現地時間で)午前9時から午後5時までを目安に仕事をし、それ以外の時間はチャットやメールに応じない。
  • 私たちは、チームの戦略や計画、決定事項をアトラシアンのツール「Confluence」を使って文書化し共有する。また、チーム内のコミュニケーションには原則として「Slack」を使い、メールの使用は極力避けるようにする。
  • タスクの管理にはアトラシアンの「Jira Software」を使用し、Jiraのチケットをクローズする際には、今後の参考のために、どのように作業が行われたかのメモを追加しておく。
  • 私たちは失敗をオープンに共有し、体系的に処理する。失敗を責め立てたり、責任をなすりつけ合ったりはしない。
  • 私たちは、オフィスに皆が集まっているときには「ドーナツ」を交わして成功を祝い、リモートの場合にはSlackチャンネルにドーナツの画像を表示させて祝う。
  • チームミーティングは、メンバー各人の人となりを知ることができるよう、毎回5分程度の雑談やアイスブレイクから始める。
  • オフィスで「ヘッドホン」をしているのは、「邪魔をしないで」のサインである。
  • チームのメンバーの意見やアイデア、提案に対しては、真摯に耳を傾けて内容を理解することに努める。そのうえでフィードバックをする。

ワーキングアグリーメントにどのような事項を盛り込むかは、チームそれぞれの判断による。ただし、どのような合意事項を文書化するにしても、のちに誰もが参照しやすく、理解しやすいものにすることが重要である。

ちなみに、プロジェクト管理ツールの「Trello」のワーキングアグリーメント用のテンプレート(英語)やConfluenceのテンプレートなどを使うことで協定の作成と共有化を簡単に行うことができる。

理想を言えば、企業内のすべてのチーム間でワーキングアグリーメントを互いに参照できるようにしておくと良い。そうすることで、チーム同士が、互いの仕事の進め方や文化を理解するのが早くなり、コラボレーションがしやすくなるからである。

キホンを理解:ワーキングアグリーメントは誰のため?

アトラシアンにおけるチームドクターの一人、コーリー・キング(Corey King)によると、ワーキングアグリーメントに巡っては典型的な誤解が一つあるという。

それは、ワーキングアグリーメントは結成したばかりのチームや、チームの新人のために作るもので、歴史の長い“シニアレベルのチーム”やベテラン社員で構成されるチームには不要のものであり、協定の明文化は時間の無駄でしかない、というものだ。

この考え方は、事実からかけ離れた大変な誤解です。ワーキングアグリーメントは、あらゆるレベル、あらゆるタイプのチームに利益をもたらすもので、企業内のすべてのチームが策定しておくべきものです。特定の部門に属するチーム内で協定を作るのが一般的ですが、部門をまたがったプロジェクトチームで協定を作るのも効果的です。

キングと同じく、アトラシアンのチームドクターであるマーク・クルース(Mark Cruth)も同意見だ

私は、副社長クラスの人員で構成されたチームの協定を作成した経験がありますが、それはチームのコラボレーションを円滑にするのに非常に役立ちました。

もちろん、新しく結成されたチームにとっては、ワーキングアグリーメントは必須のアイテムだ。ゆえに、可能な限り早く作成して、コラボレーションのための基礎を固めなければならない。また、かねてから存在するチームにしても、ワーキングアグリーメントを作成・改訂しなければならないタイミングは数多くある。例えば、組織の再編・成長、メンバーの変更、戦略の方向転換、働き方の変更などが、そうである。これらはすべてチームのあり方を見直す好機でもあり、その際にはワーキングアグリーメントの新規作成、ないしは改訂が必要とされるのである。

This article is a sponsored article by
''.