アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。ライター兼エディターのジェイミー・オースティン(Jamey Austin)が、チーム内のコミュニケーションを改善するための方策について説く。

対策⑤相手の話を徹底的に聞く

例えば、職場やビデオ会議の中で誰かがあなたに話しかけているとき、他に気が散って目をそらしたり、手元にあるノートブックPCの画面に目を落としたり、スマートフォンをおもむろに手にとってメールをチェックしたりしていないだろうか。おそらく多くの人が、このような行動をついついとってしまった経験があるはずだ。

実際、仕事でもプライベートでも、私たちは皆、人の話に真剣に、かつ集中して耳を傾けようとはしていない。ただし、優れたコミュニケーターになるためには、すべての対話において、人の話に「アクティブ」に耳を傾ける「アクティブリスナー」になることが不可欠といえる。言い換えれば、チーム内、あるいは職場でのより良いコミュニケーションは、人の話にアクティブに耳を傾けることから始まるのである。

チームメイトとのすべての対話においてアクティブリスニングの姿勢を維持するのは、実のところ容易ではなく、それには一定の鍛錬が必要とされる。ただし、アクティブリスニングがチーム内のコミュニケーションにもたらす改善効果は大きく、アクティブリスニングの実践によってコミュニケーションの効果は高まる。ある意味で、アクティブリスニングは、チーム内コミュニケーションを良質なものにする基本中の基本の施策であるといえる。

方策⑥フィードバックに注目する

チーム内のコミュニケーションでは、自分の意見やアイデアなどに対するフィードバックが得られるはずである。ゆえに、そうしたフィードバックにどう対応するのが適切かを考えなければ、コミュニケーションをより良いものにするための戦略は立てられない。また、メンバー相互のフィードバックをいかに建設的なものにするかは、コミュニケーション改善における最重要課題に位置づけられることもある。

そのため、本サイトでも「どうすれば、相手から建設的なフィードバックが得られるのか」、あるいは「相手に対して、どのようなフィードバックを与えるべきなのか」といった点について、さまざまなアイデアを提供してきた。

フィードバックは非常に重要だ。先に触れたアクティブリスニングが、コミュニケーションにおける相互理解を深めるためのカギであるとすれば、良質なフィードバックは、他のチームメンバーと一緒にプロジェクトを進めながら、より良いコミュニケーションをとるうえでの基本要件、ないしは、チームに対するメンバーのエンゲージメント(能動的な貢献意欲)を高めるうえでのカギといえるだろう。

とりわけ、相手の意見やアイデア、仕事に対して「批評」を行う場合には、相手はそのフィードバックをガティブに受け取ったり、自分に対する攻撃と見なしたりするおそれがある。したがって、批評をフィードバックとして出す際には、言葉選びに細心の注意が必要とされる。

また、コミュニケーションのチャネルがさまざまに存在するように、フィードバックをやり取りする経路もさまざまにある。その中で、仮にチャットやメールを使い、チーム内の特定の誰かに対するフィードバックを、メンバーの全員が参照できようなかたちで行う際には、フィードバックを受け取る当事者の面目を保つように言葉を選ぶ必要がある。要するに、特定の誰かに対する批判的なフィードバックを、多くの人の目に触れることを承知で行うのでれば、その誰かが恥をかかないようにしなければならないということだ。

もちろん、チームのメンバーに対して、率直に、かつ正直に意見をいうことを抑制しないほうがいい。ただし、だからといって相手のプライドを傷つけても良いわけではない。大切なのは、フィードバックを受け取る相手を思いやりながら、ときと場所、そして言葉を適切に選びながらフィードバックを行うことなのである。

いずれにせよ、良質で建設的、かつ誠実さに溢れたフィードバックは、フィードバックを受け取った相手の仕事をより良いものにする。そのためにも、相手のアイデアや提案、あるいは仕事の報告に対して否定的なフィードバックを出す際には、相手の人格ではなく仕事に焦点を絞った内容にすることや、代替案を提示するようにすることが望ましい。

方策⑦会議のあり方を徹底的に見直す

言うまでもなく、チームで仕事を進めていると、さまざまな会議に出席しなければならなくなる。そして多くの場合、この会議のあり方を見直すことで、チームのメンバーが重要な作業に集中するための時間をより多く確保することが可能になる。

実際、会議の中には重要なものもあるが、退屈で無意味な会議も数多くある。ゆえに、チーム内でのコミュニケーションを改善したいのであれば、カレンダーを見ながら、不必要な会議を間引いていくことが重要となる。例えば、単なる近況報告に過ぎない会議は排除すべきだろう。また、メンバー各人は、自分に関係のない会議への出席はすべて断るべきである。また仮に、仕事をしている自分をアピールする一手として会議の予定を入れる習慣があるならば、それも改めるべきである。

ビジネスパーソンにとって時間は貴重であり、会議によってその貴重な時間を無駄に費やすのは是が非でも避けなければならない。ゆえに、会議中に気が入らなかったり、退屈してしまったりして、「もっとほかに有効な時間の使い方あるのではないか」との考えに至るような会議は、自分にとって悪であり、悪いコミュニケーションの習慣であると見なすべきである。

この悪習をどこかで断ち切らないと、チームのメンバーが互いの時間や意見を軽んじるようになりかねない。したがって、会議には、チームの生産性や働く意欲、創造性を高めるものもあれば、貴重な時間や働く意欲を吸い取る会議もあることを認識し、後者のモンスターのような会議は早急に駆除することが大切である。加えていえば、組織・チームが健全であればあるほど、不必要な会議は少なくなるのが一般的なのである。

ということで、会議のあり方の改善に向けて、以下の習慣を身に付けることをお勧めしたい。

  • 会議を催す際は、アジェンダを常に用意し、参加者全員で事前に共有する
  • 会議への参加の是非は参加者に判断させる
  • 会議の長さは慎重に決めて順守する
  • 自己紹介のような時間を浪費するだけのプロセスは必要不可欠な場合を除き、排除する
  • ビデオ会議を含む対面式の会議の場では、参加者全員に会議に集中することを求め、ノートPCのふたを閉じ、スマートフォンも使わせないようにする

方策⑧「1 on 1ミーティング」を実施する

「1on1(1対1)ミーティング」は、チームのマネージャーにとって特に重要な対話の場だ。1on1ミーティングを適切に行うことでマネージャーは、メンバー各人とのオープンなコミュニケーションラインを維持することが可能になる。

またメンバーにとっても、1on1ミーティングは良い機会だ。なぜならば、このミーティングを通じて、マネージャーに個人として話を聞いてもらい、理解してもらえたと感じることができるからである。また、1on1ミーティングでは、他の機会では話せないようなトピックスについてもマネージャーと忌憚なく話すことができる。

こうしたコミュニケーションは、マネージャーとメンバーとの信頼関係の構築につながり、結果として、チーム内でのオープンなコミュニケーションを促進することにもなる。

1on1ミーティングの開催頻度や長さには特に決まりはない。また、マネージャーとメンバーの双方にとって都合が悪くないのであれば、1on1ミーティングの予定を変更したり、キャンセルしたりすることをおそれる必要もない。ただし、1on1ミーティングの開催頻度や長さを決める際には、一定の慎重さが求められる。具体的には、週1回、ないしは2週間に1回、あるいは月1回の頻度のもと、30分~1時間の長さで1on1ミーティングを実施し、すべてがうまくいっているかどうかを確認する。そのうえで必要に応じた調整を施すことが大切となる。

一方、1on1のミーティングの内容についても決まりはない。単なる近況報告で終わるような1on1ミーティングは避けたほうが良いが、それが絶対的なルールであるわけではない。仮に、プロジェクトの問題解決がマネージャーとメンバーにとっての最優先事項であり、それを議論する時間が必要であれば、1on1ミーティングその話し合いのために使っても良いということだ。ただし、他の機会でも話せるようなことを1on1ミーティングの場に持ち込み、メンバーの貴重な時間を浪費するようなことは避けるべきである。その意味でも、マネージャーとメンバーの双方が、1on1ミーディングのより良いあり方をともに考え、学んでいくことが重要といえる。

方策⑨何でも聞ける環境を築く

先に触れたフィードバックに関連して、もう一つ、チームではなく会社組織全体に対して、その方針やアイデアに意見する力をメンバー各人に持たせるべきという考え方がある。実際、会社に対する懸念や不安、疑問などを、社員が自由に発言できる環境を整えている企業は、社員たちから信頼され、投資価値が高いと見なされる傾向が強い。

ちなみに、アトラシアンでは「Town Hall」と呼ばれる全社ミーティングにおいて、社員たちからのあらゆる質問に経営幹部が対応する時間を設けている。また、会社への質問を社員が自由に投稿できるオープンな場をオンライン上に設けるのも良いだろう。さらに、必要に応じて匿名による投稿を許容し、社員たちが上層部からの非難をおそれて率直になるのを躊躇(ちゅうちょ)しないようにしても構わない。

いずれにせよ、社員たちが会社に意見をいえるオープンな場は、彼らの素直さや仲間意識を育む機会でもあり、そうした機会をさまざまに提供することは、オープンな働き方を企業文化として醸成していくことにつながる。またそれは、社員たちがより快適に働き、自分のすべてを仕事に取り込むための扉を開くものでもある。そして、その扉が開かれれば、社員たちは、より多くの自分の才能、情熱を、職場におけるすべての行動に活かすようになるのである。

もっとも、会社に意見がいえる場を整えても、社員たちが率直に、かつオープンに発言することにためらいやおそれ、不安を感じているのでは、その場はなかなか機能せず、上記のような効果は生まれない。そこで重要になるのが、チームのマネージャーが自身のコミュニケーション能力を最大限に活かしながら、オープンで良質なコミュニケーションをとる文化をチームに定着させることとなる。言い換えれば、会社に意見を言うためのシステムがうまく機能しないのであれば、それは、オープンなコミュニケーションが現場で行われておらず、社員たちが「沈黙を守ること=自分の身を守ること」ととらえていることの現れと見るべきなのである。

このような社員の心の壁を打ち破るためにも、チームのマネージャーは、チームのメンバーが自分を表現したり、何もおそれずに自分の質問したいことを質問したりできるオープンなコミュニケーションの機会を可能な限り多く提供しなければならない。また、そうすることで、チームのメンバーは、自分の意見やアイデアを何もおそれずに発言できるようになり、チームや会社の問題の解決に能動的に動くようにもなる。そして、会社に対して自分の意見や質問を投じる機会を積極的に活用するようにもなるのだ。

ちなみに、チームのコミュニケーションスキルを高めたいのであれば、メンバー各人に地域社会とかかわる機会を積極的に活用するよう奨励するのも有効だ。地域社会とかかわりを持ち、自分たちとは異なる価値観をもった人たちとの交流を多く持つことで、人のコミュニケーション能力は自ずと向上していくからである。もし、あなたのチームがコミュニケーション不足に状態に陥っているのであれば、地域社会と交流を持つという手法を試してみていただきたい。それを通じて、コミュニケーションの活発化、良質化につながる新しいルールが見えてくるはずである。


以上、チームや職場でのコミュニケーションをより良くするための方策について述べてきた。言うまでもなく、これらの方策を遂行するうえでは、コミュニケーションの改善に向けた強い意志が必要とされる。すなわち、コミュニケーションの改善は自然発生的に「起きる」ものではなく、確固たる意志のもとで「起こす」ものであり、それには相応の努力とチーム全員による賛同と貢献が求められるのである。

ゆえに、チームのマネージャーにとってコミュニケーションの改善は簡単に成しえるものではない。ただし、正しい考え方のもとで真剣に取り組めば結果は必ずついてくる。したがって、マネージャーは自ら率先して行動し、改善に向けた意志の強さを明確に示さなければならない。そして、今回示した方策を自ら実行するだけではなく、メンバー各人にも実行させ、その努力に報いていくようにする。それによって相応の効果を手にすることができるはずだ。

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