2022年11月17日、アトラシアンのプライベートイベント「Atlassian TEAM TOUR Tokyo 2022」が開催された。そのイベントで展開された基調講演のエッセンスを報告する。演題は「“分断”されたピラミッド型組織からの脱却 ~ DXを前提とした組織づくりの勘どころ」。ITコンサルティング・調査会社アイ・ティ・アール(ITR)の会長兼エグゼクティブ・アナリストで経済産業省「DX銘柄」の選定委員でもある内山悟志氏がスピーカーを務めた。

組織の変革でデジタルネイティブ世代の力を最大限に引き出す

内山氏によれば、先に示した5つの組織の文化的特性は、市場・顧客ニーズが目まぐるしく変化する現代社会にあって、デジタルを巧みに用い、目覚ましい成長・発展を遂げている企業が共通して有している(ないしは、追求している)ものであるという。

また、これらの特性を持った組織を手にすることは、デジタルネイティブ世代とされる若い世代の能力を最大限に引き出すうえでは必須の取り組みでもあるという。若い世代にビジネスをリードさせなければ、ビジネスをアフターデジタルの時代を生き抜くことはできないとする。

「アフターデジタルの時代は、過去の成功体験が通用するような時代ではありません。また、企業間のDX競争はますます激しくなっていきます。そんな中で、デジタルのことを知らない旧世代人が経営やビジネスをリードし続けようとするのは明らかに間違いで、リードすることはまず不可能といえるでしょう。その意味でも、古い組織文化を変革し、デジタルネイティブの若い世代が能力をいかんなく発揮して、ビジネスを牽引できるような環境を整えることが重要です。デジタルを知らないマネジメント層は、若い世代のサポート役に徹するべきではないでしょうか」と内山氏は語り、そのうえで「(アフターデジタル時代に適応できる)新しい組織を手に入れるための要点」として以下の3点を掲げ、講演を締めくくった。

①デジタルファーストで考える:一人ひとりが、何かをしようとしたときに、まずはデジタルで実現できないかと考え、どうしてもできない事情があるときだけアナログな手段を使うようにする。

②デジタルを日常と感じられる環境を作る:駅の改札を誰もがICカードをかざして通過するように、最初は抵抗があったとしても、新しい方式が当たり前となったら、人はそれに順応した行動をとる。まずは、身近な業務や働き方をデジタル化する。

③変革後の姿を「仕組み化」する:デジタル化や変革が、後戻りすることがないよう、業務プロセスや情報システムに新しい方式を「仕組み」として組み込む。

ちなみに、内山氏は、1994年にITRを創設したころより、日本企業に向けて戦略的IT活用の必要性を強く訴え続けてきた。ただし、日本企業の経営層の多くはITの戦略活用にあまり関心を示さず「IT軽視」の姿勢を崩そうとしなかったという。

「それでも20数年前の私は、歳月が経過し、経営層が代替わりすれば日本企業も自ずとITを戦略的に活用するようになると楽観視していました。ところが、過去20年間、IT活用を巡る日本企業の状況にほとんど変化は見られず、結果として、デジタル技術やデータの活用で海外に2周、3周のリードを許してしまっています。もはや一刻の猶予もありません。DXに向けた意識と組織の変革に直ちに着手すべきです」と、内山氏は語気を強める。

画像: 内山氏は「デジタルに暗いマネジメント層が、今後のビジネスをリードしていくことはできない」と言い切る。

内山氏は「デジタルに暗いマネジメント層が、今後のビジネスをリードしていくことはできない」と言い切る。

内山氏が指摘するとおり、海外の企業に比べて日本企業におけるIT・デジタル活用レベルは低いとされ、スイスのビジネススクール、IMD(International Institute for Management Development)が発表した2022年の「世界デジタル競争力ランキング(World Digital Competitiveness Ranking)」でも、日本の順位は過去最低の29位にランクされている。

そんな中でも、DX推進の体制づくりを全社的に推し進め、DXの取り組みを収益向上という成果に結びつけている日本企業も出始めている。デジタル領域での出遅れは、競争力の低下につながるものの、デジタルビジネスは多様で進化が著しいため、技術の活用次第で比較的早く後れを取り戻すこともできる。

内山氏が説くように、直ちに組織と組織文化の変革に着手し、DXの取り組みを本格化させれば、数年後にはDXの後進企業から先進企業へと生まれ変わり、国際競争力と収益のさらなる向上を実現できる可能性は大きいといえるのではないだろうか。

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