アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。アトラシアンのライターである、カット・ブーガード(Kat Boogaard)が、強力なチームづくりに役立つ7つのチームワークモデルと、その活用法について紹介する。

本稿の要約を10秒で

  • 強く、団結力のあるチームを作るには、意図と計画が必要とされる。
  • 過去数10年間にわたるチームワーク研究の成果として、チームの状況、目標、個性に応じて、どのような組織構造が最良の結果をもたらすかについて多くの知識が蓄積されている。
  • 本稿では、強力なチームづくりに役立つ7つのモデルと、その活用の手法について紹介する。

チームワークモデルがなぜ大切なのか

「効率的、かつ効果的で調和のとれたチームをつくるにはどうすれば良いのか」──。
この問いかけに対して、組織・チームのリーダーであれば誰もが「それには多くのことが必要とされる」と答えるはずだ。

確かに、強力なチームをつくるのはそう簡単なことではなく、それには多様な要件を満たさなければならない。ときには、メンバー同士の相性の善し悪しで、チームワークの良否が大きく左右されることもある。ただし、真に最高のパフォーマンスを発揮するチームをかたちづくるには、何らかの構造を取り入れることが不可欠となる。その構造が、以下で紹介する7つの「チームワークモデル」である。

これらのモデルは、一見すると堅苦しく、学術的に感じられるかもしれない。ただし、そのほとんどは驚くほど簡単に活用することができる。また、これらのモデルを活用することで、チームのパフォーマンスを高める要素を解き明かすこともできるのである。

ということで早速、7つのチームワークモデルと、その活用法について見ていくことにしたい。

モデル1: FSNPAモデル

画像: 図1:チームワークの「FSNPAモデル」

図1:チームワークの「FSNPAモデル」

■ 活用の場面:新しいプロジェクトチームを結成するとき

お互いを良く知らないメンバーで仕事上のプロジェクトチームを結成した経験がある人ならば、見知らぬ人同士の集団を、一夜にして機能的に連動するチームに変容させられないことを肌身で知っているはずである。

そうした新チームの結成時に便利に活用できるのが「FSNPAモデル」である。

このモデルは、心理学の研究者であるブルース・タックマン(Bruce Tuckman)氏が1965年に生み出したものだ。同氏はチームの研究を通じて、チームが単なる個人の集まりから、よりまとまりのあるユニットへと進化する際に「1. Forming(形成)」「2. Storming(混乱)」「3. Norming(規範形成)」「4. Performing(成就)」「5. Adjourning(解散)」という5つの段階を経ることを明らかにした。それにもとづいたモデルがFSNPAモデルと呼ばれる。

ちなみに5つの段階について少し詳しく説明すると以下のとおりとなる。

  1. Forming(形成):チームのメンバーが集まり、ミーティングを行い、目標を設定し、チームでの自分の役割を理解する段階。
  2. Storming(混乱):お互いの仕事ぶりやコミュニケーションスタイルを知り、衝突が起こり始める段階。
  3. Norming(規範形成):チームが最初の衝突を乗り越え、より調和した状態へとたどり着いた段階。この段階に至ると、チームのメンバーは互いの長所とアプローチを理解し、より良い毎日を送ることができるようになる。
  4. Performing(成就):チームが高いパフォーマンスを発揮できるようになる段階。この段階では、メンバーがお互いを明確に理解したうえで、うまく協力し合い、仕事をこなしている。
  5. Adjourning(解散):プロジェクトが終了すると、チームは解散となり、各メンバーはそれぞれ別の道を歩むことになる。ただし、チームの解散後にプロジェクトの振り返りに参加することもある。

なお、最後のAdjourning(解散)がモデルに追加されたのは1970年代後半のことである。そのため、このモデルを「FSNPモデル」と呼ぶこともある。

■ FSNPAモデルの長所

  • チームの進化の段階を知ることで、チーム内のコラボレーションをより良い方向へ導くために何をどうすべきかが明確になり、それを実践するのも容易になる。また、チームのメンバーが自律的に進化のステップを踏もうとするようにもなる。
  • FSNPAモデルを使うことで、チームのリーダーは、自分のチームの状態がどの段階にあるのかを簡単に特定することができ、問題への対処が容易になる。

■ FSNPAモデルの短所

  • このモデルは、新しく結成され、かつ一定の期間が過ぎると解散となるプロジェクトチームに焦点を絞っているために、チームが長期間にわたって存続し、さまざまなメンバーが出入りする可能性のあるチームに適用するのが難しい。
  • チームの進化が滞り、特定の段階にとどまって見えた場合に、何をどうすべきかについての方向性やコンテキストをほとんど提供しない。

モデル2: Lencioniモデル

画像: 図2:チームワークのLencioniモデル

図2:チームワークのLencioniモデル

■活用の場面:チームの潜在的な問題に先手を打ちたいとき

チームをマネージしていくうえでは「チームの成功のために何をすべきか」について考えることが多くなるが、「Lencioniモデル」はそうしたアプローチとは逆の発想で「チームが失敗しないために何が必要か」を明確にするためのモデルである。

このモデルは、作家であり、組織の健全性についての研究者でもあるパトリック・レンシオーニ(Patrick Lencioni)氏が、2005年に出版した書籍『The Five Dysfunctions of a Team』(邦訳版『あなたのチームは、機能してますか?』/発行:翔泳社)で確立したものだ。レンシオーニ氏は、上の図2に示したピラミッドを用いて、以下の5つの要素がチームを崩壊に導く可能性があると指摘している。

  1. 信頼関係の欠如(Absence of trust):チームメンバーがお互いを信頼しておらず、心地良く、かつ正直に本音や弱音を言い合える関係になっていない。
  2. 対立への恐れ(Fear of conflict): チームのメンバーが互いの対立を恐れ、調和を保つために口をつぐんでいる。
  3. コミットメントの欠如(Lack of commitment):チームのメンバーが、チーム目標の達成や共同の作業に専念していない。
  4. 責任の回避(Avoidance of accountability):チームのメンバーが、チームにおける自身の果たすべき役割について十分な理解と当事者意識、責任感を有していない。
  5. 成果への無関心(Inattention to results):チームのメンバーが、自分たちのゴールを見失っており、仕事の最終的な成果に対する興味・関心を持っていない。

■ Lencioniモデルの長所

  • このモデルを活用することで、チームが機能不全に陥っている原因を突き止め、対処する作業が容易になる。
  • 新しいチームを作る際に回避すべき「落とし穴」を、リーダーが実行可能なかたちでリストアップすることが可能になる。

■ Lencioniモデルの短所

  • モデルが調査や実際の経験、第三者による指摘にもとづいていない。
  • チームのリーダーがどうすればチームの機能不全に対処できるかを、あまり深く掘り下げていない。

モデル3: GRPIモデル

画像: 図3:チームワークのGRPIモデル

図3:チームワークのGRPIモデル

■ 活用の場面:自分のチームがなぜ不完全であるか理解する必要があるとき

「GRPI(グリッピー)モデル」は、1972年に組織理論家のディック・ベックハード(Dick Beckhard)氏によって開発されたものだ。チームが優れたパフォーマンスを発揮できない理由を分析するためのモデルとして設計されている。

チームのリーダーは、チームがうまく機能しない理由を、チーム内の人間関係に求めがちになる。それに対してGRPIモデルでは、チームが優れたパフォーマンスを発揮するために不可欠な要件として、人間関係を含む以下の4つのポイントを挙げている。

  1. 目標(Goal): チームは、自分たちが何を目指しているのかをしっかりと理解し、共有する必要がある。
  2. 役割(Role):チームは誰が何を担うのかについて、曖昧さや責任の重複がないようにする必要がある。
  3. プロセス(Processes): チームは、どのように意思決定が行われ、どのように自分たちの仕事を成すべきかのプロセスを理解していなければならない。
  4. 対人関係(Interpersonal relationships):チームは、お互いのコミュニケーションスタイルや仕事の進め方を理解し、尊重し合わなければならない。

上で示した図3にあるとおり、GRPIモデルではこれら4つの要素がピラミッド構造を成しており、チームのパフォーマンスに問題が認められた場合には、ピラミッドの頂点にある「目標(Goal)」から最下層の「対人関係(Interpersonal relationships)」へ向けて、チームの状況を順番に点検していく仕組みになっている。この構造は、チームのリーダーやメンバーが、チームワークにおける問題の原因を人間関係のみに帰着させてしまうのを抑止し、根本的な原因に迫るうえで有効なものと言える。

■ GRPIモデルの長所

  • チームが自身の機能不全をさまざまな側面から分析するうえで役に立つ。
  • このモデルの活用により、チームのリーダーやメンバーは、チームにおける問題の原因を人間関係だけに求めようとはしなくなり、より本質的な問題原因を突き止めようとするようになる。また、チームが、メンバー間の対立を必要以上に恐れることもなくなる。

■ GRPIモデルの短所

  • このモデルを使うことで、チーム内の人間関係をはじめ、チームにおける問題の原因を、単純化してとらえ過ぎてしまうリスクがある。

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