アトラシアンには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

同意の強制はもうやめたほうがいい

伝統的で古めかしい文化を持った企業は、会社と従業員、あるいは上司と部下との些細な考え方の不一致すら許そうとしない。そう、それはまるでワガママな子どものようである。

このような“子どもの組織”で働いていると、会社や上司に対し、ほんの少し違った意見を述べただけで、人生を揺るがすような一大事を引き起こしたかのような気分になる。そのことが従業員に与える恐怖は、結果として異論・反論を封じ込め、同意を強制するという心理的な暴力へと連なっていく。

このような企業文化の中では、従業員たちの同意はうわべだけのものとなり、たとえ、すべての従業員の同意がとれたとしても、彼らが本当にどう思っているかは一切見えなくなる。結果として、真の意味でのチームワークは育まれず、効果的な協業や相互信頼の関係も生まれにくくなる。

どのような組織においても、以下の2つの真実がある。

  1. すべての人の意見が常に一致することはありえない。
  2. 人が常に本音を言うとは限らない。

そうした中で重要なことは、会社や上司、チームリーダー、あるいは同僚に対して、安心して異を唱えられるような文化を作り上げることである。そのためにはまず、上記「1」が真実であると認識したうえで、「人の本音」を引き出す努力を払う必要がある。

人の本音、あるいは心の内側にある考えは、良質なディスカッション(ここで言うディスカッションには論争も含まれる)が行われることで初めて引き出すことができる。

もちろん、あらゆる反対意見が“創造的”であるわけではないし、人との意見の対立は決して心地のよいものではない。ときには、人と人との間に緊張関係が生まれ、誰かの心が傷つけられてしまうおそれもある。ただしそれでも、建設的な意見の対立は、結果的に物事の品質を高めるという見返りを、私たちに与えてくれる。平凡な世界に生きる私たちは、心地よさを犠牲にしてでも、やはり品質を選ぶべきなのである。

もっとも、単純な意見の対立だけでは、物事の品質を高めることはできない。対立によって良質な結論を導き出すためには、自分とは異なる意見に対して、必ず敬意を払うことが不可欠である。それがなければ、意見の対立からは何も生まれない。

7つの法則

では、自分とは異なる意見を尊重し、建設的で創造的な異論・反論、あるいは意見の対立をも促せるような“大人”の組織・チームをどう築けばよいのだろうか。その構築に必要とされる方策は7つある。以下、それらをすべて紹介しよう。

1. 自分は正しいと考えながら発言し、自分は間違っていると考えながら聞く

このルールの別の表現は、「聞くときはゾウ(耳を大きく、口を小さく)になり、話すときはカバ(耳を小さく、口は大きく)になる」というものである。

これは、企業の組織階層のすべてに適用すべきルールであり、人が持つ“異を唱える恐怖心”を和らげ、「自分の真摯な意見には、誰もが真剣に耳を傾けてくれる」という意識を従業員に根づかせる方策でもある。また、自分の周囲にいる人の意見に対し、全方位で、そして能動的に耳を傾けることで、すばらしいアイデアが、社内のいたるところからもたらされる可能性も高まるのである。

論争には情熱が必要だが、人の意見を聞く際には献身が必要である。献身的であり続けるのは簡単なことではないが、人の意見を聞くことは、「贈り物」をもらうことと同じだと考え、“ゾウ”でいる努力を続けることが大切である。

2. 複雑な問題の解決にはダイバーシティで臨む

より良いアイデアは、異なる複数の視点によってもたらされる。そのことに疑いの余地はない。したがって、あなたの組織・チームの価値は、建設的な異論・反論をどう集め、取り込むかを考えた瞬間に高まり始めると言える。

考え方のダイバーシティ、あるいは人材のダイバーシティを確保することは、単に、組織の外見をよくしたり、社会的な対面を整えたりするための施策ではない。

議論に加わる人たちのバックグラウンド、人生経験、生い立ちが多様であればあるほど、議論のテーブルに多くの視点がもたらされ、新しく、良質なアイデアが生まれる可能性が高くなる。それこそが、ダイバーシティが重要である理由だ。自分と似たような視点や考え方しか持たない人間と幾度ディスカッションを重ねたところで、いつもと同じ角度からしか物事をとらえられず、革新的な着想には至らないのである。

3. 異論・反論は“税金”ではなく“投資”と考える

私たちは、ついつい「物事に対する反対意見が出るのは税金のようなものだ」と考えてしまう。また、異論や反論は物事の進みを鈍らせるものとして、できれば排除したいと考える。しかし、それは誤りだ。もし、あなたが異論・反論・意見の対立を税金と見なしているなら、即刻、考え方を改めて、それらは物事を改善するための投資と見なすべきである。

4. より賢くなる

誰かと意見を交わす際には、すでに承知のことを確認するだけの場にしないことが重要である。要するに、ミーティングを重ねるたびに、より賢くなることが肝心なのである。

この考え方自体はシンプルだが、実現するのはなかなか難しく、思慮深い行動が要求され、自身の成長に対する徹底したこだわりも必要になる。

5. 組織・チームの手本になる。

あなたが組織やチームの手本になることを選ばなかったとしても、他のメンバー全員が手本としてあなたを選んでいるとすれば、事実上、あなたはチームの手本と言える。

仮に、あなたがそのような立場にあるのなら、建設的な異論や反論を積極的に取り入れる姿勢を示すことが大切である。例えば、「異論や反論はいつでも歓迎する」ということを公言したうえで、その言葉どおりの態度を示し続けるのである。もちろん、例外的なケースを除いて、異論や反論を絶対に責めてはならない。

もし、このルールが、適切なコンテキストと精神に上で成り立っているならば、すべてはあなたが期待したどおりに進み、あなたと組織/チームのメンバーは、課題の解決に向けて、ともに悩み、学び、物事をより良い方向へと導けるようになる。それは、多くの利益をあなたのチーム、あるいは組織にもたらすのである。

6. 見解の否定は人格の否定ではないことを知る

あなたが、日ごろフォーカスしているのは、問題の解決であって、あなたの立場や意見、視点を守ることではないとしよう。そのような場合、あなたのアイデアに対する否定的な見解は、決してあなた自身を否定するものではないことを知っておくべきである。

実のところ、人というのは意外と臆病でナイーブな生きモノなので、「あなたの意見には同意できない」「あなたは間違っている」といった言葉を聞くと、すぐに震え上がり、傷つき、自分自身が否定されたような憂鬱な気分になる。だが、それは恐怖心に起因した錯覚にすぎない。自分のアイデアや意見が否定されたからといって、自分の人格や人間性が否定されたわけではないのである。そもそも、人としてどんなに敬愛している上司であっても、信頼している部下であっても、自分が間違いだと思うことを言えば、「それは間違い」と諭したくなるのが人なのである。

したがって、上司は部下から意見を否定されても怖れる必要はなく、部下や上司に異を唱えることを怖れてはならない。他の大勢の意見とは異なる意見を言うことにためらいを感じるのもナンセンスである。また、会社の組織・チームのメンバーが追い求めているのは、顧客の成功である。それを追求する中では、組織・チーム内に意見の食い違いや衝突があるのが当然で、それがあるからこそ、より良質な製品やサービスを顧客に提供できると言えるのである。

7. 役割と責任の重要性を知る

多様な意見やアイデアを供出してくれる人たちには感謝すべきだが、一方で、意見やアイデアを出す側と、受ける側との役割・責任に違いがあることも忘れてはならない。

例えば、強いチームリーダーは、大抵の場合、数多くの意見を招き入れつつも、結局、最初に自分が言ったことや打ち出したプランを曲げようとはしない。その場合、他者が供出した意見/アイデアは、結局、チームの最終的なアウトップに直接反映されないことになる。

仮に、それが多様な意見やアイデアを吟味した結果であり、チームリーダーとしての役割と責任を果たすうえでは、当初の計画を遂行するのが最善との判断によるものであれば、周囲にはリーダーの判断にストップをかける権利はない。もっとも、周囲から意見やアイデアを募った以上、チームリーダーには、意見・アイデアの供出者に最大限の敬意を払う必要がある。もっと平たく言えば、意見・アイデアの供出者が気分を害さぬように、協力への謝辞を述べるとともに、どうしてこのようなアウトップになったかの理由を説明する必要があるということだ。例えば、以下のような具合である。

「皆さま、ご協力ありがとう!皆さんの意見とアイデアには本当に感謝しています。おかげさまで自分たちの計画を最高のかたちで洗練させることができました。皆さまの意見を参考にした結果、最終的に、この方向に進むことになったのですが、理由は…….(後略)」

こうしたメッセージは、多少、言い訳がましくなるかもしれないが、それでも、感謝と説明を行うのと行わないのでは雲泥の差があるのである。

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社内での意見の相違や対立を避けようとするのは、ビジネスパーソンとして、あるいは人として自然な感情である。ただし、それを怖れすぎると、組織やチームの思考がストップし、イノベーティブな発想ができなくなる。その意味でも、組織内・チーム内での信頼関係を構築して、人とは違う意見を安心して言えるような職場環境、あるいは、意見の対立を新しい何かの創造へと結びつけられるような職場環境を、組織・チームの文化として醸成していくことが大切である。

とにかく、会社も、組織も、チームも、私たち個々人も、もっと“大人”になったほうがいい。大人は、自分とは異なる意見やアイデアを、客観的、かつ冷静に受け止められるような広い心と余裕を持っている。そして、人への配慮、自分たちの仕事、究極的なミッションを忘れることはなく、だからこそ、自身とは異なる意見やアイデアに敬意を払い、建設的な異論・反論を積極的に取り入れようとするのである。

ぜひ、あなたのチーム・組織でも、相互信頼の確立と偉大な業績の達成に貢献する意欲を持って、異論・反論、そして意見の対立をあえて歓迎する文化を醸成していただきたい。信頼は必ず恐怖に打ち勝ち、驚くような成功をもたらしてくれる可能性があるのである。


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