アトラシアンには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

本稿の要約を10秒で

  • 同僚との強いつながりは、同僚との“ハイタッチ”ではなく、仕事でありのままの自分でいられるときに感じる。
  • 個人的なつながりの強いチームは、より良い成果を生む傾向がある。
  • チームとしての共通のゴールやメンバー同士がお互いに期待していること、プライベートの趣味について話す時間を設けることはメンバー間の信頼関係を築くのに役立つ。

あらゆる組織は人と人とのつながりで成り立つ

あらゆる組織は人と人とのつながりを土台に成り立っている。その土台は強固でなければならず、仮に、あなたがチームのリーダーで、チーム内のメンバー同士のつながりに弱さを感じているならば、自分の責任として改善に努めなければならない。また、その際には、メンバーの人間性を尊重しつつ、チームの仕事の生産性や効果を高める環境づくりに力を注ぐ必要がある。

この取り組みを始めるにあたり、お勧めしたい最初の一歩は、チームのメンバーを「リソース(経営資源)」と呼ばないようにすることである。人は人であり、「お金」や「モノ」とは異なる存在だからだ。

では、その次に成すべきことは何なのだろうか。結論から先に言えば、それはチームに対するメンバーの「帰属意識」を醸成することである。この意識を醸成するうえで大切なのは、チームのメンバーに職場での安心感や居心地の良さ、人と人との強いつながりを感じさせることだ。

ただし、それは簡単なことではない。とりわけ昨今では、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響により、多くのナレッジワーカー(ホワイトカラーのビジネスパーソン)が、リモートワーク、あるいはハイブリッドワークの体制下で仕事をしており、同僚たちとオフィスに集まって仕事をする機会をほとんど得られていない。また、“ウィズコロナ”の状況のもとで転職、ないしは新卒で入社したナレッジワーカーの多くは、直接会ったことのない同僚たちと仕事をしている。そんな状況の中で、チームのメンバーとの深いつながりやチームへの帰属意識を持つのはなかなか難しい。

実際、アトラシアンが2021年に世界で行った調査(Reworking Work調査)によると、回答を寄せたナレッジワーカーの56%が自分のチームは個人レベルでのつながりが希薄だと答えており、37%が自分のチームでは新しいことに挑戦したり、自分を十分に表現したりすることができないと感じているという。

言うまでもなく、このような状況はチームにおけるイノベーションの可能性やパフォーマンスに負の影響をもたらすものである。

果たして、こうした現状を打破するには何をどうするのが適切なのだろうか。残念ながら、この問いに対する正解は私にも分からない。ただし、チームリーダーの皆さんと共有するに値する(と考える)アイデアがいくつかある。以下、それらのアイデアを紹介したい。

分散型チームの時代に重要性を増したこと

コロナ禍を境にチームのメンバーが各所に分散して働くのが当たり前の時代──すなわち、分散型チームの時代に突入しつつある。

そんな時代において、チームの結束力を高めようと、例えば、ビデオ会議の場で“ハイタッチ”をメンバーに強要するのは間違いなく無意味である。必要とされるのは、そうしたうわべだけの演出ではなく、真の心のつながりや結束を生む何かである。

その「何か」について考えを巡らせた私は、「チームでの働き甲斐」や「チームで働く心地良さ、幸福感」は、以下の3点によって支えられているとの結論に至った。

  1. 作業中でも休息中でも、職場で「ありのままの自分」を出せること
  2. 自分の仕事について上司とじっくりと議論し、罰を恐れることなく、反対意見を(もちろん敬意を持って)述べられること
  3. 同僚たちと楽しくおしゃべりをすること

コロナ以前の職場のように、チームメイトや上司がいつも自分のそばにいる環境では、上記の3点以外にも「同僚との(自然な)ハイタッチ」「同僚たちの笑顔」「周囲の活気」など、自分の働き甲斐や働く心地良さ・幸福感を高めてくれる要素が数多くある。ゆえに、上記3点が自分にとってどれほど重要なことかはなかなか気づけないのが通常だ。

ところが、今日のように同僚たちや上司が自分から遠く離れた場所で働くようになると、上記3点によって働き甲斐や心地良さ、幸福感を得る機会は大きく減る(あるいは、失われる)。結果として、これら3点の重要性に改めて気づくことともに、その喪失感によってチームへの貢献意欲やチームで働く意欲が減退していくことになる。逆に言えれば、分散型チームにおいても、上記3点が行える環境を築くこと、あるいは取り戻すことが、メンバーの働き甲斐やチームへの貢献意欲を高めるカギになるということだ。

もっとも、チームのメンバー各人が上記3点を行える環境は、人同士の信頼関係や友人関係の上で成り立つものである。人と人との偶発的な対話や雑談が発生しにくい分散型チームにおいては、そうした人同士の信頼関係や友人関係がそもそも構築しにくいという問題がある。その点を踏まえながら、分散型チームの結束力を強める方策を紹介したい。

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