アトラシアンには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

チームの結束力を強める4つの方策

人と人との強いつながりが健全なチームを作り、健全なチームがより良いビジネス成果を生むことは広く知られている。そして、健全なチームは共通して以下の要件を満たしていることも周知と言える。

  • チームで目的を共有している
  • メンバー全員が自分の仕事がチームや会社全体にどのように貢献しているかを理解している
  • 心理的安全性が確保されている
  • コラボレーションの効率性を高める目的で共通の慣習や儀式を用いている
  • メンバー間の個人的な関係が強固である

問題は、分散型チームにおいてこれらの要件をどのように満たすかである。そこでお勧めしたいのが、以下の示す4つの方策である。これらの方策を取り入れ、遂行することで分散型チームの“健全性(健康状態)”がどういった状況にあろうとも、チーム内外の人と人とのつながりを強め、チームの健全性を高めていくことが可能になるのである。

方策1: お互いを知り、理解を深める

人は自分にとって未知の部分を、先入観や思い込みによって埋めようとする。それは人に対しても同じであり、自分のよく知らない人の性格や行動原理を「おそらく、こうであろう」と勝手に決めつける。ただし大抵の場合、そうした仮説は間違っており、それが人間関係を悪い方向へと向かわせることも多い。

ゆえにチームのメンバーは、お互いのことを知り、理解することが必要であり、それが信頼関係を築くうえでの第一歩となる。人は、自分のことを知らない、ないしは理解していない相手に全幅の信頼を置くことはないからである。

人のことを知り、理解するうえで大切なことは、基本的な質問をして心を開いて相手の答えを聞くことである。また、チームでのコラボレーションを円滑にするという意味でも、メンバーがお互いのことを知り、理解することは大切だ。

アトラシアンの「Atlassian Team Playbook」では、そうした観点からチームでの相互理解を促進する以下の手法が紹介されている。これらはすべて分散型チームにおいても有効に機能するものだ。

「マイ ユーザー マニュアル(私の取り扱い説明書)」をチームで共有する:
「私の取り扱い説明書」とは、文字通り、自分をどう扱うべきかを記した「ユーザーマニュアル」であり、自分の性格や仕事のスタイルを同僚たちに伝える手段である。このマニュアルには、自分にとって理想的な「勤務時間」や「フィードバックの受け取り方/受け取るタイミング」「最も効果的な学習方法」などのほか、「お気に入りのGIFアニメーション」など、自分のプライベートな嗜好を表現する情報を記してチーム内で共有する。このマニュアル作成は、自分自身のことを改めて見直し、理解を深める機会にもなる。

■チーム内で「仕事上の合意」を作成し、共有する:
チーム内で仕事に関する「合意」を形成し、リスト化・共有することで、チーム内のコラボレーションで生じうるメンバー間の認識・期待のズレ、齟齬(そご)を回避することが可能になる。チーム内の合意をリスト化するプロセスは、チームのメンバーの特性にもとづいて築かれるチーム文化(仕事の進め方、取り組み方)を体系的に明文化する作業と言える。ゆえに、チームのメンバーが変更になるたびにリストの内容を見直す必要もある。

■チーム内でメンバー各人の「役割」と「責任」を明確化する:
この作業は、チームで1時間程度のワークショップを催し、誰が何をするのかを明確にすることを指している。この作業によって、チームにおけるコラボレーションの理想と現実とのギャップを特定することが可能になる。また、メンバー各人の役割と責任を明確にしたのちには、その内容を明文化して、チームのメンバーのみならず、他のチームとも共有する。

以上に示した3つの手法の内どれか一つを実行するだけで、チーム内の相互理解は大きく進展するはずである。もちろん、3つの手法のすべてを遂行すれば、さらに大きな効果が期待できる。

方策2: 周りのチームのことを知る

企業のビジネスが単一のチーム内で完結することはまずなく、チーム間の連携によって企業のビジネスは回っていく。ゆえに、自分のチームの目標やミッションだけではなく、自分のチームと関係するすべてのチームの目標やミッションについても把握しておくことが重要となる。

実のところ、オフィスワーク中心の体制に比べて、リモートワーク、ハイブリッドワークの体制下では、他のチームのメンバーとやり取りする機会が少なくなるのが通常である。ゆえに、他チームと目標やミッションを共有するには、そのための場を意図的に設けなければならない。

その作業は特に難しいことではなく、関係各部署のチームのメンバーをビデオ会議に集めるだけで良い。そのうえで各チームに自分たちの目標やミッションについての簡単なプレゼンテーションを展開してもらえば、チーム同士の相互理解はかなり進むはずである。また、先に触れた「私の取り扱い説明書」のチーム版「私のチームの取り扱い説明書」を作成し、組織横断で共有するのもチーム同士の相互理解を深める有効な一手と言える。

もちろん、互いの目標やミッションを共有するだけで、チーム同士が“親友”になれるわけではない。ただし、少なくともチーム間の関係性は良い方向へと向かうはずである。

さらに、チームリーダーは、他のチームが自分のチームをどう見ているのかを知っておくことも大切であり、そのための「リスニングセッション」も催すべきである。

このセッションは、周囲のチームが自分たちに何を期待しているか、あるいは、どの部分に不安や懸念を抱いているのかを知るためのものだ。セッションで投じられた疑問や懸念事項のすべてに、その場で答える必要はない。ただし、のちには、即答できなかった疑問・懸念をすべて解消、払拭することが必須となる。

方策3: 息抜きの時間を必ず確保する

分散型チームの結束を強めるためには、メンバー間の個人レベルの有意義なつながりも醸成しなければならない。そのための効果的な方策の1つが、チームでのコラボレーションの中に生き抜きの時間を確保することである。例えば、会議の最初の5分間は仕事の話をせずに、チームのメンバーで「アイスブレイクトーク」をしたり、その日の良いことを話したりする。これによってチームのメンバーは、お互いを人間として知ることができるほか、自分がチームを大切にしていることを全員に伝えることができる。

TIPS
チームのリーダーは、メンバーとの対話が、ディープな話題に転じるのを恐れてはならない。例えば「5年後に何をしていたいか」「仕事のどこにやり甲斐を感じているか」など、メンバーの本音や人生観に迫るような質問を投じ、その答えに耳を傾けるべきである。最近の調査によれば、ほとんどの人は会ったばかりの人であっても、ディーブな話を喜んでしてくれるという。あなたのチームのメンバーたちも、ディープなテーマであなたと対話することを待ち望んでいる可能性が大いにあるのである。

方策4: 「ペイフォワード」する

仮に、あなたがチーム内ではベテランに類するメンバーであり、他のメンバーとの強固な人間関係をすでに構築しているのであれば、チームに最近加わった“新人”とのコミュニケーションを大事にしていただきたい。積極的に彼らにアプローチして、彼らが何に取り組んでいるのか、入社後の困りごとは何なのか、自分にできる支援は何かを突き止めることが、チームの先輩としての務めであると認識すべきである。

私は、こうした新人たちとの交流が大好きで、過去に何度も経験してきた。その経験から言わせてもらえば、新人たちと対話する方法は何でも構わないが、できれば、仕事の細事から離れられる環境でコミュニケーションを取ったほうが良い。そうすることで、自分の頭の状態をリラックスさせ、新人たちとの個人的なつながりが築きやすくなるからである。

そして、あなたが持つ人のネットワークを生かしながら、新人の成功を後押ししていただきたい。また、雑談が大きな成果につながる可能性があることも忘れずに。

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