アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。WORK LIFE のマネージングエディター、ローレン・パーカー(LaurenParker)が、アトラシアンを代表する5人のチームリーダーに、仕事の世界で近く起こるであろう変化について尋ねた。
本稿の要約を10秒で
- 本稿は、アトラシアンを代表する5人のチームリーダーに、ビジネスに関する今後の変化を予測してもらった結果である。
- 近未来を予測する5人のリーダーは、いずれも効果的なチームワークを実践し、先を見通す先見性と鋭い洞察力を有している。
- 彼らの予測は、今後においてAIと人とのコラボレーションのあり方がどう変容するかを中心にしながら、多方面に及んでいる。
近未来予測① AI活用の進展により最も創造的な人たちによってチーム・職場が支配される
by アニー・ディーン(Annie Dean)/アトラシアンTeam Anywhere ヘッド
2025年以降、AIの働きによって、チームにおける連携はさらに強化される。AIは、チームにおける無駄な作業を一掃し、チームが大きなアイデアを探索して実行するのを的確にサポートするようになる。これによって、チームにおけるコラボレーションは、過去に経験したことのないようなレベルで活発になり、かつ効果的になる。また、チームとAIとのコラボレーションの進展によって、チームはより簡単にアイデアを実現できるようになり、結果として「声の大きい人たち」によってチームや職場が支配される時代は終わりを告げる。代わりに最も創造的な人たちによってチームや職場が支配されるようになる。
▶関連記事(英語)を読む:How to make time for the work that matters
近未来予測② 人材のマネジメントスキルがAIとのコラボレーションで威力を発揮する
by モリー・サンズ(Molly Sands)/アトラシアンTeamwork Labヘッド
2025年以降、人材マネジメントに関して高いスキルを持つ人は、たとえリーダーの役割を担っていなくても、AIエージェントが潜在的な有する価値の75%以上を引き出すことが可能になると予測できる。
アトラシアンが定義した「AIコラボレーション指数」(参考文書(英語))が示すように「単純作業のためのツール」としてではなく「チームのメンバー」としてAIを使おうとする人たちは「作業時間の短縮」や「作業品質の向上」といった点で、大きな利益を得られるようになる。
また、より多くの人たちが、AIを創造的な議論のパートナーや戦略的なコラボレーターとして活用するようになれば、優れたチームリーダーが有するマネジメントスキル(例えば、解決したい問題の背景をわかりやすく説明できるスキルや適切な専門家によってチームを組織し、仕事を割り当てられるスキル、など)が、AIを効果的に活用するのに必要なスキルと同じであることが広く理解されるようになるだろう。
▶関連記事(英語)を読む:AI CollaborationReport: “Using” AI is not enough – here’s what your organization is missing
近未来予測③ AIエージェントがより複雑な課題に対応できるようになる
by ジャミル・バリアニ(Jamil Valliani)/アトラシアンAIプロダクト ヘッド
2025年以降は、AIエージェントの時代が本格的に到来する。つまり、AIエージェントがテキストのみならず、音声や視覚的な要素に対応できるようになり、それによって人とAIとのコラボレーションにドラスティックな変化が巻き起こるというわけだ。
AIエージェントはすでに、私たちの仕事の能力を拡張し、仕事の処理スピードを加速させつつある。2025年以降、AIエージェントは、人がかかわる仕事の中で、とりわけ高度に専門化されたタスクやアクションの遂行を担えるようになり、AI製品間の連携・統合も一層巧みになると予想される。
私個人としては、AIエージェントとチームが、より複雑なタスクを共同で処理する方法が飛躍的に洗練されることに大きな期待を寄せている。AIエージェントは、急速な進化を続ける「基礎モデル」や豊富なデータセットにもとづく「推論」、より多くのアクションを遂行するための能力の向上といった事柄から恩恵を受けている。この恩恵がもたらすAIエージェントの持続的な進歩は、エージェントによる仕事の成果を向上させるだけでなく、より複雑な問題への対処も可能にするものだ。
また、こうした成長の能力は、人間のチームメイトや協力者のそれとかなり似ている。その意味で、AIエージェントと人との関係はこれからも進化を続け、それが結果として、チームにおける新たなコラボレーションスタイル、コミュニケーションスタイルの確立へとつながっていくはずである。
▶関連記事を読む:生成AI活用の始め方:成功のカギはオープンマインドと忍耐・努力にあり
近未来予測④ AIエージェントの働きにより非同期コミュニケーションがコラボレーションの中心を成す
by ジョー・トーマス(Joe Thomas)/Loom共同創業者兼アトラシアンLoomプロダクト ヘッド
2025年以降、AI主導のコラボレーションを支える基盤として、非同期コミュニケーションの価値がこれまで以上に上がり、組織・チームの中に全面的に取り入れられるようになると見ている。
例えば、非同期ビデオコミュニケーションを実現する「Loom」はすでに、相当数の企業に採用されている。その活用を通じて多くの企業は、AIによるビデオコンテンツのインデックス化やテキストへの変換、さらには、コンテキストの抽出・記録が莫大な価値を生むことに気づくはずである。
実際、AIエージェントは、ビデオコンテンツをメタデータやテキストへと変換することができ、それは強力で効率的なビデオコンテンツの文書化メカニズムであるといえる。ゆえに、個人やチームは、ビデオメッセージのメモを残すためのツールとしてAIを信頼し、より積極的に活用するようになると見ている。
さらにいえば、こうした非同期コミュニケーションへのシフトは、ともに働く人たちのワーキングタイムの違いやスケジュール的な制約といった障壁のない、効率的で効果的な意思疎通、あるいは情報共有を可能にする。まとめれば、非同期コミュニケーションにおける人とAIのコラボレーションによって、生産性の向上という計測可能な効果がもたらされることになる。
▶関連記事を読む:分散型チームのパフォーマンスを上げる“非同期コミュニケーション”のテクニック
近未来予測⑤ 生産性の指標を見直す必要性が高まる
by ドム・プライス(Dom Price)/アトラシアン ワークフューチャリスト
2025年以降、「AI時代における生産性とは何か」について熟考する必要性が高まるものと予想される。
これまで多くのチームは、特定の時間枠の中で何をどれだけ生産するかといった「機能的生産性」を向上させることを追求し、各チームが他から隔絶されたサイロの中で業務を遂行してきた。結果として、ビジネスを支える業務全体のパフォーマンスを見渡すことが難しくなり、どのチームも単一の機能や働き方を優先させる局所最適に陥ってきた。
もちろん「チームの生産性を ●●% 向上させた」というのは素晴らしいことだ。ただし、その改善が、ビジネス全体の収益アップにほとんど貢献していないのであれば、生産性の向上に意味はないことになる。それでも、従来と同じやり方で仕事をし、経営とチームに双方に負担をかけ続けるというのは、明らかに間違った選択といえる。
機能的生産性を測る物差しは、およそ200年前の産業革命期に生産ラインの装置をより速く、より多く稼働させるうえでは有効だったかもしれない。しかし、そのような物差しでは、今日におけるナレッジワークやナレッジワークを支えるAIなどの革新テクノロジーの有効性は測れない。ゆえに必要とされるのは、業務におけるエコシステム全体の生産性を評価しうる指標となる。そんな指標を使いながら、チームが生産した真の成果を評価し、評価結果にもとづきながらエコシステム全体をより効果的にすること、あるいは、業務全体のボトルネックを解消していくことが、企業により大きな利益をもたらすことにつながるのである。
▶関連記事(英語)を読む:It’s time to stop measuring productivity
追記:AIとチームのこれからを見通す
以上に示したリーダーたちの予測が正しいとするならば、特定課題の解決に特化した固定的なツールではなく、進化し続けるコラボレーターとしてAIを認識し、その機能への理解を深めることが重要となる。また、そうすることがAIを使う価値を最大限に引き出すカギとなるといえる。そして、AIの持つ潜在能力がより深く理解できればできるほど、生産性に対する私たちの考え方は大きく変わっていくはずである。