アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。アトラシアンでプラクティス プロダクトのリードを務めるイングリッド・ブレイク(Ingrid Blake)が、チーム内で共通理解を確立するための効果的な手法について解説する。

本稿の要約を10秒で

  • 戦略・戦術・目標に対する共通理解はチームのパフォーマンスを高める
  • アトラシアンの調査によれば、チーム目標に関する「Why(なぜ)」の共通理解が確立できているチームはそれほど多くない
  • アトラシアンの「Team Playbook」を活用することで、チームの戦略・戦術・目標に対する共通理解をスムーズに確立することが可能になる

共通理解がもたらすチームの能力

リモートワークやハイブリッドワークが一般化した今は、チームを適切にマネージする難度が非常に高い時代と言えるだろう。

とりわけ、メンバー間の絆(きずな)を強めたり、チームの戦略・戦術・目標に対する理解を共通化して、その状態を維持したりするのはかなり難しい。

ただし、物事に対する理解をメンバー間で共有することは、チームのパフォーマンスを高めるうえで欠かせない要素だ。実際、アトラシアンの最近の調査においても、パフォーマンスの高いチームを築くうえでは、戦略・戦術・目標に対するメンバー間の「共通理解」を深めることが重要であるとの結果が出ている(詳しくは後述)。

ここで言う「共通理解を深める」とは、例えば、「チームが達成しようとしていることは何なのか」という「What(何を)」に対する理解のみならず、「なぜ、その目標を達成しなければならないのか」「その目標の達成が、なぜ、チームの成功につながるのか」といった「Why(なぜ)」への理解も深めることを意味している。

さらに、この理解には「チーム目標の達成に向けて、メンバー各人はどのような役割と責任を担うのか」という戦術的な理解も含まれている。

そして、こうした理解の共有は、良質なコミュニケーションをはじめ、他者の話に集中して耳を傾ける「アクティブリスニング」や定期的なフィードバック、さらにはタスクの優先順位を調整するミーティングなどを通じて促進され、維持されることになる。

ビジネスパーソンの働き方や企業を取り巻く経済情勢が絶え間なく変化するなか、ビジネス現場で働くチームには、あらゆる変化に合わせて柔軟に、かつ迅速に方向転換を行い、新たな要件に適応していくことが求められている。

そのため、チームの多くが、経営陣やチームマネージャーが指し示す戦略的な方針を戦術へと素早く転換し、遂行する実践的な方法を必要としている。その方法の一つが、チームの全員が戦術レベルの意思決定プロセスに関与し、自分たちが成すべきこと、そして、なぜそれを成すべきかを理解することだ。

また、戦術の意思決定に関与することで、チームの全員が自分たちの成果に対するオーナーシップマインドを抱くようになり、戦術の変化と常につながりを保てるようにもなる。

このようにして、チームが遂行すべき戦略・戦術、あるいは達成すべき目標に対する理解をメンバー間で共有することで、以下を実現できる可能性が高まると言える。

  • すべてのステークホルダーの期待にこたえる
  • リソースを効率的に活用する
  • 新しいアイデアを生む
  • 仕事に誇りと目的意識を持つ

アトラシアンの調査が指し示す課題

アトラシアンは2023年1月、米国、オーストラリア、欧州、インドなどで働く数千人のナレッジワーカーを対象に毎年恒例の「The State of Teams(チームの現状)」調査を実施した(参考文書 (英語))。その調査結果を見ると、回答者のおよそ4人に3人(約75.0%)が、自分のチームにおいて戦略や戦術、目標に対する理解を共有していると答えている。

この結果を見る限り、多くのチームが自律しており、メンバーは自分たちが「何に取り組むべきか」を理解しているようだ。ただし、自分たちが「なぜ、それに取り組む必要があるのか」については、あまり明確にされていないようである。

例えば、回答者の82.9%がチームにおける自分の役割は明確であり、適切に定義されていると答えているものの、チーム全体の戦略について適切なプロセスのもとで策定されていると感じている回答者は65.9%でしかなかった。また、リーダーシップの透明性が確保され、戦略上の意思決定プロセスが常に確認できていると感じている回答者も60%にすぎなかった。

加えて問題なのは、チームの成果について、ステークホルダーからのフィードバックをタイムリーに得られていると感じている回答者が55%でしかなかったことだ。これを言い換えれば、半数近いチームが、暗中模索の状態で仕事を進めていることになる。

このような状態では、マネージャーが自身の望むビジネス成果をチームから得られることはまずないと言えるだろう。

共通理解を深める2つの方法

アトラシアンでは社内のチームに対しても上述したような調査を実施しているが、その分析においても、チームにおける戦略・戦術・目標の明確化と調整、そして生産性との間に強い相関関係があることが判明している。では、どうすれば戦略・戦術・目標に対するチームメンバー間の共通理解を深めることができるのだろうか。以下にその方法を示す。

方法1: チームの結束力を高める

戦略・戦術・目標に対する共通理解は、チームの全員が心身ともに健康であり、建設的で有効なコミュニケーションが活発に行われていなければ確立できない。

そして、チームの健全性やメンバー間の建設的で有効なコミュニケーションは、オープンで柔軟性があり、あらゆる変化への順応性の高い組織文化によって支えられるものである。

ゆえに、戦略・戦術・目標に対する共通理解を確立するうえでは、まずは自分のチームに次に示す文化的な土台が整っているかどうかを確認していただきたい。

心理的安全性

チーム内で心理的安全が確保されていれば、チームの全員が安心して自分の意見やアイデアを発信し、かつ、リスクを冒すことができる。その逆に、心理的安全性が確保されていない場合、それは戦略・戦術・目標に対する理解の共有化の妨げとなる。

例えば、心理的安全性の低いチームでは、戦略・戦術・目標が曖昧であったり、それらに対するメンバーの理解が足りていなかったとしても、マネージャー(あるいは、他のメンバー)に非難されたり、蔑(さげす)まされたりすることを恐れ、そのことを口にする人は出てこないはずである。結果として、チームは無言と混乱の中で仕事をすることになる。

このような状況に陥るのを避けるためにも、チームの全員が互いのつながりを感じられる時間を積極的に作り、メンバー全員が率直に、かつオープンに自分の意見や疑問、アイデアを述べられるようにすることが大切となる。また、メンバーの誰かが失敗をしても、それを責めず、学習の機会とすることが重要となる。

オープンで透明性のあるコミュニケーション

チームにおけるオープンで透明性のあるコミュニケーションの文化は、多くの場合、自然に醸成されるものではなく、チームのマネージャーがそう仕向けることで醸成されるものだ。したがって、チームマネージャーは、メンバー全員に対して自分の見解、疑問、アイデアを率直に、かつオープン、かつ積極的に述べるよう奨励したり、自分の意見に対するフィードバックをチームメイトに求めたりすることが大切である。

また、チャットやビデオ会議、文書共有などのツールを使い、チーム内における仕事の情報やコミュニケーションの内容をチームの全員で常に共有できるようにすることも重要だ。

そして、何らかの意思決定が下された際には、チームの全員がその方向性や方向の変化について即座に把握できるようにし、そのうえで「なぜ、その方向に進むことになったのか」「なぜ、そうすることが必要なのか」も理解できるようにすることが大切である。こうすることで、メンバーの全員がチームの「コアコンセプト」を理解して各自の行動やタスクに組み込み、望ましい結果をより効率的に出すことが可能になる。

This article is a sponsored article by
''.