アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。WORK LIFEのライターのケイティ・テイラー(Katie Taylor)が、職場の「心理的安全性」を確保し、高めることの大切さと、そのための手法について説く。

リーダーシップのスタイルと心理的安全性

コンサルティングファームのマッキンゼーでは先ごろ、リーダーシップのスタイルと心理的安全性の高低にどのような関係があるかについて調査した。

その結果によると、「コンサルティング型」と「サポート型」のリーダーシップには組織の心理的安全性を促進する効果があり、「権威型」のリーダーシップには、その逆の効果があるという。また、「挑戦型」のリーダーシップ(=チームメンバーに自分が考えている以上のことをするよう促すスタイル)にも心理的安全性を高める効果がある。ただし、このタイプのリーダーシップが効力を発揮するのは、コンサルティング型、ないしはサポート型のリーダーシップによって前向きなチームの風土がすでに作り上げられている場合に限定されるようだ。

いずれにせよ、コンサルティング型/サポート型のリーダーシップが組織の心理的安全性を高める効果は高く、リーダーがこれらのリーシップを発揮しているチームの場合、メンバーの72%が自分の働く環境について前向きであると答えているという。その反対に、リーダーがコンサルティング型/サポート型のリーダーシップを発揮できていないチームでは、チームの状態を前向きであると答えたメンバーは全体の27%でしかないようだ。

分散型チームの心理的安全性を高める方策

先に示した心理的安全性を高める5つの行動は、分散型チームにおいても均しく有効である。ただし、オフィスという一つの場所に集まって仕事をしているチームとは異なり、分散型チームでは、ともに働くチームメイトや上司が自分のすぐそばで働いているわけではない。そうした環境で心理的安全性を確保し、向上させるためには「より意図的な行動」が求められる。具体的には、以下のような方策を講じることが必要になるということだ。

方策1: 1on1ミーティングをより頻繁に行う

米国のシリコンバレーで40年以上活躍している経営開発コンサルタントのレベッカ・モーガン(Rebecca Morgan)氏によると、分散型チームではチームメイトの誰かと偶発的に出会い、対面で対話する機会がほとんどなくなるがゆえに、チームをマネージするリーダーは、チーム内での信頼関係を築く(=心理的安全性を確保する)施策を、より意図的に、かつ積極的に講じなければならないという。

その観点からモーガン氏が推奨しているのが、チームのリーダーとメンバーとの1 on 1ミーティングの回数を必要に応じて増やすことである。1回のミーティング時間は短くても(もちろん、ネットワーク越しでも)構わないが、大切なのはメンバーと定期的に顔を合わせることと、フィードバックや懸念事項を伝える機会を増やすことであるという。

方策2: メンバーの自由回答を引き出す

モーガン氏は、心理的安全性に関する自身の研究の中で、シリコンバレーの数10人の経営者に対して「職場での心理的安全性を促進するための取り組み」について尋ねたという。その回答の中で最も有効な取り組みと感じられたのは、ある会社のチームリーダーがメンバーとの1 on 1ミーティングの際に自由回答を求めたことだったようだ。そのチームリーダーは、メンバーに対して次のような質問を投げかけたという。

「最近はどうなのかな? リモートワークでの困りごとは何かない? 何でもいいから聞かせて欲しい」

そう問われたメンバーの1人は、3人の子どもに自宅学習をさせるデバイスが足らずに困っていることを打ち明けたようだ。そこでリーダーは、自社で使われずに倉庫に放置されているタブレット端末を、そのメンバーに貸し出すことを提案し、メンバーから大変喜ばれたという。

リモートワーク中心の働き方では、チームのメンバーが何に困っているかが見えづらくなる。そのため、自由回答の形式でメンバーの置かれた状況を話させないかぎり、彼らが何に悩んでいるかはわからない。また、そうして聞き出した悩みを真摯に受け止めて、親身になって解決しようとする姿勢を示すことで、チームに対するメンバーの心理的安全性を高めることが可能になるのである。

方策3: メンバーのプライベートライフに配慮する

エドモンドソン氏は『Harvard Business Review』に最近寄稿した記事の中で、リモートワークでは仕事と私生活(プライベートライフ)との境界線がどうしても曖昧になるため、チームのリーダーは、仕事のスケジュールを決定する際に、メンバー各人のプライベートライフへの配慮が必須になると指摘している。

そしてこのとき、例えば、「午後5時以降は子供と一緒である」「毎週水曜日は病気の母の世話をしなければならない」といったメンバーの事情をしっかりと受け止めることが、チームの心理的安全性を高めるうえで大切となる。そうすることで、24時間365日のタイムフレームの中で仕事の予定が柔軟に入れられないとしても、周囲から責められたり、評価が下げられたりするリスクがない点を、メンバーに理解してもらえるからである。

方策4: ビデオ会議の行動規範を定める

会議室での会議では、会議中にPCを取り出して別の作業を進めることは困難だった。ところが、ビデオ会議の場では、このような行動を簡単に行うことができる。

ただし言うまでもなく、このような行動は会議の意義を薄れさせるばかりか、会議で発言している人への配慮にも欠け、発言者に対し「自分は周囲から軽んじられている」、あるいは「自分の発言は意味がないと思われている」との印象を与えかねない。

したがって、ビデオ会議に関しては、適切な行動規範をチーム内の業務時の合意(Working Agreements)として定めておくことが大切である。例えば、「ビデオ会議では必ずカメラに向かって発言をする」といった規範を定めたうえで、それをチーム内で周知徹底させ、かつ、リーダーが自らそれを実践するといったかたちである。

また、モーガン氏は、ビデオ会議においては必ず参加者の全員から意見を聞くようにすることも勧めている。理由は、人前で意見を言うのが苦手な人たちの着想から、最高のアイデアが生まれることが多いからである。

なお、アトラシアンの「Team Playbook」では、こうした合意を作成するうえでのヒントを提供している。ぜひ、今後の参考にされたい。

まずはチームリーダーが動く

チームの働き方が、オフィスワーク中心かリモートワーク中心か、あるいはハイブリッド型かによらず、職場の心理的安全性を高めるうえでは、その大切さを言葉で唱えるだけでは不十分であり、具体的な行動に移すことが重要となる。

その大切さについて、モーガン氏は次のように指摘している。

チームリーダーが、チーム内で他者への警戒心を緩めたり、自分の欠点やミスをオープンにしたりすることを奨励したとしても、リーダー自身が自分の欠点やミスを包み隠そうとしていたり、メンバーのミスを責め立てたりしているのでは、チーム内の心理的安全性は絶対に高められません。必要なのは、リーダーが率先して周囲に対して無防備になり、かつ、メンバーによるミスや自分に対する批判を歓迎する姿勢を示すことと言えるのです

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