アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。アトラシアンの働き方改革担当ブランドリード、クリスティン・デラ・ロサ(Christine Dela Rosa)が職場で「エモーショナルネットワーク」を構築する重要性について説く。

本稿の要約を10秒で

  • 仕事上の問題に突き当たったとき、周囲にサポートを求めることは、単に気持ちを楽にするだけでなく、より良い決断をするために役立つと科学的に実証されている。
  • どのようなサポートが必要かを見極めることがエモーショナルサポートネットワーク構築の第一歩となる。
  • エモーショナルサポートネットワークには、チームメイトや元同僚、社外のプロフェッショナルなど、さまざまな人が含まれる可能性がある。

問題解決能力は優れた個人よりもグループのほうが高い

新入社員から経営幹部に至るまで、会社組織の誰もが仕事上のサポートを必要とするときがある。例えば、険悪なムードに陥った相手の状況を分析したり、停滞しているプロジェクトのトラブルシューティングを行ったりする際には、頭脳は一人よりも多いほうが良い。

実際、米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究者によると、複雑な問題を解決するパフォーマンスは個人よりも、グループのほうが高いという。この点について、同校の主任研究員であるパトリック・ラフリン(Patrick Laughlin)博士は次のような説明を加えている。

私たちの研究によって、3~5人のグループのほうが、グループの中で最も優秀な個人よりも問題解決の能力が高いことが判明しました。この結果は、共同作業の中で正しいレスポンスを生成して採用し、誤ったレスポンスを退けたり、効果的に情報を処理したりする人の能力によるものと考えられます

もっとも、同僚たちがリモートで働いている分散型チームの場合、こうした人の能力を活用するのが難しくなる。そこでお勧めしたいのが、エモーショナルサポートネットワークを構築することである。

エモーショナルサポートネットワークとは?

エモーショナルサポートネットワークとは、仕事に関して何らかのサポートが必要になったときに頼ることのできる、信頼の置ける人たちで構成されたネットワークを意味している。

ここで留意すべきは、エモーショナルサポートネットワークを持つことと、職場において親しい友人を作ることとは異なる点だ。エモーショナルサポートネットワークは、仕事上の成果を出すことに重点を置いた“人間関係”ととらえていただきたい。

ゆえに、エモーショナルサポートネットワークを構成する人(以下、「サポートポッド」と呼ぶ)は、友人というよりも「スパーリングパートナー」に近い。

そのパートナーであるサポートポッドとは、明確な目的をもって視点・意見を交換し、自分の状況について話し合う。ここで言う明確な目的とは、自分が次のステップに進むための自信を身に付けたり、周囲からの信任を得たり、職場でのやり取りから何をどう感じとるかを決めたりすることを指す。例えば、以下のような質問を投じることで、サポートポッドとの対話が始まると考えていただきたい。

  • 私は、営業チームとのミスコミュニケーションが多いような気がします。その改善に向けた良いアドバイスはありますか?
  • フルタイムでの在宅勤務を上司に認めてもらいたいと考えています。フルリモートワークへの移行を、どのように申請するのが効果的でしょうか?
  • 昇進に向けて、リーダーに見せる計画をまとめてみました。この計画は、リーダーが私に求めている点をカバーしていると思いますか?

サポートポッドは1人かもしれないし、数人かもしれないが、各メンバーは、あなたの悩みの相談に応じてくれるはずである。ちなみに、サポートポッドの中には複数のエモーショナルサポートネットワークに属する人がいるが、課題のタイプに応じて複数のサポートポッドとのつながりを持つことは有用と言える。

また、サポートポッドをTier(ティア)1〜3の3階層に分けるのも効果的である。例えば、Tier 1のメンバーは、デフォルトですべての相談ごとを持ちかけるメンバーとして設定し、Tier 2のメンバーは専門的な知識を持つ人たちで構成する。そしてTier 3は、あなたが関係を深めたいと考えている人たちで構成するといった具合である。

画像: 図:エモーショナルサポートネットワークの階層

図:エモーショナルサポートネットワークの階層

上記のとおり、サポートポッドとの対話は仕事に関する相談事に限定すべきだが、プライベートとの線引きは意外と難しい。というのも、家族の病気や育児など、個人的な問題が仕事上のパフォーマンスに影響を与え、それが悩みになることが多いからである。とはいえ、サポートポッドを、自分の会社の人事部門やヘルスケアの専門家の代わりに使うのは避けるべきである。

エモーショナルサポートネットワークがもたらす2つのベネフィット

エモーショナルサポートネットワークの構築には相応の手間がかかる。ただし、それは構築の苦労を補って余りあるベネフィットをもたらしてくれる。特に大きなベネフィットは次の2点である。

ベネフィット 1:的を射たサポートが得られる

自分の職務に特有の悩みごと抱えている場合、あなたの職務上の責任を理解しているサポートポッドから、有益で適切なサポートを受けられる可能性が大きい。

その可能性については、アトラシアンが社内ですでに実証済みと言える。

アトラシアンでは心理学者をスタッフとして雇い入れ、その心理学者とチームのマネージャーたちとの対話を促進させる試みを展開した。その対話の中でマネージャーたちは特に困難に感じていることを含め、自分たちが経験していることを共有するよう促され、心理学者とのコミュニケーションチャネルを互いにオープンにしている。結果として、マネージャーから他のマネージャーに対し、有益な提案が行われることも多く見受けられた。また、マネージャー同士が自分たちの気持ちを直接話し合う場も設けられたりしたのである。

この試みに参加したマネージャーからは「次に踏み出すべきステップをより明確にすることができた」という声が多く聞かれている。それを踏まえて、アトラシアンの心理学者であるアナリース・マクガヴィン(Annaliese McGavin)とシャンタ・デイ(Shanta Dey)の両名は、従業員が適切なスパーパートナー(感情をぶつけ合う適切な相手)を見つけることができれば、より効果的に行動を起こせるようになると報告している。

ベネフィット 2:健全な“ガス抜き”によりプレッシャーから解放される

いかなる問題も、それを吐き出すこと──言い換えれば、“ガス抜き”をすることでストレスレベルが下がるということは調査でも明らかにされている。ただし、すべてのガス抜きが実質的なメリットにつながるわけではない。誰からも効果的なフィードバックやアクションが得られない場合には、悩みごとをいくら打ち明けても本当の意味でのガス抜きにはならず、ネガティブな感情を悪化させるだけとなる。ゆえに重要なのは、自分の気持ちに積極的に耳を傾けてくれる相手に悩みを伝えることとなる。

例えば、職場の同僚たちは、会議がうまくいかなかったときに愚痴を聞いてくれるかもしれない。しかしもし、その同僚たちが、あなたの問題に足を踏み入れ、あなたの思考プロセスを分析し、解決策や新しい視点を導き出そうとする心の準備ができていなければ、彼らのわめき声は、あなたをより興奮させるだけで終わるはずである。

ゆえに、より的を絞った、戦略的なエモーショナルサポートネットワークが必要とされる。このネットワークを通じて、自分の状況に関するコンテキストをサポートポッドに共有してもらうことで、目前の課題を解決するだけではなく、その先に進むための有用なアドバイスを得ることが可能になる。

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