コロナ禍でリモートワークが進む中、チーム内のコミュニケーションに苦労している企業は少なくない。多くの企業がコミュニケーションを駆使したコラボレーションで成果を出し、イノベーションを起こしたいと考えているのではないだろうか。
ITmedia ビジネスオンラインでは、ライブ配信セミナー『新時代の生存戦略 コラボレーションを生み出す「縦横無尽なコミュニケーション」のカギ』を、6月24~25日に開催。組織変革の第一人者や先進企業の担当者らが登壇した。
セミナーでは、チームのコラボレーションをITツールで支援するアトラシアンの朝岡絵里子シニアマーケティングマネージャーが講演。『コラボレーションで成果を出す!高パフォーマンスのチームの方程式』と題して、朝岡氏が成果を出すためのコラボレーションの具体的な方法について語った。講演の模様をお伝えする。
イノベーションにはコラボレーションが不可欠
コロナ禍でリモートワークが進みました。チームの一人ひとりがそれぞれ異なる空間に置かれたことで、今までは社内で同じ場にいたからできていたコミュニケーションが、思うようにできない状況に直面しているのではないでしょうか。
私は15年以上前からリモートワークを実践してきました。これまでの経験を通して知ったこと、見聞きしたこと、考えたことをベースに、どうすればリモートワークの状況でも組織全体としてパフォーマンスが上がるコラボレーションができるのかについて、お話ししたいと思います。
アトラシアンのミッションは、あらゆるチームの可能性を解き放つことです。私たちがチームに着目しているのは、孤独な天才が1人でイノベーションを起こしたケースは少なく、世界にインパクトを起こした人には必ずパートナーがいたからです。このような2人組を「クリエイティブペア」と呼んでいます。Apple、Microsoft、ソニーやホンダもそうですね。
経営学者の野中郁次郎先生は、異質な人同士でペアを組み、お互いの主観を徹底的にぶつけあう「知的コンバット」が、イノベーションの原点だとおっしゃっています。同質な人ばかりが集まると忖度(そんたく)のようなものが働いて、知的な決闘になりません。多様性のあるチームが徹底的に対話をして、そこに共感が生まれて、新しい価値に昇華させていくプロセスこそがコラボレーションです。継続的にイノベーションを生み出すためには、コラボレーションは欠かせません。
オンラインコミュニケーションに必要な2種類のツール
では、どうすればイノベーションを生むコラボレーションを実践できるのでしょうか。職場でのコラボレーションの成熟度を4つのレベルに分けて、具体的に考えてみたいと思います。
最初はいつでもどこでもできるレベルです。テレワークになって対面での会話が物理的にできなくなりました。このことが原因でコミュニケーションに問題が生じているのであれば、オンラインで迅速なコミュニケーションを実現する手段として、最低でも2種類のITツールの導入をお勧めします。
それは、主に文字でメッセージのやりとりをするチャットツールと、映像と音声でやりとりをするWeb会議ツールです。チャットはメールに比べてリアルタイムに双方向のコミュニケーションができて、心理的な距離も近くなります。当社ではSlackを使っています。
Web会議ツールは、厳密なリアルタイム性と、音声と映像を使って会話ができる点が最大の特徴です。声のトーンや大きさ、表情やしぐさなど、文字ではやりとりが難しい、言語に頼らない情報を伝達できます。
これらの手段を手に入れたら、コラボレーションの2番目のレベルであるコミュニケーションの円滑化を考えてみましょう。意識したいポイントは、誤解や摩擦を回避する思考と実践の方法です。
文字のコミュニケーションでは、対面のようには書き手の置かれた情報や言葉のニュアンスなどが伝わらないため、意図に反してきつく伝わることがあります。言葉が与える印象に気を付けて、言葉の背景にある情報を補足して伝えることを意識してみてはいかがでしょうか。
また、文字で問題が起こりそうなら、Web会議に切り替えてフォローしましょう。特にネガティブなフィードバックをする場合は、ニュアンスも伝わりやすく、相手の反応も見られるWeb会議ツールの利用がお勧めです。言語・非言語のコミュニケーションの差を理解して気を配れば、より円滑なコミュニケーションができます。
コミュニケーションを使い分ける
3番目のレベルは、コミュニケーションの在り方を、「成果を上げるコラボレーション」に発展させていく方法です。ポイントはやりとりされる情報の種類と特徴を理解して、コミュニケーションを使い分けることです。
コミュニケーションには、電話やWeb会議などリアルタイム性のある同期型と、メールのような非同期型があります。チャットは使い方次第でどちらにもなりますが、リアルタイム性を期待するのであれば同期型として扱います。
例えば、会議をしていたら1日が終わってしまった経験はないでしょうか。これはオンライン化の前からあった問題ですが、同期型のコミュニケーションが増えすぎると、仕事の大半をコミュニケーションに費やしてしまい、本来の価値を見いだす仕事ができなくなります。
同期型の情報は流れていきます。記録として保存すべき情報であれば、非同期型のコミュニケーションを活用する方が適しています。相手の時間を奪ってでも同じ時間を過ごす意味があるのかどうかを基準に、同期型と非同期型の使い分けを考えてみてはいかがでしょうか。