「行動」で評価するコンピテンシー評価

多国籍の人材をチームとしてまとめるために、青本氏が中心となって2020年から取り組んでいるのが評価制度の見直しだ。

「いろいろな文化の方が集まり、それぞれバックグラウンドも違うので、なかなか透明性のある評価制度を作るのは難しいです。どうすればみんなが気持ちよく働けるのかを意識した結果、成果に対して評価するのではなく、行動に対して評価するコンピテンシー評価といわれるものを新たに導入しました。

具体的には、5つの大きな行動指針を17項目の行動に落とし込んで、それぞれが1年間どのように活動し、達成したのかを半期ごとに評価します。コンピテンシー評価を導入している企業は、成果に対する評価とセットにしているケースも多いようですが、私たちはコンピテンシー評価だけに振り切っています」

画像2: コンピテンシー評価を導入
社員の4割が外国籍 宇宙ベンチャー・アクセルスペースの「強い組織の作り方」

コンピテンシー評価は、一般的には高い業績を残している社員の行動特性をもとに、行動する項目や基準を設定して人事評価をするものだ。導入した背景には、成果に対する評価では難しい面があるからだという。

「宇宙ビジネスという新しいことをやっているので、細かい成果に対しての評価は提示しにくいところがあります。状況によって評価が変わるケースもあり、そうなると軸がぶれてきます。軸がぶれないために重要なのは、会社のミッションやビジョンに立ち返ることです。

ミッションやビジョンに沿った具体的な行動をとれば自ずと成果も出てきますし、国籍やバックグラウンドもあまり関係ありません。まだまだこれからですが、少しずつ行動変化も見えてきて、チームによっては機能してきていると思います」

社員を結束するニュースレターとミーティング

コンピテンシー評価の導入以外にも、社内の各チームが結束するための取り組みを実施している。その1つが、中村氏が毎週社員に向けて発信しているニュースレターだ。アクセルスペースが次に目指しているものを、明確に社員に伝えているという。

「最近ではAxelGlobe1.0の完成に向けた道筋が見えたことや、これから衛星の量産に本格的に取り組み、世界からどんどん衛星開発の案件を受注するといった目標を具体的に伝えています。今はポジティブなメッセージを出しやすいタイミングです。

大事なのは、いいニュースが出せないときでも、社員のモチベーションを維持することですね。一番つらいのは、衛星を載せたロケットの打ち上げが延期された場合です。次の打ち上げまで何カ月も待たされることでビジネスができなくなるので、エンジニアも営業もつらくなり、『この会社は大丈夫だろうか』といった不安が広がります。

そういう時こそ、『経営陣が何とかするから大丈夫だ』という力強いメッセージを出します。実際に2008年の創業以来、いろいろな難局をくぐり抜けてきて、会社の足腰は強くなっています。経営陣が強い意志と覚悟を見せることが、社員の気持ちを前向きにすることにつながると経験上感じています」 

もう1つは、毎週1回開いている全社ミーティングで、1人の社員が誰かに「ありがとう」と感謝したいことを伝えることだ。感謝を受けた人は、また次の週に誰かに感謝の思いを伝える。つまり、appreciation(感謝)のリレーだ。始めたのは中村氏の提案だった。

「仕事をしていると、どうしても自分の周りしか見えなくなってしまいます。でも、いろいろな仕事があって、多様な人材が集まっている環境をうまく生かすには、他のチームや社員がどんな仕事をしているのかを可視化して、興味を持ってもらうことが必要だと考えました。

そこで、ある人が社内の別の人に感謝している内容を共有することで、感謝された人の一面を全員が知ることができます。リレー方式で広げることによって、全員が社内全体に目を配ることができるようになります。

もちろん、感謝された人は、『ありがとう』といわれるのはうれしいですよね。自分の仕事に意義を感じることができます。このリレーによって、社内で横が意識できているのではないでしょうか」

This article is a sponsored article by
''.