アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。アトラシアンのテクニカルアカウントマネージャーのランジャン・ラオ(Ranjan Rao)が、アジャイル開発をスケールするうえで役立つ7つの教訓を紹介する。紹介する教訓は、ラオが銀行でのアジャイル開発の体験を通じて獲得したものだ。

教訓4: アジャイル開発の取り組みにサプライヤーを巻き込む

A銀行が展開した優れた取り組みの一つは、サプライヤーとのコミュニティを形成し、オープンな対話を活性化させたことだ。価値観・基準・手法に対するサプライヤーの共感を醸成するためのコミュニティは、A銀行が危機的状況を乗り越えるための原動力の一つとなった。

企業の調達プロセスは総じて官僚的であり、そもそもアジャイル開発との相性は良くない。ゆえに、アジャイル開発の取り組みにサプライヤーをどう協力させるかは企業にとって大きな課題となっている。また、サプライヤーはそれぞれ独自の商慣習と基準を有しており、それらが顧客のアジャイル開発の取り組みに適合しないこともある。さらに、顧客とスクラムを組み日常的にコラボレーションすることよりも、顧客の指示に従って完成品を作り、届けることのほうを好むサプライヤーも多い。

要点

サプライヤーとオープンに対話し、価値観を共有する文化を醸成することで、サプライチェーン全体のアジリティも高められる。その文化はコミュニティを形成することで醸成される。

要点5: リーンのアプローチとデザイン思考を組み合わせる

A銀行では、アジャイル開発をスケールすることの難しさを誰もが理解していた。しかも当時は、SAFeやLeSS、Scrum@Scale、DaDといったフレームワークがそれほど進化していなかった。

そのためアクションフォースでは、システム利用者のペルソナとユーザージャーニーをデザイン思考のアプローチによって特定し、ユーザーエクスペリエンス(UX)設計のベストプラクティスを定義した。そのうえで、システムのデリバリー手法にエリック・リー(Eric Rees)が広めた「リーン スタートアップ アプローチ」を取り入れた。

私たちの主たるフォーカスポイントは、新規制への対応期限までに、監査人を満足させるのに必要とされる「MVP(最小実行可能製品)」の再定義を行うことだった。開発のスコープは同心円を使って可視化し、バックログのコア部分は円の内側にすべて書き出した。そして、従来からある「ビルド→計測→フィードバック・学習」のループをベースにしたスケーリングの方法論を採用した。これにより、自分たちの取り組みを、自信をもってスケールし、全体のアジリティを上げる段階へとすみやかに移行することができたといえる。

要点

現在、デザイン思考によってCXを向上させる取り組みに関心が集まっているが、その取り組みをどのようにスケールさせるかで悩んでいる企業は多い。リーンスタートアップとデザイン思考のアプローチを組み合わせて使用すると、CX改善・改革のスケーリングが効率的になる。

教訓6: 「ドッグフーディング」は機能する

「ビルド→計測→フィードバック・学習」のループにおいて、A銀行のデリバリー担当チームは、内部監査チームと密接に連携した。内部監査チームは、試験的にデリバリーされたシステムを自ら活用して点検し、デリバリー担当チームに貴重なフィードバックを提供した。こうした内部監査チームの協力・関与は、A銀行の各事業部門が変更された商品・サービスを、安心して、すみやかに受け入れられる状況をつくったと言える。また、外部監査人が監査に最初に訪れたとき、彼らはA銀行による規制対応の仕事に品質の高さに感銘すら受けたという。

要点

パフォーマンスが最高レベルにある開発チームですら、概念化されたユーザー行動と実際のユーザー行動の違いに苦労を強いられることが多い。その苦労を最小化するうえで、継続的なドッグフーディング、すなわち自社の商品・サービスを自社内で使用し、フィードバックをもらい続けることが有効である。

教訓7: チームを水平・垂直の2軸でスライスする

アジャイル開発では、初期のころからクロスファンクショナルチームを組むことの重要性が強調されてきた。ただし、A銀行の取り組みを通じてわかったことは、単純にクロスファンクショナルなチームを構成するだけで、すべての作業がうまく回っていくわけではないということだ。より大切なのは、チームを垂直・水平の2つの方向でスライスすることである。つまり、特定の職務に精通する対象分野の専門家を組織横断で集めるだけではなく、組織構造の特性に沿ってチームをナビゲートできる上位のリーダーも、チームには必要とされるということである。

要点

組織は、既存の構造がスケーリングのボトルネックになった時点で、変革のポイントに到達する。垂直方向でスライスされたクロスファンクショナルチームならば、スケーリングを加速させることができる。

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