アトラシアンには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

会議の無意味化を防ぐために

仮にあなたが、経営上の重要な意思決定を下す会議に呼ばれたとしよう。このとき、会議に参加した経営幹部の幾人かが、あなたのことをよく知らず、信頼も信用もしていなかったとすればどうだろうか。その場合、会議でのあなたの発言は何の効力も持たず、会議に出たこと自体が徒労に終わるはずである。

一方、あなたがチームリーダーであり、その立場で会議を主催したとする。このとき、参加者全員に会議に集中させることができなければ、せっかく催した会議も意味なく終わる恐れが強まる。今回は、そのような事態を回避し、「会議の生産性」を高めるための極意をお伝えしたい。

①ノートPCを閉じさせる

自身が主催した会議に臨み、会議冒頭で「参加への謝辞」を述べるとき、チームリーダーに必ずしていただきたいことがある。それは、参加者全員のノートPCを閉じさせ、スマートフォンを手元から離すよう要請することだ。

ある調査によれば、会議に参加したビジネスパーソンの73%が、会議中にノートPCやスマートフォンを使って他の仕事も並行して進めているという。このようなことを許していては、参加者の会議への集中力が下がり、会議自体があまり意味をなさなくなる。

会議の生産性を高めたければ、会議中の「ながら行為」を一切禁じて、会議の進行に不必要な参加者のデバイスはすべてシャットダウンさせることが重要だ。

②自分に答えがあっても参加者に答えを求める

課題解決や意思決定のための会議においては、主催者(チームリーダー)が結論を先に示すことは禁物で、そうすることに意味はない。たとえ、自分の中に答えがあったとしても、まずは参加全員の意見を聞き、議論を深めるようにすることが重要である。以下は、私が好んで使う質問のし方だ。

「そうしなければならないのは、なぜ? 何のためなんだろう? 教えて欲しい」
「その施策の成功を、どう測定したらいい?」
「このアイデアは広げられるかな?」
「それは興味深いアイデアだけど、 直感的に理解しづらい。どんな場面に適用できるんだろうか?」
「このアイデアを採用することで、どんなリスクが想定される?」
「そのアイデアはスケールが可能かな?」

このような参加者に質問を投じることで、自分が参加者を尊重し、それぞれの意見に興味を抱いていることをアピールできる。これにより、参加からの信頼を、その場で得て、会議での議論を実(みの)りあるものにすることが可能だ。

③“セレブ”たちをマネージする

会議にはよく、「強い意見」を持ち、その意見への「賛同を周囲に求め」、周囲からの「尊敬を集めている」ような上司──つまりは、組織の“セレブ”たちが参加してくる。この種の人は、無意識のうちに会議を支配するか、破壊するかのどちらかの役割を演じてしまう恐れが強い。ゆえに、こうした“セレブ”たちとは、事前に会議の主旨を共有しておき、建設的な会議にするための協力を要請しておくほうがいい。

④徹底して成果にこだわる

会議はビジネス活動の一部だ。ゆえに徹底して成果にこだわる必要がある。そうすることで、会議参加者は、会議は仕事であり、そのゴールを着実に遂行しなければならないことを理解する。結果として、会議のスピードが上がる可能性がある。

また、会議の中では、参加者に会議の目的を常に意識させ、議論が脱線したり、横道にそれたりすることを回避することが大切だ。そして、会議の目的が達成された際には、即座に会議を終了させることが効率的である。

⑤内向的な人にも居場所を作る

人の中には、会議中に発言するよりも、自分の考えを深めることに集中する向きがいる。このような内向的な人は、“意見を持たない人間”と誤解されがちで、とかく“声の大きい人”に引きずられてしまう場合が多い。

ただし、チームのリーダーは、そうした内向的な人にも、会議での居場所を作ること、あるいは発言の余地を与えることが重要だ。もし可能であるならば、そうした内向的な人には、会議の主旨や要点を事前に共有しておき、自分の意見をまとめさせ、会議で発言するよう仕向けるのが良策と言える。そして、会議のときに「ほかに、考慮に入れるべきことはありませんか?」と、内向的な人に発言の機会を与えるようにするのが有効だ。

⑥「偏見」は絶対に許容しない

会議の中では、人が他者の意見を遮るケースがときおり見受けられる。とりわけ米国の場合、男性が女性の意見を遮るケースが、男性が男性の意見を遮るケースに比べて圧倒的に多い。おそらく、米国男性の中には、女性のアイデアを否定するのが習慣になっている向きがまだあるのだろう。さらに米国の場合、マイノリティグループに対する偏見があり、そうした同僚たちの意見が蚊帳の外に置かれることがある。

こうした習慣や偏見は、倫理的にも許されることではないし、組織のアイデアの硬直化を引き起こすだけで、チームにとって何の得にもならない。もし、チームの会議の中で、このような習慣や偏見が少しでも見受けられた際には、即刻それにストップをかけることが必須だ。また、そのための方法として、「人の意見を遮らない」という会議のルールを設けるのも一手である。

⑦"ラバーチキン"(日本では"びっくりチキン"と呼ばれることもある)を会議室に持ち込む

上の見出しを見て、すべての方が、「えっ、ラバーチキン? 何のことだ?」と思ったはずである。そう、これは奇妙な話で、会議を円滑に進めるためのギミックに過ぎない。ただし、これが意外と有効なのである。

実際、私は、テーブルの真ん中にラバーチキンを置いた会議に参加したことがある。議題はもちろん、ラバーチキンとはまったく関係のないビジネスの話だったが、なぜか議論が淀みなく進み、建設的な意見がすべての参加者から多く出されたのである。

なぜ、ラバーチキンを会議室に持ち込むことが有効なのか──。理由はいたってシンプルだ。人というのは、少し間違った意見を出しても許容されるような雰囲気の中にいると、自分の創造力をフルに活かして、積極的に発言するようになるからである。

会議の参加者たちは、特定のタスクのプロであり、会議の中でも、そうした立場の下で、正しい意見を出そうと常に緊張した状態に置かれている。ラバーチキンは、そうした緊張と重圧から皆を解き放つ役割を演じるのである。

以上、会議の生産性を高めるための7つの極意を紹介した。これらはすべて、チームの会議を主催するリーダーが、会議に参加するメンバーからの信頼を得るための方策でもある。おそらく、米国特有(だと思いたい)の問題に根差した「⑥」の極意のほかは、世界各国で通用する手法であるはずだ。ぜひ、すべての国のチームリーダーに試していただきたいと願っている。

This article is a sponsored article by
''.