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Atlassian
Head of Product, AI, Agile & DevOps
ジョシュ・デヴェニー
ハイペースで拡大するアトラシアンのプラットフォーム
アトラシアンは現在、チームとツール、データを相互につなぎ、組織における協働(コラボレーション)の生産性と効力を高めるための基盤として「Atlassian Cloud」を提供。本プラットフォームを通じて、デジタルワークスペースの「Confluence」やプロジェクト管理ツール「Jira」といった製品や各種機能を提供するスタイルを打ち出している。
すでにアトラシアンの製品は、200を超える国々で使用され、顧客の総数は30万に上り、Atlassian Cloudの顧客数も20万を超えている。その中で力を注いでいる1つが、AI技術による製品の強化だ。デヴェニーによる講演では「AIと共に躍進するチームワークの未来」という演題のもと、そんなアトラシアンの製品についてさまざまに語られた。
本講演の中で、デヴェニーはまずConfluenceやJiraといったアトラシアン製品の拡張性、パフォーマンス、コンプライアンス性が大きく向上していることに触れた。
「ConfluenceやJiraのサイト当たりでサポートできるユーザー数は、この1年で大きく拡張され、Confluenceが15万人へ、Jiraの場合で5万人へと拡大しています。また、両製品ともにパフォーマンスが30%近く向上。世界4地域のコプライアンス要件も満たし、データ保管が可能なAtlassian Cloudのリージョン(データレジデンシーリージョン)が過去1年で11リージョンへと拡大しています」
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デヴェニーは、アトラシアンにおける製品の開発、改善のスピードも増しているとして、次のような説明を加える。
「アトラシアンは2023年の1年間で1,000の新機能をお客様に提供し、8,000件に上る改善をAtlassian Cloudに加えています」
さらに、新製品を市場に投入するペースも上がり、ここ1年程度の間に、製品担当チームに向けたプロダクトマネジメントツール「Jira Product Discovery」(参考文書)をはじめ、ソフトウェアの状態を可視化して開発チームのコラボレーションを効率化させる「Compass」、非同期型のビデオコミュニケーションを実現する「 Loom 」(参考文書(英語))、チームのナレッジをベースにメンバー各人の意思決定や仕事をアシストするAI「Rovo」といった製品を相次ぎローンチしている。
チーム間のコラボレーションをより有効に
アトラシアンはかつて、ソフトウェア開発チームのコミュニケーションやコラボレーションを効率化することに製品づくりの軸足を置いていた。それが今日では、開発チームのみならず、ITチーム(IT運用チーム)やマーケティングチーム、製品担当チーム、営業チーム、財務チーム、法務チームなど、組織を構成するすべてのチームが相互に連携しながら、共通の課題に取り組むための製品、ないしはプラットフォームの提供に力を注いでいる。
こうしたチームを跨いだコラボレーションの基盤、つまりは、あらゆるチームのチームワークの基盤として機能するのがJira、Confluence、Loomの3つだ。
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「複数のチームによるコラボレーションを効率的で有効なものにするうえでは『ゴール(目標)』と『ナレッジ』、そして『(タスクの)進捗状況』の共有が必須です。そのための基盤として有効に機能するのがJiraとConfluence、Loomの3つです」(デヴェニー)
AIで進化するJiraとConfluence
Jiraは、開発チームやマーケティングチーム、カスタマーサポートチームなど、異なる専門性を持ったチームが相互に連携しながらプロジェクトやタスクを管理・推進するためのツールだ。
「開発やマーケティングなど、専門性の異なるチームは、異なるツールを用いて自分たちのプロジェクトやタスクを管理していることが珍しくありません。ただし、それではチーム間のより良い連携や効率的で効果的なコラボレーションは実現されません。そこでアトラシアンでは、あらゆるチームが連携しながらプロジェクト管理が行えるソリューションとしてJiraを位置づけ、強化を続けています」(デヴェニー)
Jiraを用いることで、プロジェクトにかかわるすべてのチームが「誰が、何に取り組んでいるか」をリストアップすることができる。
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Jiraの「リスト」ビューを通じたチーム各人のタスクの可視化イメージ
また、Jiraではプロジェクトにおける目標を追跡するのも簡単だ。チーム各人のタスクが全体目標の達成にどう関係しているかを容易に把握できるほか、各チームのタスクが全体目標に向かってどのように進捗しているかを単一のビューを通じて確認することもできる。Jiraでは、プロジェクトにおける目標の達成度を単一のビューで可視化できる
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Jiraでは、プロジェクトにおける目標の達成度を単一のビューで可視化できる
加えてJira には、アトラシアンのAIである『Atlassian Intelligence』によって、プロジェクト管理の作業効率を大幅に高められるというアドバンテージがある。
「Atlassian Intelligence は、アイデアを実現するためのタスクを自動的に提案できます。また、eコマースサイトの立ち上げなど、大規模なプロジェクトを小さなタスクに自動的に分割してプランニングの工数と時間を低減させることも可能です。すでに数千のお客様が、Atlassian Intelligenceを使いプロジェクト管理の工数を大幅に低減させています」(デヴェニー)
Atlassian Intelligenceは、Confluenceからも利用可能で、機能全体の強化に役立てられている。
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ConfluenceへのAtlassian Intelligenceの組み込みイメージ
ConfluenceにおけるAtlassian Intelligenceの活用例として、デヴェニーは今回、ブレインストーミングにおけるアイデア出しとテーマ分類などの自動化・効率化を挙げた。
「Confluenceを使ったブレインストーミングは、ホワイトボードにアイデアを記した付箋を貼り付けていく方式で行われます。Atlassian Intelligenceは、ConfluenceやJiraなどに保存されている顧客からのフィードバックを分析して自動的にアイデアの付箋を作成し、ホワイトボードに貼り付けます。また、アイデアをテーマごとに自動分類し、ブレインストーミングの整理に要するチームの時間と労力を低減させられます」
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ConfluenceへのAtlassianIntelligenceの組み込みイメージ
Atlassian Intelligenceは、Confluenceにおける「セマンティック検索」の実現にも役立てられている。つまり、AtlassianIntelligenceの働きによってConfluenceの検索機能は人間の自然語を理解して、意図を分析し、最適な検索結果を返すことができるのである。
Loomの活用で約50万回のミーティングを削減
先に触れたとおり、Loomは非同期型のビデオコミュニケーションを実現するソリューションだ。アトラシアンでは世界13カ国に分散する1万1,000人の従業員がLoomを活用。これによってすでに、社内ミーティングの数を50 万回近く削減することに成功している。
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Loomでの非同期型ビデオコミュニケーションのイメージ
「Loomはソフトウェアのバクを報告するための手段としてとても便利に使えますが、Loom AIを使うことでさらに便利に報告を行うことができます。Loomに収録された話の内容や画面に表示されている内容を取得、整理し、Jiraのチケットにバクの詳細を簡単に記入できるようになりました。これは素晴らしいことだと見ています」(デヴェニー)
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Loom AIにより取得・整理されたバグレポートのイメージ
Atlassian Intelligenceで一層強化されるJira Product Discovery
アトラシアンでは、先に触れたJira Product DiscoveryやCompass、ならびに「Jira Service Management」といった製品によって、新たな製品(ソフトウェア製品)の「発見」「構築」「稼働(運用)」のプロセスを効率化するというコンセプトも打ち出している。
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このうち、Jira Product Discoveryは、製品に関するアイデアを収集して優先順位を付け、製品ロードマップをステークホルダー全員で共有するための仕組みだ。
「Jira Product Discoveryは1年前のローンチ以来、非常にハイペースでお客様の数を増やしています。お客様の数はすでに7,000以上に達し、累計で300万件以上のアイデアの優先順位付けが行われています」(デヴェニー)
また、新たにローンチされたJira Product Discoveryの「プレミアム版」では、組織内の全プロジェクトを可視化でき、異なるチームの製品ロードマップを1つのビューにまとめることもできる。さらに、Atlassian Intelligenceの機能を取り入れ、製品担当チームが多様なアイデアをよりスピーディに、かつ簡単に把握して優先順位を付けられるようにもなった。
一方、Compassは、マイクロサービスアーキテクチャを指向するソフトウェア開発チームに対して、ソフトウェアコンポーネントの包括的なカタログを提供する製品だ。本製品を使うことで、ソフトウェアコンポーネントの「管轄チーム」「オンコールスケジュール」「コードリポジトリ」「直近のデプロイメントの状況」などを可視化することができる。
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Compassの「カタログ」ビュー
また、Compassでは「スコアカード」を通じて、開発を進めているソフトウェア(サービス)全体の健全性を「ローンチに向けた準備はどの程度整っているか(Service Readiness)」「ユニットテストのカバーレッジはどうか(Unit Test Coverage)」「セキュリティ上の脆弱性はどうか(Security Vulnerabilities)」といった指標ごとに一目で把握することができる。
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さらに、Compassでは「アクティビティ(Activity)」のビューを通じて、サービスの責任者や、サービスに対する最近の変更、ソフトウェアコンポーネントの依存関係、エラーなどを含む重要な詳細を簡単に突き止めることができる。
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Compassにおける「アクティビティ(Activity)」ビューのイメージ
「Jira Service Management + Atlassian Intelligence」でリクエスト対応の手間が劇的に低減
一方、Jira Service Managementは、開発チームとIT運用チーム、そしてビジネスチームを相互につなぎ、IT運用やサポート業務のモダナイゼーションを実現する製品だ。
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「Jira Service Managementはグローバルに広く普及するITSMツールで、5万以上のお客様にご愛用いただいています。そうしたお客様の1社であるドミノ・ピザでは、12カ国にまたがる3,800店舗をサポートするために7つの異なるソリューションをJira Service Management に一本化しました」(デヴェニー)
Jira Service Managementでは、Atlassian Intelligenceを使ったAIOpsの機能も実装されている。これにより、インシデント発生のアラートが自動でグループ分けされ、アラートへの対処・対応方法のレコメンデーションも自動的に行われるようになった。
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Atlassian Intelligenceによるアラートのグループ分けとレコメンデーションのイメージ
「加えて、Jira Service Managementでは、ビジネスチームからの問い合わせやサポートリクエストに対処・対応する業務を効率化するための仕組みとして(Atlassian Intelligenceを使った)『バーチャルエージェント』の機能も実装されています。本エージェントは、人間によるサポートチケットの処理、ないしはリクエストへの対応を手助けするAIです。問い合わせへの回答を提案したり、サポートチケットの優先順位づけや、担当者のアサインを自動的に行ったりすることができます」(デヴェニー)
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バーチャルエージェントによる担当者のアサインのイメージ
さらに、「インスタントサービスデスク」では、自分たちのやりたいことを言葉で入力することで、それにもとづきAtlassian Intelligenceがチームが求めるリクエストタイプ、フォーム、フィールド、ワークフローを持つサービスデスクを構築する。
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構築したいサービスデスクの内容を言葉で入力するイメージ
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Jira Service ManagementとAtlassian Intelligenceで構築するサービスデスクのイメージ
「Jira Service ManagementとAtlassian Intelligenceとの組み合わせは強力で、その活用を通じて、数多くの組織が多大な成果を上げています。例えば、大手ゲーム会社は人間の介入を必要とするサポートチケットの数を 85% 削減し、ある会社ではサポートリクエストの23%を自動的に解決。アトラシアン自体もサポートチケット処理に要する時間を96%削減することに成功しています。ぜひ、より多くの組織の方に、AIで強化されたJira Service Managementの威力と効果を体験していただきたいと願っています」(デヴェニー)
(後編へ続く)