アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。エグゼクティブコーチであるパトリシア・オモキ(Patricia Omoqui)が、思いやりをベースにしたリーダーシップ「コンパッショネイト・リーダーシップ」について説く。

優れたコンパッショネイトリーダーになるための6つのTIPS

ある研究によれば、他者への思いやりを育むために脳を鍛えることができるという(参考文書(英語))。その研究も参考にしながら、以下では、優れたコンパッショネイトリーダーになるための6つのTIPSを紹介する。

TIPS①「セルフコンパッション」を実践する

「セルフコンパッション」とは、自分自身を思いやることだ。その研究の第一人者として世界的に知られるクリスティン・ネフ(Kristin Neff)博士は、セルフコンパッションについてこう述べている(参考文書(英語))。

自分自身に思いやりを持つということは、自分の人間性を尊重し、受け入れることです

企業における組織・チームのリーダーは、自己批判の無限ループにはまることがよくある。そのようなループに陥るのではなく、自分の葛藤を理解して共感し、自分自身を思いやる時間をとるようにすれば、職場で他者をより強く思いやれるようになる可能性が高まる。

TIPS②いまの瞬間に集中する

他者を思いやるには、その人に共感する必要があるが、自分の関心が他にあれば、それはできない。ゆえに、コンパッショネイト・リーダーシップを発揮するためには、いまの瞬間に完全に集中して周囲と接することが不可欠となる。

いまの瞬間に集中しながら周囲と接するリーダーシップスタイルとして「マインドフルリーダーシップ」がある。これは、例えば、チームのリーダーがメンバーと接する際に、その瞬間に実存する自分と自分の周囲に意識を向けて、心を開き、思いやりをもって周囲と接するスタイルのリーダーシップだ。マインドフルリーダーシップでは、自分の周囲のみならず、自分自身にも同様の配慮と思いやりをもって接することが求められる。

■演習方法:直近に行われる予定のミーティングをいくつか選び、人とのマインドフルな対話を試す。演習の場としては、1 on 1ミーティングの場が理想的だ。また、演習の際には、マインドフルネスをどの程度持続できるかを試してみると良い。その演習を重ねるたびに「いまの瞬間に存在し続ける力」とスタミナがアップしていることに気づくはずだ。

TIPS③アクティブリスニングをマスターする

アクティブリスニング」とは、集中して相手の話に耳を傾け、理解することを意味している。これは、コンパッショネイト・リーダーシップを発揮するうえできわめて重要な要素だ。対話の中で自分の話す順番を待ったり、相手の話を早合点したりすることなく、全神経を相手に傾け、その人の言葉や表情、振る舞い、感情の動きをつぶさにとらえることが大切である。

TIPS④自分のトリガーを知る

私たちはそれぞれ、特定の感情や振る舞いを引き起こす固有のトリガーを持っており、難しい会話をする際にはそれが顕著に現れる。そうした自分のトリガーを知っておくことは、リーダーにとって有益だ。例えば、相手とどのようなやり取りをすると必要以上に焦るのか、どのような言動があなたのリーダーシップを狂わせるかなどを知ってくと良い。また、あなたはゴシップが嫌いだったり、話を遮られるのが耐えられなかったりするかもしれない。そうした自分の特異性を知り、それに留意しながら、相手との対話に臨むべきである。

■演習方法:まずは、自分のトリガーをリストアップし、それに遭遇したときに何が起こるかを書き出す。次に、それらのトリガーに遭遇したときに、自分としてどう対応したいかを明確にし、その理想的な対応をしている自分をイメージする。

TIPS⑤共感を行動に転換する

コンパッショネイト・リーダーシップでは、単に相手の気持ちに共感するだけでなく、共感を具体的な行動につなげることが重要となる。

したがって、相手との対話の中で「私に何をして欲しいですか」、あるいは「あなたをサポートするには、どうすれば良いですか」といった質問を投じることを忘れないでいただきたい。また、相手を助けたいという純粋な思いを伝えることは、自分が相手を気にかけ、必要に応じて適切な行動をとることの意思表示にもなる。

■演習方法: 同僚やチームメンバーの様子がいつもと違うことに気づいたら、その人がどうしているかをチェックする機会を設ける(その人が自分の思いや悩みを分かち合ってくれる場合)。そのうえで、サポートや手助けを申し出て、あなたの気づかいを示すと良い。

TIPS⑥勇気を持つ

思いやりをもって相手と接することと「厳しさを避けること」は同義ではない。前出のホウガード氏は「コンパッショネイト・リーダーシップの本質は、困難なことを人間らしくやり遂げることである」と指摘している(参考文書(英語))。

ゆえに、思いやりとともに勇気と率直さをもって、困難な瞬間に身を乗り出すことが重要となる。言い換えれば、相手のためになると思うことは、相手が不快に感じるであろうことでも勇気をもって伝えることが大切なのである。要するに、相手を尊重しながらも、親切心ドリブン、価値ドリブンの方式で「いうべきことをいう」のがコンパッショネイトリーダーとして正し振る舞いということだ。

■演習方法:相手に対する気づかいや衝突への恐れから、同僚やチームのメンバーに対して率直な意見を述べたり、困難な議論をしたりするのをためらってしまうリーダーは多い。仮に、あなたもそうであるならば、普段は話しにくいことを思い切って話し、勇気をもって困難な議論に臨むことに挑んでいただきたい。

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