近年話題の「バーンアウト(燃え尽き症候群」」本稿の要約を10秒で
- 近年話題の「バーンアウト(燃え尽き症候群)」とは、精神的、肉体的、感情的に完全に疲弊し、消耗したと感じる状態を指す。
- 世界保健機構(WHO)が、バーンアウト(燃え尽き症候群)に対する警鐘を鳴らしたにもかかわらず、この症候群を巡る状況は好転の兆しを見せていない。
- 本稿に示す6つの方法を参考することで、バーンアウト(燃え尽き症候群)から立ち直れる、ないしは症状を抑えられる可能性がある。
再確認「バーンアウト(燃え尽き症候群)」とは何なのか
成果物の厳しい納期など、プロジェクト遂行のプレッシャーを受ける中で神経が擦り切れるときは誰にでもある。ただし、仕事に圧倒されている感覚が続くと「バーンアウト(燃え尽き症候群)」になる恐れが強まる。
ご存知のように、バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、あなたの心身の健康とキャリアに深刻なダメージを与える流行(はや)り病(やまい)である。このやまいは、精神的、肉体的、感情的に完全に疲弊し、消耗したと感じる状態を指し、2019年には、世界保健機関(WHO)がバーンアウト(燃え尽き症候群)を「職業的現象」に分類した(参考文書 (英語))。これは、私たちが医療サービスを受ける正当な理由としてバーンアウト(燃え尽き症候群)が認定されたことを意味する。
ただ、このWHOの発表によってバーンアウト(燃え尽き症候群)に対する私たちの認識、行動が大きく変わったかといえば、そうではない。WHOによる発表以降もバーンアウト(燃え尽き症候群)を巡る状況は好転の兆しを見せていない。
例えば、2023年における、ある調査報告では、米国の労働者の57%が、少なくとも中程度のレベルのバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥っていると答えている(参考文書 (英語))。この比率は、新型コロナウイルス感染症が流行していた2021年に報告された数値(52%)よりも悪い。
もっとも、自分がバーンアウト(燃え尽き症候群)にかかっているのか、それとも一時的にストレスを感じているだけなのかを見分けるのは難しい。また、仮にバーンアウト(燃え尽き症候群)にかかっているとして、それに対処するための方法もそれほど広く知られていない。
そこで以下では、自分がバーンアウト(燃え尽き症候群)かどうかの見分け方と、この症候群から立ち直るための方法について見ていくことにする。
バーンアウト(燃え尽き症候群)か否かの見分け方
自分がバーンアウト(燃え尽き症候群)かどうかを見分けるうえでは、まず、自分がいま、どのような課題と向き合っているかを確認する必要がある。なぜならば、嫌なことがあった日(そんな日は誰にでもある)に一時的に心身の疲労を感じることと、バーンアウト(燃え尽き症候群)とは根本的に異なるからだ。
したがって、自分がバーンアウト(燃え尽き症候群)かどうか、あるいは、このやまいにかかっている兆候があるかどうかを見定めるには、以下の3点をチェックする必要がある。
- ネガティブな感情の持続時間:ネガティブな感情はどの程度続いているか。刹那的なのか、それとも永続的か。
- ネガティブな感情に陥る頻度: ネガティブな感情はどれくらいの頻度で現れるか。定期的にネガティブな感情に陥るのか、それともランダムに感じるのか。
- ネガティブな感情の強度: ネガティブな感情はどの程度強いのか。些細なものなのか、それとも1日中、あるいは1週間ずっと気が抜けない状態が続くのか。
また、バーンアウト(燃え尽き症候群)の症状が出ているかどうかを見定めるためには、「身体の状態」「感情」「習慣」の3点に注意を払う必要もある。この3つの観点から、燃え尽き症候群の兆候を点検する方法は以下のとおりである。
「身体の状態」の点検
身体の状態を点検することで、自分が意識していない心の状態を明らかにできる。バーンアウト(燃え尽き症候群)の身体的兆候には次のようなものがあるので点検していただきたい。(参考文書 (英語))
- 疲労、ないしは肉体的消耗
- 胃痛や腸の不調
- 緊張性の頭痛
「感情」の点検
ヘルスケア系の情報サイト「メイヨークリニック(Mayo Clinic)」によれば、バーンアウト(燃え尽き症候群)は人を次のような気分、ないしは感情にさせるという(参考文書 (英語))。したがって、自分が以下のような心の状態になっているかどうかを点検していただきたい(なお、以下のような感情が普段どおりのものであるならば、問題は別のところにあるかもしれない)。
- 職場で皮肉屋になったり、批判的になったりする。
- 同僚や顧客など、一緒に働いている人たちに対してイライラしたり、せっかちになったりする。
- 大切な人に対してキレやすくなり、険悪になる。なお、残念なことに、バーンアウト(燃え尽き症候群)の人は、仕事中、その症状から逃れることはできない(参考文書(英語))
- 物事に集中できなくなる
- 自分の成果に満足できなくなる
- 活力を失い、常に生産的であろうとする意欲も湧かない
「習慣」の点検
バーンアウト(燃え尽き症候群)にかかっている場合は、人はその日を乗り切るために以下に示すようなことを習慣化してしまう。したがって、次のような行動をとっていないかどうかを点検する必要がある。
- 感情を麻痺させたり、変化させたりするために薬物やアルコールを使用する
- 不眠症や睡眠習慣の変化に悩む
- 食事の量がこれまでと比べて明らかに多い、ないしは少ない
なお、アメリカ心理学会のフェローでバーンアウト(燃え尽き症候群)を幅広く研究しているジェームズ・キャンベル・クイック(James Campbell Quick)博士は「バーンアウト(燃え尽き症候群)に関するWHOのメッセージは私たちへの警鐘です」と指摘している(参考文書 (英語))。
また、レジリエンス&ライフコーチで「The Burnout Solution」の著者であるシボーン・マレイ(Siobhan Murrauy)氏は、高レベルのストレス(ないしは、バーンアウト、つまりは燃え尽き症候群)は心臓病(参考文書 (英語))や肝臓病(参考文書 (英語))など、あらゆる慢性疾患のリスクを高めると指摘している。