燃え尽き症候群から立ち直るための6つの方策
以上に示したバーンアウト(燃え尽き症候群)の兆候、ないしは症状のいくつかに、あなたの状態が当てはまるとすれば、あなたはこの症候群にかかっている可能性が高い。
バーンアウト(燃え尽き症候群)が厄介なのは「自分がそうだ」と気づいたときには、すでに疲れ切っており、立ち直る気力がなかなか湧かないことである。
とはいえ、バーンアウト(燃え尽き症候群)は病(やまい)であり、打ち勝つための努力を払わなければならない。また、このやまいから立ち直るための有効な方法があれば、その病に打ち勝つだけではなく、長期的に自分にプラスとなる有意義な変化を引き起こすことも可能になる。
ということで、バーンアウト(燃え尽き症候群)から立ち直り、前進するための方法を6つ紹介しよう。
方法①不要な仕事を切り捨てる
バーンアウト(燃え尽き症候群)になる原因はさまざまだ。ただし「やることが多過ぎる」というのは、間違いなくバーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こす大きな要因である。ゆえに、バーンアウト(燃え尽き症候群)から立ち直るうえでの第1ステップは、自分の職責を改めて見直し、切り捨てが可能な仕事をすべて切り捨てること、言い換えれば仕事の整理整頓を行うことである。
例えば、あなたは自分にとってそれほど重要ではないプロジェクトや委員会に参加してはいないだろうか。また、出席しなくても特に問題のない定期的な会議に毎回出席してはいないだろうか。たとえ、小さなミッションであっても、それらを自分のカレンダーからすべて外し、頭の中から追い出すことが大切である。そうすることで、ワークライフの管理がかなり楽になる。
また、前出のクイック氏は、どのような活動やミッションが自分のエネルギーを「消耗」させ、何が「充電」させるかを見定めることも大切であると説く。そして、自分のカレンダーを見て、予定されていることすべてを「消耗」か「充電」かに分類し、自分の予定が「消耗」だらけになることを避けるようにする。
「もし、チームメイトの誰か、ないしは上司と過ごすことが『消耗』であるとするならば、その日のカレンダーのどこかに『充電』にあたるものがなければなりません」とクイック氏は説く。
方法②セルフケアに力を注ぐ
セルフケアというと「泡風呂」や「マッサージ」を想起する人は多い。ただし、セルフケアに相当する行動は、そうしたコストのかかるものばかりではない。自分を大切にする行動がセルフケアであり、それはウェルビーイングを維持するうえでの基本である。ちなみに、手軽に行えるセルフケアであり、かつ、バーンアウト(燃え尽き症候群)に対するヒーリング効果が期待できるものには以下がある。
- 十分な睡眠をとる
- 栄養価の高い食事をとる
- 運動の時間を作る(ちょっとしたウォーキングであっても構わない)
これらのセルフケアを習慣化することで、バーンアウト(燃え尽き症候群)の症状を抑えることができる。ただし、それは燃え尽き症候群の人たちが苦労しているポイントであると、マレー氏は指摘する。
もっとも、睡眠、食事、運動の3点すべてに関して習慣の適正化の努力を均等に払おうとする必要はなく、それらの習慣に優先順位をつけて適正化を進めるのでも良い。また、そうすることで、習慣のヒーリング効果をより高められる可能性もあるらしい。例えば、2017年のある研究によると、バーンアウト(燃え尽き症候群)の予防や症状の抑制には運動が極めて重要であるという(参考文書 (英語))。
したがって、少なくとも週末は仕事から離れ、趣味や興味・関心事に自分の時間とエネルギーを注ぎ込むのが無難だ。陶芸教室に通うのもよし、裏庭で本を読むのでも構わない。仕事とはまったく関係のないところで息抜きや余暇の楽しみを見つけることで、燃え尽きた心を回復させたり、消耗したエネルギーを補充したりすることができる。
方法④上司と対話する
多くの場合、バーンアウト(燃え尽き症候群)は当事者の独力では解決できない。そして、このやまいに対処するうえでは、広範な領域において仕事上の変化が必要になることが多い。そのため、上司の関与が必須といえる。
例えば、バーンアウト(燃え尽き症候群)の発症につながりうる仕事上の問題には次のようなものがある。
- 自分の職務の1つが、自分のやりたいこととまったく一致していない
- 仕事上のサポートやリソースが足りていない
- 私生活のことで悩んでいる
- 長期休暇を取ったり、別の仕事を探したりする必要がある
これらはすべて、上司と話し合うにはデリケート過ぎるテーマのように思えるだろう。だが、率直に、包み隠さず自分の状況や想いを打ち明けることで、燃え尽き症候群に対処することができる。また、それだけではなく、ワークライフの軌道修正を行うための有意義な変化を引き起こすことも可能になる。
また、自分が前に進むために明確な境界線を引きたいのであれば「それはできない(I can't do that.)」ではなく「それはしない(I don't do that.)」という表現を使うのが有効である。
2012年に「Journal of Consumer Research」誌が行った研究によると「I don't~」という表現は「自分が何をすることが可能なのか」と「それを行う意志があるかどうか」について明確なルールを確立するものであるという(参考文書 (英語))。それに対して「I can't~」という表現は、あなたに何らかの仕事を頼みたい相手に対して、交渉の余地を与えるものとなる。
方法⑤適切なサポートを得る
バーンアウト(燃え尽き症候群)は人に孤独や恥ずかしさ、情けなさを感じさせるものである。ゆえに、ついつい自分の中に引きこもりたいという衝動にかられるが、その衝動は抑え込まなければならない。実際、ある研究によれば、仕事関連のストレスは、家庭やソーシャルネットワークからのサポートがない場合、より大きなダメージを人に与える可能性があるという(参考文書 (英語))。
ホームパーティーを催すまでは必要ないにせよ、近所の人とおしゃべりをしたり、友人とコーヒーを飲みに行ったりするだけで、仕事上のストレスは発散できます。(マレー氏)
ここで仮に周囲の励ましがあっても、バーンアウト(燃え尽き症候群)から立ち直れる気配がないことがある。このような場合には、専門家に頼るべきである。セラピストの助けを求めれば、バーンアウト(燃え尽き症候群)の克服に役立つ具体的なストレス対処法を教えてくれるはずだ。
方法⑥休息をとる
「休息をとりなさい」「休暇をとりなさい」というのは、ありきたりのアドバイスに聞こえるかもしれない。また、短い休暇をとったところで、それほどの効果は期待できない。
実際、ある研究によると、休暇をとることで精神的疲労は適度に回復し、生活に対する満足度も多少上昇するものの、仕事を再開してから2~4週間で、その効果は消えてしまうという(参考文書 (英語))。
それに対して、仕事中に小休止を挟むことで、日々の仕事の重圧から解放され、気分をリセットすることができる。ただし、単に休むだけではなく、上述した6つの方法を複合的に行うことが重要である。そうしないと、同じ状況にすぐに戻ってしまうリスクが大きい。
立ち直りへの一歩を踏み出す
バーンアウト(燃え尽き症候群)は人生の行き着く場では決してない。もちろん、心身がともに疲れ切っているときに、状況を打開する意欲を奮い立たせるのは難しいかもしれない。ただ、そうしなければ、バーンアウト(燃え尽き症候群)の苦しみから逃れられなくなる。
上述した方法は、バーンアウト(燃え尽き症候群)というやまいから立ち直るための、あるいは症状を抑えるためのTIPSでもある。その実践によって、バーンアウト(燃え尽き症候群)から立ち直れるだけでなく、以前よりもさらに良い状態になる可能性もある。ぜひ、実践されたい。