本稿の要約を10秒で
- 人から信頼されるかどうかは行動で決まる。ゆえに、優れたリーダーは共通して、人からの信頼を得るような行動をとっている。
- チームのメンバーとの信頼関係を構築するうえで有効な行動はさまざまにあり、リーダーはその行動パターンを知り、実践しなければならない。
- チームのメンバーから信頼を得るためには、まずはリーダーがチームを信頼しなければならない。
人と人との信頼関係は行動で決まる
これは個人的な経験にもとづく話で、かつ周知の事実だと思われるが、自分の利益を最優先させるマネージャーのもとで働くよりも、信頼の置けるマネージャーのもとで働くほうが、仕事のパフォーマンスが圧倒的に高くなる。あなたにも同じような経験があるに違いない。
このように、チームのマネージャー(リーダー)とメンバーとの信頼関係が強固になればなるほど、チームのパフォーマンスは高まっていく。ゆえに、チームのリーダーは、メンバーとの信頼関係の構築に力を注ぐことが必要とされる。
では、どうすればチームのメンバーと強固な信頼関係が築けるのだろうか。
その謎を解く方程式、言い換えれば強固な信頼関係を構築するための方程式の構成要素には人間の性格的特性がある。ただしそれは方程式の一部に過ぎず、より大きな部分を占めるのは「行動」だ。ゆえに、チームのリーダーは、長期的な試行錯誤を通じて、メンバーからの厚い信頼を得るための行動様式を確立していなければならない。
私は過去7年半にわたり、アトラシアンでエンジニアリングチームを率いてきた。その実務経験や優れたリーダーたちの観察を通じて、チームメンバーから信頼されるためにどのような行動をとるべきかの知識を十分に蓄えてきたと自負している。
以下では、その知識を皆さんと共有し、チームメンバーとの信頼関係構築の一助としていただきたいと考えている
優れたリーダーに共通する行動特性
私がこれまでともに働き信頼を寄せたマネージャーや、チームを巧み率いているマネージャーには、共通して見られる行動特性がいくつかある。それは以下のような行動だ。
行動特性①相手を気遣う
優れたリーダーは、チームメンバー各人の状況や背景、文化、苦労を理解し、そのうえで彼らの成功を祝うという気遣いを忘れない。また、そうしたリーダーの行動によって、周囲の人たちは安心感を得ることができる。
行動特性②人の話に集中して耳を傾ける
優れたリーダーは、人の話を聞き理解する能力、すなわち「アクティブリスニング」の能力も高い。この能力が高いリーダーは、人の話から問題の根本原因を探り当てる能力にも長じているが、対話の最中に問題の解決策を提示するようなことはせず、相手の話を聞くことに全神経を集中させる。その姿勢によって、相手との強固な信頼関係を築くことが可能になる。
行動特性③「エンパシー」を実践する
信頼されるリーダーは、社内の意思決定から製品のエラーメッセージに至るまで、さまざまな事象について自分の周囲にいる人が、それをどう感じるかを想像することできる。また、他者を思いやり、相手の立場になって物事を考える「エンパシー」を自身の行動のベースとすることで、自分の意思決定や行動によって影響を受ける人たちに対し「自分たちは1人ではなく、リーダーはいつも自分の話に耳を傾け、理解しようとしてくれている」と感じさせることができる。
行動特性④何事もオープンに伝える
リーダーがチームからの信頼を得るうえでは、仕事上の情報を包み隠さずオープンに共有することが欠かせない。また、仕事上の情報をオープンに伝えることは、チームに対する信頼感を示し、結果としてメンバーからの信頼を獲得することにもつながる。
行動特性⑤自分の限界と情熱を包み隠さず見せる
チームのリーダーは、すべてに対する答え有している必要はない。しかも、今日の市場ではかつては起こりえないような変化が絶えず巻き起こっている。ゆえに、過去の成功体験はほぼ効力を失い、数々の実績を積み上げてきたリーダーであっても、チームが直面する課題をどう解決して良いかがわからないケースが間々ある。また、チームのメンバーも全知全能をリーダーに求めてはいないはずである。代わりにチームがリーダーに期待しているのは、自分のわからないことを「わからない」と言ったり、自身の能力の限界を包み隠そうとしたりしない正直さ、誠実さだ。そして、自分の限界を正直に示したうえでチームと一緒になって答えを見い出そうとする献身であり、仕事への情熱なのである。
ちなみに、情熱を示すうえでは、仕事以外でも物事に熱中する姿を見せるのも有効である。
いずれにせよ、人としての弱さと情熱を併せて示すことは、リーダーへの親近感と信頼感を育むのである。
行動特性⑥人に親切にする
この行動が、チームメンバーとの信頼関係の構築に役立つのは言うまでもないことであろう。