アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのカット・ブーガード(Kat Boogaard)が、職場でのコミュニケーション能力を高める方法について説く。

本稿の要約を10秒で

  • 効果的なコミュニケーションを行うためのスキルは自然に身につくものではない
  • コミュニケーションは決して単純で簡単なものではなく、沈黙しているときでも、そのあり方に気を配る必要がある
  • コミュニケーション能力の向上は、自身の対人関係や幸福感、さらには職場でのパフォーマンスにプラスの影響をもたらす可能性が高い

コミュニケーションの5つのタイプ

あらゆる「対人スキル」の中で、コミュニケーションのスキルは最も自然に身につくもののように思えるだろう。人間は、コミュニケーションによる相互理解を通じて生きてきたからだ。

ただし、効果的なコミュニケーションを行うためのスキル、すなわち他者と正しく情報を交換するためのスキルは自然に身につくものではない。それを身につけるには相当の努力と、コミュニケーションに対する理解が必要とされる。

私たちの多くは、コミュニケーションと「話すこと」を同義ととらえている。ただし、それは正確な理解ではない。実際のコミュニケーションはもっと多面的であり、話すことがコミュニケーションのすべてではない。より具体的には、コミュニケーションには以下に示す5つのタイプがあり、人はこれらを組み合わせて用いている(参考文書 (英語))。

  1. 言葉によるコミュニケーション:言葉を使って他者と話すこと。
  2. 非言語コミュニケーション: ジェスチャーやアイコンタクト、姿勢、表情などのサインを通じて、自分の考えや意思を相手に伝えること。非言語的なサインには「話す速度」「声の大きさ」「声のピッチ」などもある。
  3. 筆談:メールの送受やインスタントメッセージ、ソーシャルメディアへの投稿、レポートなど、文字を使って他人とやりとりすることを指す。
  4. 視覚的コミュニケーション:写真、GIF、絵文字、その他のビジュアルアセットなど、イメージを通じて他者と交流することを指す。
  5. リスニング:コミュニケーションとは、自分の意見を発信するだけでなく、他者との間で情報を交換することである。ゆえに他者の発言に耳を傾けること、なかでも「アクティブリスニング」は、他者に対する理解を深めて信頼関係を築き、生産的な交流を図るうえできわめて重要となる。

コミュニケーションにおける4つの原理

私たちビジネスパーソンは、常に何らかのコミュニケーションをしている。直属の部下、ないしは上司と「1 on 1ミーティング」を行うのはもとより、友人や知人にちょっとしたメールを送ることも、会社の全社ミーティングの場で誰かの発言に「目を丸くする」のも、すべてがコミュニケーションであり、すべてが重要である。

そうしたコミュニケーションには4つの原理がある。それは以下のとおりだ。

  1. 不可避である: コミュニケーションの研究者らはよく 「人はコミュニケーションをしないことができない」と指摘する(参考文書 (英語))。つまり、私たち人間は他者とのコミュニケーションを避けることができず、「沈黙」もコミュニケーションというアクションの一形態に過ぎないということだ。
  2. 不可逆である: メッセージはいったん外に出した瞬間に「過去のモノゴト」となり、過去に遡れるタイムマシーンが発明されないかぎり、完全に消し去ることはできない。つまり、一度口にしたことは取り返しがつかないということだ。
  3. 複雑である: コミュニケーションは、他者に対する認識や自分自身に対する認識など、さまざまな要因や変数によって複雑なものとなる。
  4. コンテキストに左右される: コミュニケーションは、その「タイミング」や「やり取りする相手」「場」など、さまざまなコンテキストに大きな影響を受ける。

これら4つの原則からも、コミュニケーションが決して単純で簡単なものではなく、沈黙しているときでも、そのコミュニケーションのあり方に気を配る必要があることがご理解いただけるはずである。

コミュニケーション能力を向上させる3つの方法

より優れたコミュニケーターになることは、自身の対人関係や幸福感、さらには職場でのパフォーマンスに大きなプラスの影響をもたらす可能性がある。

では、どうすれば自分のコミュニケーション能力を高めることができるのだろうか。以下、そのための方法を3つ紹介したい。

方法①相手の話に真剣に耳を傾ける

リスニングの能力は、最も重要なコミュニケーション能力だ。とりわけ近年では、さまざまなメッセージや通知がネットワークを通じて間断なく送られてくる。ゆえに、他者の話に全神経を集中させる難度は以前にも増して高くなっている、だからこそ、「アクティブリスニング」のスキルを身に付け、実践することが大切である。

アクティブリスニングの実践方法はいくつかある。その中から実効性のあるものを以下に示しておきたい。

  • スマートフォンやPCなど、アクティブリスニングの邪魔になりそうなデバイスの電源はすべてオフにし、相手の話に全神経を集中させる
  • 話をしている相手の顔(眼)に自分の目線を合わせる。ちなみに、相手の顔を3秒間見つめ、のちに軽く目をそらすのが理想的とされている。
  • 相手が話したことを要約して相手に伝え、自分が話の内容を正しく理解しているかどうかを確認する
  • 相手の話を遮らないようにする

また、相手の感情を理解して共感し、適切に対応するための能力「エモーショナルインテリジェンス(感情知性)」を磨くことで、アクティブリスニングのスキルを高めることができる。言い換えれば、エモーショナルインテリジェンスの高低は、コミュニケーション能力の高低とは正の相関関係があるということだ。

方法②いったん止まって考える

先に触れたとおり、コミュニケーションは「取り返し」の利かない不可逆のアクションである。にもかかわらず、私たちの多くはコミュニケーションの場において「膝を打つ」ような大げさな反応や、その場しのぎの無意味な発言を繰り返していたりする。

このようなコミュニケーションをしてしまうのを避けるには、自分に少し余裕を持たせることが大切である。例えば、相手の発言にすぐに反応しようとせず、少し間を置くようにしたり、メールへの返信に1、2時間の間を置くようにしたりといった具合である。こうすることで、相手の話やメッセージへのレスポンスを、より明瞭で簡潔、かつ敬意に満ちたものにすることができる。

もちろん、対面でのディスカッションの場合、テキスト文を使ったコミュニケーションほど、時間的なゆとりが与えられていないのが通常だ。ゆえに、相手の発言に即座に反応しなければならないというプレッシャーを感じることが多い。ただし、そうしたプレッシャーを感じたとしても、無意味な反応をして後悔するよりも、考える時間を相手からもらい、多少の時間をかけて適切なレスポンスを検討し、返したほうが良いのである。

方法③事前準備を怠らない

良質なコミュニケーションが行えるかどうかは、事前の準備が十分かどうかにかかっている。したがって、上司との人事考課の面接であれ、会社の幹部に対するプレゼンテーションであれ、そのための準備に十分な時間とエネルギーを費やすことが大切だ。また、そうすることで、相手に対して自分の意見を効果的に、かつ正しく伝え、相応の成果を手にすることができるのである。

もちろん、仕事上の予期せぬ依頼を上司や同僚、部下から突然受けたり、休憩中にいきなり同僚から話かけられたりと、職場におけるすべてのコミュニケーションに事前準備のテクニックが適用できるわけではない。

ただし、このような想定外のコミュニケーションの場でも、返答に窮する話を持ちかけられた際には、即座にレスポンスを返そうとせず、考える時間を相手にもらうようにするのが無難である。

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