働く場所に制約のないハイブリッドワークが一般化するなか、企業の組織、チームがコラボレートし、コミュニケートする主たる場が物理オフィスからデジタルワークプレイスへとシフトしている。それに伴いリーダーに問われているのが、組織・チームのパフォーマンスを高めるために、情報共有やコミュニケーションのあり方、働き方をどのように設計するかだ。その解をビジネスの最前線から探るべく、アトラシアン日本法人のエバンジェリスト、野崎 馨一郎が、ヤフー トラベル統括本部トラベル推進本部長の隼田 正洋氏に話を聞いた。ヤフーは、アトラシアンのコラボレーションツール「Confluence」を全社で活用している一社だ。

ヤフー株式会社
トラベル統括本部トラベル推進本部 本部長
隼田 正洋氏

映像制作会社で企業のPR映像、テレビCM、イベントの展示映像などの制作を手がけ、2006年にヤフー入社。メディアサービスのディレクター、個人課金系サービス全般の事業戦略・経営企画の担当部長などを歴任し、2021年4月からはYahoo!トラベル事業管掌部門の本部長に着任。Yahoo!トラベルのマーケティング、営業、ビジネス交渉、新規事業展開、プロダクト開発などの事業運営全般を担当。

アトラシアン株式会社
エバンジェリスト
野崎 馨一郎

米系通信事業者や IT 企業で PM、プロダクト マーケティング、アジア 14 カ国担当エバンジェリスト、異文化 D&I チームのグローバル共同議長を経験。LinkedIn ジャパンによる LinkedIn「クリエイター・オブ・ザ・イヤー 2021」に選出。日経新聞社「日経ビジネススクール オンデマンド」講師。アトラシアンの「あらゆるチームの可能性を解き放つ」ミッション実現のため、広くメッセージと考え方を啓発する役割を担う。

ヤフーで感じた言語化されたノウハウ共有の有効性

野崎:本日は、隼田さんがチームパフォーマンスの維持・向上に向けて、情報共有やコミュニケーションをどのように図っているのか、また、どういった働き方を志向されているのか、その中で当社の「Confluence」をどう活用されているのかについてお聞きしたいと考えています。早速、本題の質問に入りたいのですが、その前にヤフーでの現在の職務について確認させてください。

隼田氏(以下、敬称略):現在は、Yahoo!トラベルというサービスを運営する部門で事業推進全般を担っています。マネージしているスタッフ数は、現在(2023年3月時点)は30名程度ですね。また、ヤフーが2015年にM&A(完全子会社化)した一休.comの事業にも携わっています。

野崎:確か、ヤフーに入社される以前は、映像制作のお仕事をされていたと記憶していますが。

隼田:おっしゃるとおりです。映像制作の会社でテレビCMなどの制作を手がけ、2006年にヤフーに入社しました。

野崎:2006年当時は、映像制作の業界からインターネット/Webの業界に転職される方は多くなかったように想像します。ヤフーへの転職を決意された背後には、どのような想いがあったのでしょうか。

隼田:私が転職を決意した当時は、「YouTube」などが登場し、「インターネット動画元年」と呼ばれていたころです。そのころ、携帯電話向けの映像コンテンツの制作・配信にかかわり、「これは面白い」と興味を抱きました。そして「そう遠くない将来、インターネットが映像配信の標準プラットフォームになるのではないか」「自分もその事業にチャレンジしてみたい」との想いが募り、結果として、ヤフーに入社し、映像配信のプラットフォームビジネスに携わることになったわけです。

野崎:なるほど、すばらしい読みですね。

隼田:まあ、先を見越したというよりも、単純に「これは面白い」「やってみたい」と思っただけなんですけどね(笑)。特に、視聴する側とのインタラクティブ性は、テレビ映像の世界にはなかったもので、非常に魅力的でした。

画像: ヤフー入社の経緯を話す隼田氏

ヤフー入社の経緯を話す隼田氏

野崎:いずれにせよ、映像制作の業界から、インターネット/Webの業界に飛び込まれたわけですが、その際、組織文化の違いを感じませんでしたか。

隼田:大いに感じました。例えば、以前の会社は伝統的なピラミッド構造の組織でしたが、ヤフーの組織はかなりフラットで職位に関係なく意見が言い合える文化が根づいていましたね。

野崎:それは大きな違いですね。

隼田:もう一つ、大きく違っていたのは、仕事に関する知識やノウハウの共有、伝播の仕方です。映像制作の会社は伝統的に「先人の仕事を見ながら、仕事のやり方を身体で覚える」という人材教育・育成の方式をとっており、私が勤めていた会社でも、ベテランが仕事のやり方を体系的に教えてくれるようなことはなく、業務マニュアルもありませんでした。それに対してヤフーでは、私の入社当時はまだ発展途上の段階にあったにもかかわらず、業務遂行上のノウハウやマニュアルが明文化され、共有化されていました。加えて、業務の遂行上、何かわからないことがあれば、その知見を持った人が丁寧に教えてくれました。そうした情報共有の文化には本当に助けられましたし、効率性と合理性を強く感じました。

Confluenceの全社導入で知の集積と活用が進展

野崎:いま、隼田さんがおっしゃられた情報共有の文化が、Confluenceの浸透に寄与したと考えて良いでしょうか。

隼田:そうだと思います。Confluenceの導入以前は、各部がそれぞれ異なる情報共有の仕組みを持っていて、部門を跨いだ情報共有が図りにくい状況にありました。そこに、全社共通の情報共有プラットフォームとして、2006年にConfluenceが導入されました。Confluenceによるプラットフォームの一本化で、仕事に関する情報と知の集積が進み、今日ではConfluenceを見ておけば、仕事についてのほとんどのことが把握できる状態になっています。

野崎:そのようにConfluenceを有効活用いただいているのは、当社としても嬉しい限りです。おそらく、自分の知りえた情報やノウハウ、知見を言語化して共有する文化がヤフーの現場に定着していたことが、活用の進展につながったのではないかと思います。
実際、「自分の仕事のやり方を見て覚えなさい」といったタイプの方が多い組織では、Confluenceを導入しても現場での有効活用はなかなか進まない可能性もあります。また、そうしたタイプの方に自身のノウハウ、知見、気づきを言語化してConfluenceで発信してもらうのは難度の高い取り組みといえます。

画像: Confluenceの活用の進展に必要とされる社内文化について指摘する野崎

Confluenceの活用の進展に必要とされる社内文化について指摘する野崎

隼田:ご指摘のとおりだと考えます。実を言えば、Confluenceが全社導入された当初、プロダクトの開発エンジニアやディレクターといったプロダクト系の人たちは積極的にConfluenceを使い始めたのですが、営業部などの非プロダクト系の組織での利用はなかなか進みませんでした。これは、エンジニアをはじめとするプロダクト系のメンバーは元々、書いたコードの管理や仕様を明確にするためにドキュメントを残す文化があった一方、非プロダクト系の組織では、個人のノウハウや知見、気づきを言語化して共有する文化が根づいていなかったからです。
それでも、非プロダクト系組織におけるConfluenceの活用事例集などを作成して全社で共有するなどの啓発活動を展開したところ、徐々にConfluenceユーザーの裾野が広がっていきました。いまでは、非プロダクト系組織でも、商品情報の管理や日々の行動管理などにConfluenceを活用し、Confluenceがなければ仕事にならない状況になっています。

野崎:ちなみに、一休.comの事業にもかかわっているとお聞きしましたが、何か文化の違いなど感じられますか。

隼田:いくつかありますが、一休.comは意思決定スピードや開発スピードが非常に速いので、その点は参考になりますし、彼らの文化は何らかのかたちでYahoo!トラベルに取り込んでいきたいと考えています。

画像: 「Confluenceは業務の遂行に不可欠なツール」と隼田氏は語る

「Confluenceは業務の遂行に不可欠なツール」と隼田氏は語る

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