アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、人が仕事を先延ばしにしてしまう真の理由について解説する。

方策1:完璧主義から脱却する

これまで述べてきたとおり、自分の仕事に完璧さを求め過ぎるのは恐怖心の裏返しでもある。人の完璧主義は「明確に色分けされたバインダー」や「時間どおりの行動」などによって現れるので、意識的にそうしていると思われがちだ。

ただし、多くの人は、セラピストに指摘されるまで自分が完璧主義者だとは思っておらず、指摘されて初めて自分の行動パターンが完璧主義者のそれと一致していることに気づかされるとフォスリーン氏は話す。

仕事の品質に完璧を求めるのは決して悪いことではない。問題は、仕事に完璧さを追求するあまり、自分自身に大きなプレッシャーをかけてしまうことと、他人の評価を気にして作品を完成させる(あるいは、作品づくりを始める)気になれない点にある。

そうした完璧主義から脱却するための術(すべ)として、フォスリーン氏は2つの方策を提案・提示している。うち一つは、仕事を80%程度終えたところで、信頼できる同僚や友人にその内容を開示することだ。このように未完成の作品を周囲に見せることで、厳しいフォードバックを受け入れる心の準備と演習を行うことができる。

また、もう一つの方策は「私の○○は常に完璧でなければならない」という考えを捨て去り、「私は○○を学んでいる人間である」という考え方へと切り換えることである。このようにして「完璧さ」よりも「進歩」を追求するようにすることで、成長型マインドセットを育むことができる。これにより、仕事の先延ばしを抑制することが可能になる。

方策2:燃え尽き症候群を克服する

仕事の先延ばしは仕事に対する興味、関心、意欲が一向に沸かないときにも起きる。そして、仕事に対する興味、関心、意欲がまったく持てないとするならば、「燃え尽き症候群」にかかっている可能性がある。

燃え尽き症候群は、働き過ぎによる疲弊と見なされがちだが、仕事に対して「自分の知恵や体力を振り絞るだけの価値はない」と感じることも燃え尽症候群の典型的な症例の一つだ。

燃え尽き症候群を克服する方法を記した書籍、記事は市場に数多く出回っている。したがって、ここでは克服法の詳しい説明は割愛するが、あえて重要なポイントを挙げるとすれば、それは仕事の意義を見出すこととなる。加えていえば、家族の食卓に食べ物を並べたり、夢の休暇に向けて貯金をしたりすることも燃え尽き症候群から抜け出す良いきっかけになる。

それでも仕事に価値を見出せない場合には、チームの同僚たちや上司と対話することをお勧めしたい。仕事の価値を見出せない理由が、チームの戦略とあなたの考えとの不一致であるにせよ、無駄に思えるレポート作成の多さにせよ、チームの仕事が無価値に感じられたとすれば、それはあなたが望む変化を起こすときがきたことを意味する。可能なかぎり多くのデータを用いながら、仕事の中止や路線変更を同僚や上司に主張すべきである。

方策3:自分の力量への不安を解消する

自分の力量に対する不安から、仕事になかなか着手できない、あるいは終えられないことは多い。こうした不安の多くは、自分に自信が持てないことに起因するものだが、自分が人より劣っていると感じさせるような不健全な職場で働いていることが根本原因である可能性もある。

いずれにせよ、仕事を先延ばしにしている自分に気づくことは、自分の能力に対する不安がどこからきているのかを調べ上げ、不安解消の手だてを講じる良い機会となる。

方策4:漠然とした仕事を正す

先に触れたような「漠然とした仕事」を担当させられたならば、仕事を指示した相手に対して明確な説明を求める必要がある。もちろん、上意下達の官僚的で支配的な組織の場合、仕事の指示者(=上司)に対して仕事内容の確認をとることは、神経をすり減らす大変な作業だ。説明を求めた相手から「そんなこともわからないのか」「すべてを一から教えないと何もできないのか」といった屈辱的な言葉を投じられるおそれもある。

しかし、たとえそうであったとしても、仕事内容に対する理解不足から間違ったアウトプットを提出する(あるいは何も提供しない)よりも、正しい理解のもとで仕事を進めたほうが、非難を受ける最終的な分量は間違いなく少なくなるはずである。

方策5:大仕事は細分化して当たる

数々の異なる作業から成る“大仕事”を担当させられると、その規模の大きさに圧倒され、思考停止の状態に陥ってしまったり、どこから着手すべきかの判断がつかず、右往左往してしまったりすることがある。

そんな大仕事をこなすうえでのポイントは、仕事を細かなタスクに分解することにある。そのうえで「タスク間の依存関係のマッピング」や「キャパシティプランニング」といったプロジェクト管理のテクニックを用いることで、大仕事をどう進めるべきか、どこから始めれば良いかが一目瞭然となる。

方策6:創造的な仕事では先延ばしは「悪」ではない

創造的(クリエイティブ)な仕事の場合、先延ばしは決して悪いことではなく、逆にインスピレーションを得たり、新たなアプローチを開発したりするために必要な行動であることが多い。実際、自他ともに認める“先延ばし魔”であるクリエイティブ界の大御所リン・マニュエル・ミランダ(Lin-Manuel Miranda)氏は次のように述べている。

インキュベーション(=アイデアをあたためること)は、創造的な成果物を生むための重要なプロセスです。それ以外の方法を私は知りません。

仕事を先延ばした自分に問いかける

フォスリーン氏とダフィー氏によれば、人は仕事を先延ばしにすると「怠け者」のレッテルを自分に貼り、自己嫌悪に陥りがちであるという。ただし、その行動は問題の解決にはつながらず、仕事を先延ばしたときにとるべき行動は、一旦立ち止まり、なぜ、そうしたかを自問すること、より具体的には「なぜ、次のステップを踏み出すのにこんなに悩んでいるのか」「何が仕事への着手や遂行の邪魔をしているのか」を自分に問いかけ、理由を突き止めることであるとしている。

そしてもし、問題の核心部分である不快感に対処することができれば、私たちは仕事を先に延ばそうとする自分を適切に制御し、仕事を軌道に乗せることができるのである。

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