アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。WORK LIFEのライターであるケイティ・テイラー(Katie Taylor)が、「OKR」と「KPI」との違いやそれぞれの活用法について解説する。

本稿の要約を10秒で

  • OKRとKPIはともに、組織が目標を設定し、その達成に向けて効果的な戦略を立案し、遂行するうえで役に立つ目標設定のフレームワークである。
  • 目標設定のフレームワークを一つに絞ろうとする組織もあるが、多くの企業は OKRとKPIを併用している。
  • どのようなフレームワークを使うにせよ、目標は「SMART (Specific、Measurable、Achievable、Relevant、Time-based)」、かつ野心的で、組織全体に対してオープンであるべきである。

目標設定と業績評価のグローバルスタンダード

大多数のビジネス目標(業績目標)を達成するうえでは、大局的な計画とミクロ的な計画の双方が必要とされ、かつ、絶え間のない反復も必要とされる。この観点から、適切な目標の設定と目標の達成度を評価するためのフレームワークとして、世界で最も広く使われているのが、「OKR(Objectives and Key Results:目標と主要な成果)」と「KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)」である。

この2つのフレームワークを、適切なコンテキストの中で正しく使用することで、組織・チームは意味のある目標を設定し、その達成に向けて効果的な戦略・戦術を遂行していくことが可能になる。ただし、組織・チームの努力を目標達成のために最大限に生かすためには、OKRとKPIの特性や長所、短所を理解しておくことも大切である。そこで以下では、OKRとKPIの具体的な内容と活用例について示すことにしたい。

そもそも「OKR」とは?

「OKR」は、組織・チームが目標(Objective)を定め、その達成にかかわる成果(Result)をトラッキング(追跡)するために使用されるフレームワークだ。

1990年代後半にGoogleにOKRを導入したジョン・ドーア(John Doerr)氏はOKRについて「組織・チームの目標とは何か、その達成に必須となる『主要な成果(Key Result)』とは何かを表現したもの」と説明している。

OKRにおける目標は、組織・チームが一定期間内に達成したいことを言語化したものであり、次の四半期や会計年度の終わりまでに成し遂げたい事柄を表している。目標は野心的であることが望ましく、その目標を追い求めている期間中は、組織・チームの最優先事項として機能することになる。

OKRでは、組織・チームが定めた各目標に対して3~5つの「主要な成果」を設定する。各成果の進捗状況(ないしは、達成度合い)は「0〜1」のスケールで評価されるのが一般的で、「1」は「目標の達成」を意味し、「0.3」は目標を大きく下回っていることを表す。また、「0.7」は目標をほぼ達成していることを意味している。以下の図1は、OKRを使った評価の例である。

画像: 図1:OKRによる評価の例:通年の売上目標(Objective)に対する第2四半期(Q2)における主要な成果(Key Results)のスコア(達成度合い)

図1:OKRによる評価の例:通年の売上目標(Objective)に対する第2四半期(Q2)における主要な成果(Key Results)のスコア(達成度合い)

OKRの設定例

OKRの設定は、全社レベルやチームレベルで行われる。チームレベルのOKRは、全社レベルのOKRにひもづくものでなければならず、ゆえに、全社レベルのOKRは、組織を跨いだ協力的なプロセスのもとで設定するべきである。以下、協力的なプロセスのもとで設定したOKRの例を示す。

【1】全社レベルのOKRの設定例

  • 目標:売上げを増やす
    • 主要な成果1:Webコンバージョン率を25%アップさせる
    • 主要な成果2:平均サブスクリプション金額を300ドルから500ドルにする
    • 主要な成果3:サブスクリプション契約獲得に要する平均日数を20日から17日に短縮する
  • 目標:従業員の離職率を低減する
    • 主要な成果1:社員の離職率を20%から15%に引き下げる
    • 主要な成果2:12週間中10週間は従業員満足度調査で「4以上」のスコアを獲得する
    • 主要な成果3:360度フィードバック調査に対する従業員の回答率を70%から90%に向上させる
  • 目標:市場シェアの拡大
    • 主要な成果1:インターネット検索結果の1ページ目の順位を「6〜15位以内」に引き上げる
    • 主要な成果2:顧客離脱率を30%削減する
    • 主要な成果3:アーンドメディア(=ユーザーや消費者自身などの第三者が発信するメディア)での露出を4件獲得する

以上のような全社目標と主要な成果にもとづくかたちで、チームレベルの目標と主要な成果が設定されることになる。また、全社レベルの目標の達成には、異なる役割を担う、さまざまなチームがかかわる可能性がある。例えば、「売上げを増やす」という全社目標は、営業チームのみならず、マーケティングチームや製品開発チームなど、複数のチームが達成に貢献しなければならない。

【2】チームレベルのOKRの設定例

まず、営業チームのOKRは、全社的な目標の「売上げを増やす」に直結したものとなる。例えば、以下のようなかたちだ。

  • 目標:月間の売上げを増加させる
    • 主要な成果1:Webコンバージョン率を25%アップさせる
    • 主要な成果2:顧客維持率を30%から50%に向上させる
    • 主要な成果3:価値の高いリード(見込み客のリスト)を毎月40件創出する

また、マーケティングチームのOKRは、市場シェアを拡大するという会社の目的に沿って設定される。

  • 目標:ブランド認知度の向上
    • 主要な成果1:検索結果の1ページ目での順位を「6〜15位以内」に引き上げる
    • 主要な成果2:アーンドメディアでの露出を4件獲得する
    • 主要な成果3:ソーシャルメディアを通じた顧客のエンゲージメント率を35%から55%に引き上げる

こうしてOKRを作成したチームは、定期的にミーティングを行い、自分たちの取り組みが正しい方向に進んでいるかどうかを確認しなければならない。

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