アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、アトラシアンのコミュニティメンバーへのアンケート調査をもとに、チームワークを維持・向上させるための10のTIPSを紹介する。

本稿の要約を10秒で

  • 新型コロナウイルス感染症との長い戦いにも終わりが見え始め、リモートワーク一辺倒の働き方から新しい働き方への移行が始まりつつある。
  • そうした中、チームワークを維持・向上させるための要件について、アトラシアンのコミュニティに尋ねたところ「コミュニケーション」と「共感」が上位を占めた。
  • アトラシアンコミュニティのメンバーは今回、職場のストレスを回避/軽減するためのTIPSも共有してくれた。

アトラシアンコミュニティに聞く、チームワークを良好に保つヒント

2022年に入り、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)との長い戦いにもようやく終わりが見え始めた。もちろん、感染症の脅威が完全に過ぎ去ったわけではなく、変異株の断続的な出現と流行によって規制の解除・再開が繰り返されている地域もある。ただしそれでも、コロナ対策として働き方の選択肢からオフィスワークを完全に排除する必要はなくなりつつあり、より柔軟な働き方が可能になってきたと言える。

こうした変化の中で、チームのマネージャーたちは自分のチームのチームワークをどのように維持・向上させようとしているのだろうか──。その点を調べるために、先ごろ簡単なアンケート調査をアトラシアンが形成するコミュニティ(=アトラシアンの製品、サービスに関心を寄せるメンバーによって構成されるコミュニティ/以下、アトラシアンコミュニティと呼ぶ)に対して行った。

結果として、チームワークを維持・向上するための多くのTIPS(アイデアやヒント)を得ることができた。以下では、その中から特に有効・有益であると感じられた10のTIPSを紹介しよう。

TIPS 1:「FOMO」を「JOMO」に変える

「FOMO」とは「the Fear of Missing Out」の略語であり、「見失うことへの恐怖」を意味し、「JOMO(the Joy of Missing Out)」とは「見失うことへの喜び」を表している。

アトラシアンコミュニティのメンバーで、Jexo社のマーケティング責任者であるジェニファー・ベラスケス(Jennifer Velázquez)氏によれば、チームのマネージャーは、チームの仕事に関してFOMOの感情を抱きがちであという。

「チームのマネージャーは、自分のチームの仕事について常にすべてを把握して舵取りをしていないと不安になるものです。ただし、そうしたFOMOの感情にとらわれていると、現場仕事のサポートに追われるようになり、精神的にも肉体的にも疲弊していき、結果としてマネージャーとしての本来業務に大きな力を注ぐゆとりが持てなくなります」(ベラスケス氏)。

このような事態を回避するすべとして、ベラスケス氏はいま、同僚であるチームマネージャーらに対し、現場仕事の“操縦席”からいったん離れて、新しいアイデアを生み出すための“ゆとりの時間”を取るように勧めている。

「こうしたゆとりの時間は、定期的に数日間の休暇を取ることでつくれますし、ワークデイの午後5時になったら速やかに仕事を切り上げるというルールを自分に課すことでも作れます。とにかく大切なのは、チームを信頼し、日々の現場仕事を彼らの裁量に委ねてしまう勇気を持つことと、そうすることに恐れではなく喜びを感じられるようになることです。このようにFOMOからJOMOへの切り換えを行うことで、マネージャーは、チームが抱える本質的な課題に取り組み、最終ゴールに向けたマイルストーンに到達するための余力を手にすることができるのです」(ベラスケス氏)。

TIPS 2: コミュニケーションの「4C」を忘れない

Custom Business Solutions社のシニアテクニカルライター、ローズ・エリフ(Rose Eliff)氏をはじめ、アトラシアンコミュニティのメンバーの多くは今回、チームワークのパフォーマンスを良好に保つうえでは、コミュニケーションの「4C」を維持することが重要であると指摘している。

コミュニケーションにおける4Cとは以下の4点を指している。

  1. Clear(明快さ):
    仕事上のコミュニケーションにおける発言内容・メッセージ内容は曖昧であってはならず、常に明快でなければならない。ゆえに、発言する側・メッセージを送る側は、聞き手・受け手と自分との「知識のギャップ」を常に意識しながら、そのギャップを埋める努力を払う必要がある。例えば、特定の人たちにしか理解できないような専門用語を使うのは可能な限り避け、誰もが理解できるような語彙を使うよう心掛けることが重要となる。
  2. Concise(簡潔さ):
    発言内容・メッセージ内容は簡潔であることが望ましく、内容の簡潔さは聞き手(ないしは、メッセージの受け手)からのフィードバックやフォローアップを得やすくするという効果を生む。ゆえに、相手の混乱や誤解を招くような言葉の使用は避けなければならない。さらに、複雑な内容の長文のメッセージを相手に伝える際には、個条書きや段落分けなどのテクニックを使って文章を整理することが大切である。
  3. Correct(正しさ):
    仕事上のコミュニケーションでは、発言内容・メッセージ内容に「正しさ」が求められる。ゆえに、相手からの質問に対する答えがわからないときには、いい加減な返答をせず「調べてみます」とすることが重要である。また、そうすることで、あなたは信頼の置ける情報源として、周囲から頼られるようにもなる。
  4. Compassionate(思いやり):
    コミュニケーションをとる際には相手に対する思いやりが必須であり、「礼儀正しさ」や「誠実さ」「優しさ」が常に求められることになる。また、思いやりのあるコミュニケーションを心がけることで、周囲はあなたの話を聞きたい、あるいは、あなたと関わりたいと思うようにもなる。

これらの4Cを保つことは、リモートワーク中心の働き方(ないしはハイブリッドワーク)を採用する分散型チーム(=チームの全員が互いに離れた場所で働いているチーム)では特に重要になる。というのも、分散型チームの場合、集中型チーム(=オフィスに集まって仕事をしているチーム)に比べ、日々の対話を通じて仕事上のコンテキストや知識を共有する機会が少なくなるからである。

さらに、今回のアンケートでは、コミュニケーションにおける5つ目の「C」として「Customize(チームごとのカスタマイズ)」の重要性を指摘する声もあった。確かに、各チームにおけるコミュニケーションの最適化を目指して、自分たちなりの手法を見出すことは有効であるように思える。

TIPS 3: チームメイトへの理解と共感を怠らない

信頼するチームのメンバーであっても、ときおり、仕事上のミスを犯したり、締め切りに遅れたりすることがある。そのようなとき、チームのマネージャーがまず行うべきことは、メンバーを責めるのではなく、なぜ、そうなったかの理由を突き止めることだ。

そうすることの大切さについて、アトラシアンコミュニティのメンバーであり、Arctic Wolf社のR&Dツール管理者であるジミー・セドン(Jimmy Seddon)氏は次のように説く。

「チーム内の誰かが自分の能力を十分に発揮していない、あるいは発揮できていないと感じることは間々あるはずです。そのようなとき、原因が彼らの“サボり”や“悪意”にあることはきわめて稀で、ほとんどの場合、それぞれが何らかの問題を抱え、周囲から見えないところでその問題と闘い、疲弊し、結果として仕事上のミスや遅れを生じさせています。ですので、パフォーマンスを落としているメンバーを見つけた際にチームのマネージャーが真っ先に行うべきことは、その人の悩みごとを聞き出し、理解し、そのうえで問題解決の方法をともに考えたり、救いの手を差し伸べたりしてあげることです」

ちなみに、セドン氏の住む地域ではコロナ禍の影響により、2022年1月に再び学校や飲食店のロックダウンが始まったという。

「このロックダウンによって、小中学校に通う子どもの親たちはリモート学習の支援に再び取り組まなければならなくなり、自宅を離れることがままならなくなりました。子どものいない家庭においても、自分のパートナーが失業したり、健康問題に直面したりといった影響を受けている人が大勢います。今日のチームマネージャーは、そうした問題にメンバーが巻き込まれていないかどうかも注意深く観察する必要があります」とセドン氏は語り、こうも続ける。

「仕事の滞りがちな人と個人的に話をすると、その大多数が、自分に対する周囲の評価が下がるのを恐れて仕事の依頼を断れず、自分のキャパシティ以上の仕事を抱えて込んでしまっていることがわかります。ゆえに私は、自分のチームに対して、同僚が置かれている状況への理解とサポートを常に心がけるようアドバイスしています。自分が苦しいときのチームメイトの支えは、本当に心強く、ありがたいものだからです」

TIPS 4: 「頼まれごと」と「緊急の用事」を混同しない

このTIPSは、Jexoの共同創業者ニッキー・ザヴァドスカ(Nikki Zavadska)氏から得たものだ。

同氏によれば、私たちビジネスパーソンは、人から物事を頼まれると実際よりも『緊急性が高い』と思い込んでしまう傾向が強くあるという。それゆえに、周囲から仕事を頼まれると、それへの対応を何よりも優先させてしまい、自分にとってより大切で緊急性の高い仕事に集中できなくなることが多いと、同氏は指摘する。

「私は、こうしたビジネスパーソンの行動を『WoLF(Working on the Latest Fire:直近の火事から消そうとする行動)』と呼んでいますが、それは決して合理的な行動とは言えません。ゆえに、チームのマネージャーは、メンバーが『頼まれごと』と『緊急性の高い仕事』とを混同しないようにすることが大切です。また同じ理由から、仕事を人に依頼したり、依頼されたりする際には、仕事のタイムスケジュール(締め切り)と、その締め切りで当該の仕事をこなさなければならない理由を常に明確にしておく必要があります」(ザヴァドスカ氏)。

TIPS 5: ビデオ会議の進行役は交代制にする

コロナ禍が今後どのように転じようとも、ビデオ会議がビジネスコミュニケーションの標準的な手段として使われ続けることは間違いない。ゆえに、ビジネスパーソンとしては、ビデオ会議をうまく進行するスキルを身に付けておいたほうが無難と言える。

「ところが、企業におけるビデオ会議の運用スタイルを俯瞰すると、会議の進行役はチーム内の固定的なメンバーが担うのが一般的で、チームの全員が会議進行のスキルを磨く機会はそれほど多くないのが実情のようです。これは良い傾向とは言えず、私としてはビデオ会議の進行をチームの全員が交代で担うことをお勧めしたい」と、テレコム業界のエンジニアリング& IT担当副社長で、アトラシアンコミュニティのリーダーでもあるジャック・ブリッキー(Jack Brickey)氏は指摘する。

もちろん、チームの全員がビデオ会議の進行をしたいわけではないはずである。とはいえ、メンバー全員にビデオ会議の進行役を務めさせることで、進行役としてのスキルだけではなく、全員のコミュニケーション能力を向上させられる可能性もある。また、チームの仕事に対するメンバー全員の当事者意識も高められるかもしれない。そう考えれば、ブリッキー氏の推奨するTIPSを試してみる価値は高いと言えそうである。

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