アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、「週4日」の働き方を巡る世界の動向をレポートする。

日本 ── 現在平均値:週休2日・週 40時間労働

■現状
日本では2018年に「働き方改革関連法案」が国会で可決され、大企業については2019年4月1日から、中小企業については2020年4月1日からそれぞれ施行された。同法には、法的拘束力をもった労働時間の上限、年間最低5日の有給休暇、違反した場合の罰金などが盛り込まれている。

日本のビジネス文化は過重労働を労働者に強いがちであると世界から見られてきた。実際、日本には「過労死」という言葉があり、働き過ぎで人が死ぬという現代の先進国家では信じられないような事象が社会問題になっていた。働き方改革関連法には、その働き過ぎを法的な拘束力によって抑止するという狙いがあった。

一方で、今日の日本は少子高齢化の進行に歯止めがかからず、多くの業界で若い働き手の確保が困難になっている。ゆえに、長時間労働を従業員に強いるような企業は減少傾向をたどってもいる。そのような企業は「ブラック企業」(欧米人はこれを「黒字の会社」と誤解するかもしれないが「暗黒の会社」という意味である)と呼ばれ、若い働き手から嫌厭され、人材の確保が至難になるからである。

もっとも、働き方改革関連法案が国会で可決されのちも、日本の経営者や労働者の間には「仕事が終わらないのであれば長時間労働もいたしかたなし」という考え方が根強くある。そのためか、労働者の多くが自分の働き方にブレーキをかけてくれる、強制力をもった指示が会社から出されることを潜在的に望んでいるようだ。実際、2019年にマイクロソフトの日本支社が社員に「減給なしの金曜休暇」(=週休3日)を与えてみたところ、90%の社員がこの変更を好意的に受け止めたという。また、試行中は従業員1人当たりの売上げも上がり、電力消費量も23%減少した。ただし、マイクロソフトの日本支社は週休3日制をあくまでも試行にとどめている。

働き方改革関連法については、不幸にも、その施行がコロナ禍と重なってしまったことから今日ではほとんど話題になっていない。経営者の意識も従業員の働き過ぎや長時間労働を抑制・抑止することよりも、自社の事業や従業員、そして雇用をいかにしてコロナ禍から守るか、あるいは働く場所の自由を高めつつ、いかに生産性を保つかのほうに向けられているようだ。

ただし、労働時間短縮に向けて日本企業がまったく動いていないわけではなく、徐々にではあるものの労働時間をより短くしようとする動きが広がっているようだ。例えば、総務省の「2021年(令和3年)就労条件総合調査」を見ると「完全週休2日制」を採用している企業割合は 48.4%と5年前(2017年)の46.9%より2.5ポイントほど上昇している。同様に、完全週休2日制よりも休日日数が実質的に多い制度(月1回以上の週休3日制や3勤3休制、3勤4休制など)を導入している企業割合も8.5%と2017年当時の6.0%よりも2.5ポイント上昇している。

さらに日本政府は2021年6月、企業に対して自主的に労働時間の短縮を行い、各社での就労をより人間的なものにするよう呼びかけ始めた。週4日制の導入などによる労働時間の短縮によって、日本人の余暇の過ごし方が改善され、結婚率・出生率の向上につながると日本政府では期待しているようだ。その一方で政府は、労働時間の短縮によって空いた時間を活用し、副業をしたり、新しい技術を学んだりすることも奨励している。要するに「ゆっくり休んで恋愛をしなさい」と言っておきながら、一方で「もっと働いて勉強もしなさい」と言っているわけである。この辺りは「怠けること」「怠け者」がとことん嫌いで「勤勉」を好む日本人的な矛盾と言える。

■支持派の動き
日本における週4日制の主たる支持派は、日本政府である。また、若い働き手や幼い子供のいる夫婦は、プライベートの時間が増えることに賛成している。ところが、中高年の労働者(特に男性)は決してそうではない。彼らは、労働時間の短縮を歓迎してはおらず、逆に、これまで当たり前のように得てきた残業代がなくなることに懸念を示している。

こうしたことから、日本で週4日制を普及・定着させるには、大企業が率先して取り組むことが必須とされている。加えて、労働時間の長い親のほうが保育園の入所で有利になるといった社会構造や、労働時間が短縮されても業務内容が変わらないために結局、労働者への負担が増え、健康の維持に多くのコストがかかるようになるといった問題を解決する必要もある。

今後も継続して状況をウォッチ

一部の国を除き、週4日制を巡る議論は依然として活発であり、物事はすぐに変化する。したがって今後とも、週4日制の世界動向をウォッチしていくつもりだ。また、上記以外の国・政府・企業・組織が労働時間の短縮に積極的に取り組んでいる情報をご存じの方は、ぜひ「市民ジャーナリスト」としてAtlassian Communityに情報をお寄せいただきたい。

最後に、本稿の執筆に当たり、貴重な情報をご共有いただいた経済協力開発機構(OECD)と世界経済フォーラムの方々に心より感謝の意を表したい。

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