本稿の要約を10秒で
- ある研究によると、デスクでの作業中に目にする人が少なくなればなるほど、自己管理の意識と能力を高められる可能性があるという。
- チャットツールでのステータス表示(自分がいまどのような状態・状況にあるかを示すラベル)と同様に、オフィスでも自分の状態・状況を表す物理的なサインを出すと良い。
- ハイブリッドワークを採用したチームで会議を行う際には、遠隔地にいるメンバーとオフィスのメンバーが同じ条件の下で対話ができるよう心がける。
- チームの絆(きずな)を強めるためのアクティビティはリモートで働くメンバーの状況に合わせて調整する。
- オフィススペースを再構成し、自分の仕事に集中するためのゾーンと共同作業をするためのゾーンを明確に分ける。
「オフィスワークも可能」は大歓迎だが……
新型コロナウイルス感染症の流行(以下、コロナ禍)が終息へと向かうなか、アトラシアンでは働き方をリモートワーク(在宅勤務)中心からハイブリッドワークへと切り替える決断を下した。確立された状況を好む私は、オフィスで働くことが好きである。ゆえに、およそ1年半もの間、在宅勤務を義務づけられたのは、コロナ禍ゆえのことだったとはいえ、なかなかの苦痛だった。それが今回のハイブリッドワークへの移行によって「オフィスで働くという選択肢」が得られることになり、本当に嬉しいかぎりである。
ただし、オフィスで働くことには不安もある。というのも、パンデミック前に行なっていたルーチンは、もうないからだ。
コロナ禍以前の私は、早めに出社してデスクで朝食を済ませ、仕事に没頭するのが常だった。近くの席のチームメイトが出社すると、笑顔を返すだけで、雑談の準備ができていないことを表現していた。また、ミーティングの合間の時間は、共有スペースにあるお決まりのテーブルで仕事をしていた。まとめて言えば、コロナ禍前の私は、オフィスの中で自分が快適に仕事をこなせる居場所と時間をしっかりと確保できていたのである。またそれは、私だけではなくオフィスで働く同僚たち全員がそうであり、それぞれが自分の生産性を高める術(すべ)を身につけていた。
もちろん、以前のオフィスワークが完璧だったわけではない。ただし、従来のオフィスワークでは、あらゆる物事が予測可能であり、管理もしやすかった。ゆえに私は、効率良く効果的な仕事が出来ていたように思える。
それに対して、ハイブリッドワークを前提にしたオフィスでの働き方──アフターコロナの「オフィスワーク2.0」について想像を巡らせていると、学校初日のランチのときに誰の隣に座るべきかで戸惑い、緊張した記憶すら蘇(よみがえ)ってくる。そう、何もかもが分からないのである。
おそらく、ハイブリッドワークのオフィスは、フリーアドレス型で自分専用の固定席も、キャビネットもないはずだ。だとすれば、頻繁には参照しないものの記録として残しておきたい紙の資料はどこに収納すればよいのだろうか。また、(自分のための)非常用スナックはどこに備蓄しておけばよいのだろうか。加えて言えば、以前のオフィスでは、私の習慣やコミュニケーションの仕方を理解している同じメンバーが近くに座っていたが、ハイブリッドワークのオフィスでは、そうはいかないはずである。毎週決まった日にオフィスに出勤するわけでもないだろう。
そうした中で、どうすればかつてのように効果的なオフィスワークを取り戻すことができるのか──。その答えを模索する中で、私はいくつかの方策にたどり着いた。以下、それらの方策を紹介したい。