アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフデュポン(Sarah Goff-Dupont)が、伝説的リーダー7人の「教え」の実効性と実践法を心理学の見地から説く。

偉大なリーダーの教え 5: 「ゼロサム」で物事を考えてはならない

「企業は、自身の存在理由を深く認識し、あらゆるステークホルダーのニーズを充足しなければ長期的な利益を出し続けることはできない」
── ラリー・フィンク

旧来、株主や顧客、そして従業員といった企業のステークホルダーの利害が一致することはほとんどなく、それぞれの利害はトレードオフの関係にあると見なされてきた。例えば、株主の利益を優先すると、従業員や顧客の利益を犠牲にせざるをえないといった具合だ。だが、そうした「ゼロサム」の考え方はすでに過去のものであると、世界最大級の資産運用会社ブラックロック(Black Rock)のCEO、ラリー・フィンクは指摘する。彼によれば、株主と顧客、従業員など、すべてのステークホルダーが繁栄しない限り、企業の繁栄は絶対に望めないという。ゆえに、株主にとっての企業価値を上げることだけに執着するのは、近視眼的で敗北に向けたリーダーの発想であると断じている。

■この「教え」がなぜ機能するのか

今日のビジネスリーダーにとって「ゼロサム」の発想をデフォルトで採用するのは非論理的な行いであり、リーダーとしての強さを損なうものでしかない。今日では競争に打ち勝つことだけに執着し、周囲に不安や不満をたらすようなリーダーは有害であると見なされている。ゆえに、チームのリーダーも、すべての人に利益をもたらすソリューションを探し続ける必要があり、その取り組みを通じてチームを尊重することで、チームの目的意識と意欲を高めることが可能になる。

■「教え」の実践法

自分のビジネスにかかわるすべての人に等しく利益をもたらしたいと考えるのであれば、まずは、自分が競争しなければならない真の相手は誰なのか、自分が貢献しなければならない相手は誰なのかをしっかりと見定めておくことが大切である。ほとんどの場合、自分の競争相手は自社の競合会社であり、貢献しなければならない相手は、自分の同僚や上司・部下を含むすべての従業員であるはずである。したがって、自分のプロジェクトに対する資金を調達したり、「おいしい役職」を得たりする目的で、社内政治に奔走するのは避けるべきである。また、自分を磨くために議論の場を用意するのは良いことだが、その場には十分な数の人材を集められるようにしておくことが重要だ。さらに、自分の要望に反する意思決定が下されても、それをしなやかに受け止めなければならない。なぜならば、自分の意見・アイデアが社内的に認められなくとも、自分の会社が市場で勝ち続けている限り、自分も市場で勝ち続けていることになるからである。

偉大なリーダーの教え 6: 連合せよ

「人間ひとりの力では成功をつかむことはできない。私たちは団結した人々として、国民和解のために、国造りのために、新しい世界の誕生のために、ともに行動しなければならない」
── ネルソン・マンデラ

政府の本質は、自分と利益が一致する人々を見出し、自分たちの利益の最大化に向けてともに取り組むことである。ネルソン・マンデラが証明したように、リーダーが推進しようとしている変化が大きければ大きいほど、異なるグループ同士の連合が成功のカギとなる。「アパルトヘイト」が法的に解体されてから、わずか数年後に南アフリカ大統領に就任したマンデラは、法的ではなく文化的にアパルトヘイトを解体して国を統一するという大きな課題と対峙した。そして彼は、人種の調和を巡る考えを正常化すべく公の演説において人々の団結・連合を表す「we(私たち)」「us(私たちを)」「our(私たちの)」という単語を多用した。加えて、自身の就任式には、かつて収監されていた刑務所の元警備員をも招待したのである。

■この「教え」がなぜ機能するのか

民主主義政治における連合は、ほとんどの場合、「数合わせ」のゲームにすぎない。とはいえ、連合が人に及ぼす心理的な影響を軽視してはならない。人には、自分が形成を手助けしたアイデアを自分のアイデアとしてとらえる傾向が強くあるからだ。また、あなたが形づくった連合が、互いに対立する多様なチームから人を引き込むことができたなら、その連合は強力なグループとなり、あなたのアイデアに対する周囲の信頼も増すことになる。

■「教え」の実践法

リスクを伴うアイデアや、これまでのやり方とはまったく異なるアイデアがある場合には、時間をかけてステークホルダーからの同意を得ること──すなわち、連合を形成することが重要となる。そして連合の組織が成長するにつれて、あなたを弱体化させることは困難になるのである。

偉大なリーダーの教え 7: 未知の世界に立ち向かい、勇気を持ってリードせよ

「リーダーのチャレンジ精神は筋肉と同じで使えば使うほど強くなり、挑戦へのおそれを感じなくなる」
── アリアナ・ハフィントン

アリアナ・ハフィントンは2つの主要なビジネスベンチャーの創設者であり、15冊の書籍の著者でもある。彼のチャレンジは計算されたリスクに基づくものだが、リスクを割り出すための土台には、不完全な情報・知識による推測が含まれている。

■この「教え」がなぜ機能するのか

リーダーとして未知の世界に足を踏み入れるときには、自分の知っていることと、これから見出そうとしていることについて、すべてをオープンにする勇気が必要となる。また、不完全な情報に基づいて意思決定を下すのも、勇気にいることだ。ただし、そうした勇気と知的な謙虚さを併せて示すことは、周囲からの信頼の獲得につながる。加えて、不完全な情報を基にリーダーが物事に挑む姿勢は、不完全な情報を基に動いても咎(とが)められる心配はないという、チームにおける心理的安全性の確保にもつながっていく。結果として、メンバー各人のチャレンジ精神が育まれるほか、すべてのメンバーが失敗を隠そうとはしなくなり、周囲はその失敗が大事に至る前に対処することが可能になる。

■「教え」の実践法

何事も猛スピードで変化している今日、チームのリーダーには自分の分からないことは率直に分からないと周囲に伝え、理解を手助けしてもらうオープンマインドと謙虚さが求められている。また、そうした姿勢を示すことで、仮にリーダーとしていかなる決断を下したとしても、周囲からより強力なサポートが得られるようになる。また、多様な視点からの意見・見解も集められるようになり、自分のアイデアの死角を補うことも容易になる。

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