アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターの一人であるジェイミー・オースチン(Jamey Austin)が、米国の衣料品メーカー、パタゴニアの成功事例に基づきながら、コアバリュー主導型の経営を成功させる秘訣を紹介する。

コアバリュー駆動のビジネスを維持する4つの方策

仮に、あなたの会社が、パタゴニアと同じようにコアバリュー重視の方針を打ち出しているのであれば、その姿勢を継続して保つことが何よりも重要になる。

「コアバリュー重視を方針として打ち出すのは簡単ですが、コアバリューを企業文化として取り込むのは容易ではなく、そのための画一的な方法があるわけでもありません。パタゴニアが実践した戦略にしても絶対的な解というわけではなく、従業員の全員が原則に従って行動できているわけでもないはずです。ただし少なくとも理想に向けた努力は続けていて、そうした努力の継続が大切ではないでしょうか」(ウィルソン氏)。

以下では、そうしたパタゴニアの取り組みを参考にしながら、コアバリュー主導の企業を作り上げ、維持する4つの方策を紹介する。

方策1: コアバリューを定義する

コアバリュー主導型と言っても、一度定義したコアバリューによって、あらゆる意思決定が行われるわけではない。ただし、コアバリューのレンズを通してすべての意思決定を行うようにすることで、多くの場合、自分の行動に誇りを感じることができる。またそれは、企業の従業員が最も望んでいることでもある。

地球外惑星で会社のコアバリューを見出す──アトラシアンの実践

「(組織の)コアバリューは設定するものではなく、発見するものです」と、『The Mars Group』の著者であるジム・コリンズ(Jim Collins)氏は言う。実際、アトラシアンのコアバリューも“作成”したものではなく、幹部と従業員が創業以来大切にしてきたことを明文化したものにすぎない。そして、アトラシアンでは、それらを全社的に根づかせ、成長させ、進化させる努力を続けている。

コアバリューの明文化に当たってアトラシアンが実践したのは、コリンズ氏が『The Mars Group』の中で記した演習である。この演習は「地球以外の惑星で、アトラシアンの最高の属性を再現するとすれば、何を再現するか」という問いに答えるというものだ。この問いに従って、アトラシアンの幹部と社員はそれぞれコアバリューのリストを作成した。その結果、リストアップされたほとんどの項目が一致していたと共同CEO兼共同創設者のマイク・キャノン-ブルックス(Mike Cannon-Brookes)は述懐する。そして以後、数回の議論を重ねて2つのリストをマージしたのが、今日のコアバリューとなっている。

方策2: 適切な人材を採用する

コアバリュー主導のビジネス、あるいは経営は、コアバリューに共感できる人材がいて初めて成り立つものである。したがって人材の採用においても自社のコアバリューに共感できる人を採用することが重要となる。そうすることで企業のビジョンに沿った方法で組織の成長・変革を促すことが可能になる。また、共通の価値観を持ったリーダーが、同じ価値観を持った人材を雇用することで、好循環が生まれる。

ちなみにパタゴニアでは、バックパッカーとして世界中を旅したり、登山を愛したり、従来の型にはまった暮らしを好まない人材でチームを固めており、採用で最も重視するポイントは「持続可能な社会」に関心を持っているかどうかであるという。この採用方針によって、同社の従業員たちは、パタゴニアの目標を自身の目標と重ね合わせ、働く意味や成すべきことを深く理解することができるのである。

方針3: 文化は作ろうとせずに育む

企業の文化は、コアバリュー共有する従業員たちが醸成するもので、トップダウンで構築するものではない。例えば、パタゴニアにとって従業員のワークライフバランスを適切に保つくことは、地球環境の保護、あるいは持続可能な社会を築くことと同レベルで重要なテーマであり、同社の企業文化として育まれている。

「環境の保護や社会への貢献はパタゴニアの企業文化として、キャンパス内のカフェテリアやオンサイトの育児支援など、至るところで見受けられます。それと同様にパタゴニアでは従業員が日中にスポーツで汗を流すことが当たり前のように行われていて、なかにはサーフィンに興じる人もいます。これは、同社の幹部も従業員も、自分たちがより健康であるためには、自由な時間と適度な運動が必要であることを理解し、大切していることの証明です」(パッテン氏)。

方針4: 信じることを貫く

パタゴニアでは環境保護を徹底して追求しており、環境への影響の少ないリサイクル素材を商品に使用しているほか、顧客に愛用のウェアを可能な限り長く使用してもらう「Worn Wear」イニシアチブも展開している。これは、顧客に新品の購入を控えてもらうというメーカーとしてはありえないような活動だ。ただし、同社は環境保護の視点から過剰消費に反対する姿勢を貫いており、数年前のブラックフライデー(=感謝祭の翌日に当たる金曜日で米国の小売業界はこの日にセールを展開する)に向けた同社の広告には「このジャケットを買わないで下さい」というキャッチコピーが付けられていた。これによって同社は、法人税にして1,000万ドル分の利益を失ったとされているが、それを環境問題の解決に振り向けたかたちである。

「パタゴニアで私が学んだことは、コアバリューに100%コミットする企業経営とはどのようなものかです。彼らの活動は、自分たちが信じることとは何なのか、何をしたいのか、何をしないのかが常に明確です。そうした姿勢を貫くには相当の覚悟が必要ですが、その覚悟がなければコアバリュー主導は成しえないのかもしれません」(ウィルソン氏)。

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