戦略3: 明確な目標を与える
ここで、体操とはまた別のスポーツのパフォーマンス管理を例にとってみたい。仮に、あなたのチームが陸上のリレーチームだとする。おそらくあなたは、コーチとして相当の時間をかけてチームの目標・戦略を定めて、その目標達成に向けて、リレーのメンバー各人にどのような役割を演じて欲しいのか、どのようなタイムで走ってほしいかの明確な目標を伝えるはずである。
こうしたマネジメントのあり方は、リレーのチームでも、ビジネスのチームでも変わらない。人はみな、自分がどこに向かっているのかを明確に知る必要がある。ゆえに、チームのリーダー、マネージャーは、チームとしての目標を掲げ、その達成に向けたメンバー各人の役割とゴールを明確に、かつ計測可能なかたちで定義する必要がある。
また、そうしたゴールを持つことで、メンバー各人は自分の作業と、チームや会社の目標との意味的な関係を把握することができる。
ご承知のとおり、メンバーの目標と測定可能なゴールを定義する良い方法は、OKRを活用することである。例えば、以下はOKRのフォーマットを使ったカスタマーサービスのチームとメンバー個人の目標設定の例である。
チーム目標(Team Objective):自社のサービスに関して、顧客が頻繁に質問を寄せる事項に基づきながら、顧客が直面する課題に関するナレッジベースを作成し、セルフサービスによる課題解決率を高める仕組みを構築して顧客満足度を向上させる。
目標達成のカギとなる成果(Key Result):15本のチュートリアルビデオをインターネット上に公開し、2021年5月17日までに平均クリック率60%を達成する。
このようにチームの目標にひもづくかたちでメンバー各人の計測可能な目標を定めることで、チームのメンバーは個人的に成すべきことが明確になると同時に、自分の目標達成に向けた取り組みが、チームのビジョンや目標の達成にどのように貢献するかをとらえることが可能になる。
戦略4: 継続的な学びにコミットする
長期的なパフォーマンス管理は、平均台の上を歩くのと似たところがある。足元に目を近づけ過ぎると、マイクロマネジメントに陥り、上手く前進できなくなる。また、もっと上手く歩こうと後戻りと前進を繰り返し過ぎると、物事がコースから外れていく。
チームにおけるパフォーマンス管理は、メンバー各自の役割とチームの価値観をどうマネージしていくかの問題である。このマネジメントのプランを立てる際に、有形な要素に視点を置きながら、メンバーの学びと成長を促すような計画を立てて遂行すると、無形の要素が時間の経過とともに自然に発達し始めることがある。
ここで言う有形の要素とは、例えば、以下のようなものである。
- チームのメンバーに対して頻繁にフィードバックを提供する。
- メンバーの目標達成を公表して祝う。
- チームで何がうまくいき、何がうまくいかなかったかを学ぶための「振り返り」を主催する。
- 誰かの失敗を共有し、全員が失敗する可能性があることを示す。
チームの仕事に対してチェックを入れて、フィードバックを出すうえでの適切なリズムをつかむまでには相応の時間がかかることがある。また、何がうまく機能していて、何が機能していないのかが分からないことも多い。そのような課題を解決するための最も有効な方法は、メンバーに尋ねることである。
「チームのリーダーやマネージャーからのチェックとフィードバック、あるいはアドバイスの提供は、どういった頻度で行われるのが最も有効なのか」──。面倒がらずにこの点をメンバー全員に尋ね、フィードバックをもらうことが大切である。
チームに“火”を入れる
スポーツチームの優れたコーチのように、優れたチームリーダーは、チーム全体の利益のためにメンバー各人の強みを発揮させる方法を理解している。そして彼らは、チーム全員が一致団結して熱くなれる瞬間をつくりあげる場を常に探してもいる。
スポーツチームでも、会社組織のチームでも、一度火をつけたら、着火装置をキープしておく必要はなく、その火を成長させるのに必要な何かを与え続けることが重要となる。
今日から、あなたのチームのどこかにあるはずの火種、あるいは小さな火花を探すことをお勧めしたい。それを見つけたら、その火が勢いよく燃え上がるように、扇ぎ続けることが大切である。