アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。アトラシアンのソフトウェアデザインマネージャー、マティアス・シュレック(Matthias Schreck)が、自分のキャパシティを超えた仕事量をオーバーワークに陥ることなくこなす方策を紹介する。

キャパを超えた仕事量を抱え込むのが人の常?

ビジネスパーソンは自分のキャパシティを超えた仕事を抱え込んでしまうことが実に多い。理由はシンプルで、自分のキャパシティが満杯の状態にあっても、新たな仕事の依頼を断れない(あるいは、断ろうとしない)からである。

なぜ、そうなのかと言えば、ワークライフバランスを適切に保つことの重要性がしきりに唱えられている今日においても、上司・マネージャーからの仕事の依頼を断りにくい文化的特性を持つ組織が依然として少なくないからである。

しかも、自分のキャパシティと仕事量のバランスが完璧に取れていると、大抵のビジネスパーソン(私も含めて)は少し“ハイ”な気分になっている。ゆえに、マネージャーから「悪いけど、この仕事もやってくれないか」と頼まれると、ついつい「いいですよ」と引き受けてしまうのが通常なのである。

画像1: 仕事を断れないあなたに贈る!キャパシティを超えた仕事量に対処する方策 ── 海の向こうからオピニオン その36

もっとも、自分のキャパシティと仕事量とのバランスがとれているときに追加の仕事を引き受けるということは、オーバーワークに陥り、疲労の蓄積と仕事の品質の低下という問題を引き起こすリスクが高くなることを意味している(図1)。ゆえに、この問題を解決するすべを自分の中に持っておくことが重要となる。

なぜ仕事の依頼に「ノー(No)」と言えないのか

私は自分のキャリアの中で幾度となく以下のようなアドバイスを受けてきた。
「キミはもう少し仕事を上手に断るすべを覚えたほうがいいよ」

ただし、こう口にする人の多くが、次のようなエクスキューズを続ける。
「でもまあ、仕事相手に“ノー”を言うのは簡単ではないけど…」

そうなのである。現実問題として、自分を頼ってくれているチームメイトやマネージャーからの仕事の依頼を断ることは至難である。

組織で働く私たちには、自分のチームや会社に可能な限り貢献したいという思いがあるし、仕事仲間やマネージャーからの依頼を断ることで自分の協調性やチームへの貢献意欲、あるいはパーソナリティに疑いの目が注がれるのではないかと不安にもなる。さらに、キャリアアップに関心のある人ならば、マネージャーからの要請を断ると、自分の評価・将来にキズが付くのではないかと心配もする。

また、目の前に差し出された新しい仕事は、非常に意味があり、今やるべきことだと感じられることがあるかもしれない。アドバイスを思い出して断ろうと思ったものの、これは断るべき事案ではないと判断することもある。

さらに、自分がマネージャーからの仕事の依頼を断った結果として、会社の製品・サービスの品質が落ちてしまうような場合もある。このような場合、本来的には自分に非はないとしても、責任を強く感じたり、「仕事を引き受けておけばよかった」と後悔の念にさいなまれたりする可能性が大きくある。

以上のように、私たちビジネスパーソンの多くは、仕事の依頼に対して「ノー」とは言えないような環境・立場に置かれている。したがって「断り上手になろう」といった類(たぐい)のアドバイスは「無意味」とまでは言わないまでも実効性の低い教えと言わざるをえない。本当に大切なことは、同僚たちやマネージャーからの仕事の依頼を断れないことを前提に、オーバーワークの問題を解決するすべを持つことなのである。

「イエス」の言い方を学ぶ

画像2: 仕事を断れないあなたに贈る!キャパシティを超えた仕事量に対処する方策 ── 海の向こうからオピニオン その36

自分への仕事の依頼に対してすべて「イエス(Yes)」と答えつつ、オーバーワークを回避するための基本的な方法は仕事の優先順位づけである。

例えば、図2のようなイメージで仕事の優先順位をしっかりと決めることができれば、自分のキャパシティを超えるような仕事を引き受けても、それに余裕をもって臨むことができるはずである

ただし、現実の仕事というのはなかなか複雑で、図2のような優先順位づけが自分の一存で決められることはまずない。したがって、例えば、自分のキャパシティを超える仕事をマネージャーから新規に依頼されたときには、こう答えるのが無難と言える。

「仕事は引き受けますが、その仕事をすると他の仕事の優先順位を下げなければなりません。どの仕事の優先順位を下げていいかを教えてください」

また、自分の仕事の優先順位が明確である場合には、次のように答えるのが適切である。

「仕事は引き受けますが、そうすると優先度の最も低い作業を削除しなければなりません。それで良いでしょうか」

さらに、あなたに新規の仕事を頼む人と、その仕事を引き受けるために優先順位を下げなければならない仕事の依頼主が異なる場合がある。そのような場合には、新規の仕事の依頼主(仮に「A」とする)と優先順位を下げる対象の仕事の依頼主(仮に「B」とする)に対して、あなたの仕事の優先順位に関する合意を形成するよう求めるのが適切である。これによって、Aが自分への依頼を撤回したり、AとBがともに仕事の期限を再考したりする可能性がある(図3)。

図3:仕事の優先順位づけに関する合意の取り付け

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