「クマになってほしい」で解決

倉貫社長は気軽に相談することを、雑談と相談を分けて考えないという意味で「ザッソウ」と呼ぶ。報告・連絡・相談の「ホウレンソウ」よりも、エンジニアにとっては「ザッソウ」の方がより大事だと考えている。

「現在のIT業界は非常に幅広いものになってきていて、1人のエンジニアが全てを知り、理解できるものではありません。特にアジャイル開発の場合は、お客さまが正解を持っているわけでも、私たちが正解を持っているわけでもなく、一緒に難しい問題に取り組む必要があります。

1人ではアイデアを考えるのも難しく、知識も足りません。だから、誰かと相談しながらでしか問題の解決には至らないのではないでしょうか。気軽に相談し合うことが、エンジニアにとっては大事だと考えています」

コミュニケーションを取りやすい環境を作ることは、「ザッソウ」をする以外にも、メリットがあるという。

「エンジニアは、不具合やバグなどが見つかり、どうやって直していいか分からなくなってハマることがよくあります。そういう時に社内では、他の誰かに『クマになってほしい』と言います。

これはIT業界やエンジニア業界で昔からよく言われていることです。昔は大きなコンピュータが壊れて直すのが難しいときに、人形のクマを置いて、クマに順番に説明することで、自分で問題を解決できたというものです。相手から答えをもらわなくても、説明しているうちに解決できることは、実際によくあります。

仮想オフィスでも、社内の人に『少しクマになってほしい』とお願いできます。このような円滑なコミュニケーションを通して、スピード感のある業務も可能になります」

リモートワーク成功のためにはお互いをよく知ることが重要

コミュニケーションを取りやすい環境を用意したうえで、リモートワークをスムーズに進めるコツを倉貫社長に聞いてみた。その答えはシンプルで、「お互いを知り合う機会をつくること」だという。

「プロジェクトチームができても、そのチームメンバーがよく知らない人同士だということはあります。一緒に細かい仕事をしましょう、相談しましょうと言っても、お互いのバックグラウンドや考え方が分からなくては、コミュニケーションは取りにくいですよね。お互いのことをまず知り合うことが重要です」

ソニックガーデンの社内では、さまざまな取り組みによって互いを知り合う場をつくってきた。現在実施しているのは社内YouTube。毎週金曜日の昼に、新卒の社員が司会をして、別の社員に登場してもらいながらその人のことを掘り下げる1時間番組を制作している。

「YouTubeは2019年に始めて、20年の春頃からは社内広報の一環として取り組んでいます。番組までつくらなくても、Zoomでお互いを自己紹介するか、お互いを知るようなワークショップをしてもいいのではないでしょうか」

多くの企業が新型コロナの影響で、20年の春に急きょリモートワークに移行した。新入社員のケアにも苦労している。一方でソニックガーデンはもともとフルリモートなので、特に20年になって新たな対応はしていないという。

「毎年新入社員が入りますが、応募の時点でリモートワークだと分かっている人が受けてくるので、本人も、会社も、特に困ったという状況はありません。

当社では一度も出勤することなく仕事をしていくことになります。仮想オフィスに出社することで出退勤の管理をしてもらって、入社当初は仕事を教えるOJT担当の先輩社員から指示を受けながら業務を進めてもらいます。オフィスに出社しても、OJT担当をつけなければ、新入社員は仕事ができないですよね。

リモートワークをするなら仮想オフィスを入れた方がいいと思います。これまでスピーディーに連絡を取りたいときに、電話があるのに手紙を使うことはなかったはずです。仮想オフィスさえあれば出社すると先輩がそこにいるので、新入社員でもいつでもコミュニケーションを取れます。オフィスに出社する会社と本質的なところではあまり変わらないと思っています」

画像: 社内YouTube

社内YouTube

目的はリモートワークではなく成果を出すこと

ソニックガーデンは完全フレックス制で、残業もほとんどない。リモートワークによって、社員にとっても働きやすい環境を実現している。その結果として優れた成果を出すことが、リモートワークを実施する本来の目的だという。

「リモートワークをすること自体が目的で進めてきたわけではありません。仮想オフィスでコミュニケーションを取りやすい環境をつくることも、雑談がしやすいような心理的安全性を高めることも、全ては生産性を高めるためです。

良いパフォーマンスが出ることでお客さまにも貢献できますし、生産性を高めれば社員が働きすぎる必要もなくなります。細かい取り組みは、生産性を高めるための手段にすぎません。

新型コロナの影響によって、今後マーケットの動きも変わり、テクノロジーも進化していくと思います。仮想オフィスは10年前では技術が追い付かずに実現できませんでしたが、テクノロジーがある程度進化した今だから使えるというだけです。5年後、10年後にはまた手段は変わってくるでしょう。常に新たなサービスやテクノロジーを試していきたいですね」

ソニックガーデンでは、リモートワークの延長として、福利厚生にワーケーションも取り入れ始めている。リモートで開発チームの力を発揮するための環境づくりは、これからも進化していく。

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