アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、情報のサイロ化を阻止する6つの方策を紹介する。

情報のサイロ化がもたらす禍(わざわい)

ここでクイズを一つ。以下の3つは、何をもたらすでしょうか?

  • メール
  • 参照制限付きのビジネス文書(関係者しか参照でないような文書)
  • 廊下での立ち話

答えは、本稿のテーマ「情報のサイロ化」である。

「情報のサイロ化」とは、チームや部門内で情報・知見が閉じられてしまい、部外者からアクセスできなくなることを指している。

こうした状況は、政治的な理由から意図的に作られることもあるが、大抵の場合は、特別な意図がないままに情報のサイロ化が進行していることが多い。例えば、日々の喧騒の中に身を置いていると、ついつい関係者との情報共有を忘れたり、なおざりにしたりしてしまう。これも情報のサイロ化を招く行為だ。

情報のサイロ化は、チームあるいは会社全体に3つの禍(わざわい)をもたらす。その一つは、仕事に必要な情報へのアクセスを困難にし、生産性を低下させることだ。またもう一つは、新人が仕事を覚えるスピードが遅くなることである。残る3つ目は、相互不信や政治的な暗躍、無意味な社内競争の文化を組織に根づかせてしまうことである。

このような禍を避けるには、情報のサイロ化を防ぐこと、あるいは情報のサイロを打ち壊す必要がある。以下に、そのための6つの方策を紹介したい。

方策1: 積極的なコミュニケーションを心がける

社内の誰かの仕事にプラスになる、あるいは影響を与えそうな情報を入手した際には、可能なかぎり早く共有することが大切だ。これにより、情報を共有された側は自分たちの計画を適切に変更したり、スピードアップしたりすることが可能になる。

方策2: できるかぎりメールは使わない

メールというコミュニケーションツール(ないしは、媒体)は、一見すると情報の伝達や共有に適した仕組みに思える。だが、その見方は全くの誤りだ。メールは、情報共有のためのツールというよりも、“サイロビルダー”と呼んだほうが適切な仕組みである。

実際、メールで送られる情報やメールでのやり取りは、メールの宛先に指定された人間以外はまったく見ることができず、その記録に、あとからアクセスすることもできない。そのため、メールでのやり取りが増えれば増えるほど、閉ざされた情報・知見が増えていく。これにより、新人がチームに貢献できるようになるスピードは遅くなり、また、あるチームが犯した失敗とまったく同じ失敗を、他のチームが繰り返してしまう確率も高まっていく。

方策3: ビジネス文書は基本オープンに

参照制限付きのビジネス文書に知見を閉じてしまうのも、情報のサイロ化を進行させる行為だ。またそれは、知見の無駄遣いとも言える。したがって、ビジネス文書の作成に「Google Docs」を使おうが、「Office 365」を使おうが、さらには、社内Wikiの「Confluence」を使おうが、とにかく作成した文書は、基本的に社内の誰でも参照できるようにすることが大切だ。そのうえで、部外者秘にすべき正当な理由があるものだけを閉じていけばいいのである。

方策4: 共有型のチャットルームを使う

グループチャットは、チーム内での情報交換のためだけに存在するのではない。

例えば、特別なワークストリームやプロジェクト、あるいは興味・関心時のために、社内の誰もが参加ができる「Slack」チャンネルを立ち上げみていただきたい。これにより、全ての社員がチャットチャンネルにアクセスし、質問をしたり、意見を述べたり、チャット画面を上下にスクロールしながら履歴を参照したりして、情報・知見が共有できる。たとえ、チャンネルでのやり取りが短期間で終了したとしても、チャットの履歴が残っているので、のちに参照したいときに、いつでもアクセスできる。情報のサイロを打ち壊そうと考えるなら、このようなチャットチャンネルの活用が不可欠なのである。

方策5: 情報は全て文字で残す

会議での対話や、オフィスの廊下での立ち話などで、価値ある情報が交わされるケースは多い。ところが、その場にいなかった人間にとっては、どのような情報が交わされたかがまったくわからず、暗闇の中に置かれた状態になる(その痛みは、フルタイムのリモートワーカーがよく感じることだ)。そのような状態のチームメイトを作らないようにするには、チームの仕事に関係する全ての情報を、チームのチャットルームに必ず記録として残し、共有することを習慣づけることが大切だ。それに加えて、新しく入手した情報に応じて、関係する共有文書に更新をかけたり、コメントを付与したりすると、情報共有の品質を一層高めることができる。

方策6: 情報の簡潔さと関係性に配慮する

組織で働くうえでは、同僚の時間を尊重しなければならない。したがって、情報を共有する際には、その情報が有効活用できる同僚とだけ積極的に対話し、確実な共有を図ることが重要だ。大抵の場合、あなたが入手した一つの情報を必要とする同僚は多くて2人程度のはずである。ただし、それで一向に問題はない。上述した5つの方策を実践していれば、“セルフサービス”のかたちで、のちに誰かが勝手にあなたが入手した情報を探し当て、有効に活用するようになる。

情報のサイロを打ち壊せば誰もが勝者に

会社で働くすべてのワーカーには、自分の仕事をより効率的で有効なものにするための情報が必要である。それゆえに、仕事にかかわる全ての情報はオープンにして、社員全員で共有できるようでなければならない。

また、全ての情報をオープンにすることで、従業員の心理から「閉ざされた扉の向こうで何が起きているのかがまったく分からない」といった恐怖心が取り除かれ、組織の縦横で相互信頼の輪が形成される。加えて、会社や部門、チームでの方針やディスカッションに対する従業員の理解も深まっていくはずである。

さらに言えば、組織における情報の自由闊達な流れは、チームや個人の生産性向上に貢献し、かつ、「情報をブロックしようとする人」や「同じミスの繰り返し」、タイヤのホイールのように「すでに発明されているモノの発明」、そして「情報の輪からはじき出されてしまう人」の大幅な低減につながっていく。

もちろん現実的には、情報の共有化・オープン化を進めることで、進行中の自分の仕事について、準備ができる前やコンテキストを把握しないまま、チーム内の誰かがフィードバックをしてくることが間々ある。このようなときには、正直、相応の苛立ちを覚えるものだ。ただし、そのようなときにも、怒りを抑えて、“分からず屋”のコメントをすべて消去したくなる衝動に抗いつつ、また、『情報のオープン化の税金は高いな』などと思わずに、冷静になることが大切である。そして、これは“税金”ではなく、自分の仕事をより強化するための“投資”と見なすほうがよい。そしてこう考えていただきたい。

「全てが手遅れになってから、自分の仕事の致命的な欠陥を白日の下にさらすよりも何倍もいい」と。

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