アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、リーダーに必要な9つの心得を紹介する。

リーダーを迷いから救う

リーダーの役割を背負わされている人間は、どう振る舞うべきかで悩むものである。例えば、会計士や開発者、マーケターとして優秀な人がマネージャーになっても、その資質だけで優れたリーダーになれるわけではない。にもかかわらず、リーダーへの昇格は、「キミは仕事ができるね。じゃあ、チームを任せよう」といった上司の一声で決まり、リーダーシップ研修も受けさせてもらえないまま、責任だけを背負わされることがよくある。

それでも、「平凡なマネージャーにはなりたくない」と誰もが思う。ゆえに葛藤が始まるのである。

このような“悩めるマネージャー”に向けて、本稿では「リーダーの心得」を示したい。ここに示す心得は、グーグルの調査結果に基づくものである。

グーグルでは、自社のマネージャーが、自分たちの成すべきことを見失わないように、あるフィードバックメカニズムを働かせている。それは、従業員に対して、自分たちのマネージャーのパフォーマンスに関する13項目の質問を投じ、フィードバックを得るというものだ。そのフィードバックを読むことで、効果的なリーダーシップとは何かが見えてくるとグーグルのリサーチチームはいう。そこで今回は、このグーグルの調査結果を参考しながら、優れたリーダーになるための9つの心得を示すことにしたい。

心得その1:部下へのフィードバックは“なる早”で

言うまでもなく、部下に対するリーダーのフィードバックは効果的でなければならない。そして、フィードバックの効力を高める最良の方法は、フィードバックを即座に返すことである。年次のレビューや次回の1 on 1(ワン・オン・ワン)ミーティングのときまで、部下へのフィードバックを後ろ倒しにするようなことはしてはならない。何らか事象に対してコメントを求められた際には、いかなるときも、コメントを求めた側のマインドがフレッシュな24時間以内にフィードバックを返すのが、リーダーとしての心得である。

このように考えていくと、部下とのやり取りには、オフィスですれ違う時の立ち話でも、チャットを使っても問題ない。ただし、ときには部下との対話が非常に深刻な内容で、当人以外の誰にも聞かせたくない場合もあるだろう。そのようなときには、直接、個室に部下を呼び出せば良いだろう。

グーグルの元幹部で、書籍『Radical Candor』の著者でもあるキム・スコット(Kim Scott)氏によれば、実行性の高いフィードバックには、他者への思いやりと率直さの双方が必要であるという。要するに、部下への批判を甘い言葉で包み込む必要はないものの、部下に批判の言葉を投じるときには、その根底に相手を想う気持ちがなければならないということである。

心得その2:部下に対して人間味に溢れた対応を心がける

この心得の実践方法はいくつかある。その中で、特にお勧めしたい方法は次の3つだ。

1つ目の方法は、「優れた聞き手」になることである。そのためにはまず、部下とのミーティングの最中に自分のノートPCのふたを閉じて相手の意見に集中するようにする。同様に、部下が話しているときに、自分のスマートフォンを覗き込み、メールやチャットをチェックするのも厳禁である(そういう行為は、大人としてどうかと思われる)。また、部下の話の内容を要約して聞き返し、自分の理解に誤りがないように心がける。これらはいずれもアクティブリスニングのテクニックである。

2つ目の方法は、部下の働き方に対して柔軟になるよう広い心を持つことである。

例えば、病気の子どもの看病や自宅の配管工事のために、自宅作業を望む声が部下から出ることがある。ときには、遠くから通う部下が、朝夕の通勤ラッシュを避けるために、日々の勤務時間を変えたいと望む声が上がる場合もあるだろう。このようなときに、彼らの合理的な要求を快く受け入れる態度を示すことで、部下から献身とロイヤリティという見返りを得られる可能性が高められるのである。

最後の3つ目の方法は、小さな勝利を祝うことである。

例えば、チームが重要なゴールの一つをクリアーしたときにチーム全員で昼食をとり、ゴール達成を祝うようにする。そうすることで、あなたは、メンバー間のパーソナルなつながりの形成に心を砕(くだ)くリーダーであると部下から評価されるはずである。また、チーム内の誰かが傑出した成果を上げたときに、即座に、かつ公にそれを賞賛・承認するのも良策と言える。

心得その3:マイクロマネジメントから手を引く

有能な人材をチームのメンバーとして集められたら、リーダーが成すべきことは、いわゆる「マイクロマネジメント」から手を引き、それとは真逆のマネジメント手法を採用することである。要するに、部下たちの活動の邪魔にならないよう、彼らの行く手から姿を消して、才能ある各人が自由に羽を広げ、飛び回れるような環境作りに力を注ぐことが重要なのである。

書籍『Drive』の著者であるダニエル・ピンク(Daniel Pink)氏は、“自律性”がヒトのモチベーションを高める重要な要素であるとしている。これを言い換えれば、仕事に対する部下の意欲を高めようとするならば、こと細かに「いつ、何をすればいいのか」を伝える必要はない。

ちなみにアトラシアンでは、グーグルと同様にパフォーマンス評価のフレームワークとして「OKRs(Objectives and Key Results)」を採用している。そのため、アトラシアンのマネージャーたちは、自分たちの組織で達成すべき高次の目標(オブジェクティブ)を定めて、その達成度合いをどのような指標によって計測するかをメンバー各人と決定し、それぞれに成果目標を課している。

ここで重要なのは、その成果目標をどのように達成するかは、そのほとんどをメンバー各人の自己裁量に委ねていることである。つまり、組織のメンバーに“自律性”を与えているというわけだ。これによって各メンバーのモチベーションは高められ、それぞれの能力を最大限に発揮して、成果を上げようとする。結果として、メンバー一人ひとりの成長も促されるのである。

心得その4:視点の個性を尊重する

モノゴトをさまざまな角度からとらえることは、複雑な問題を解決するうえで非常に有効である。そのため、組織内、あるいはチーム内での視点/発想のダイバーシティ(多様性)を確保することは、リーダーにとって重要な役割の一つと言え、その使命を果たすためには、ヒトの視点の個性を尊重することが必要とされる。

そこでまずは、リーダーであるあなたの意思決定に異を唱え、新しいアイデアを提案してきた人たちをチームに招き入れ、「創造的な摩擦(まさつ)」は良いことであり、彼らをチームに参加させたのは、自分の意見に従って欲しいからではないと伝える。そのうえで、チーム内の誰かが上司に異を唱える勇気が十分にあると判断したならば、たとえ、上司や大勢とは異なった見解であっても、それをチームメイトと共有しようとする勇気・姿勢を公の場で評価し、認めるようにする。こうすることで、チーム内に「上司やチームメイトと異なる意見を述べても、非難されたり、排除されたりすることはない」という心理的安全性(=つまりは、安心感)が確保され、建設的で尊敬に値する異論が活発に交わされる文化が定着していくのである。

心得その5:チームの“成果”にフォーカスを絞る

一定のタスクを完了させると、ヒトは達成感を味わい、気分がよくなる。しかし、これは“労働の甘いワナ”と考えたほうがよい。というのも、ビジネスで重要なのは、タスクを終えたかどうか、あるいは、どれだけ多くのモノを生産したかではなく、そのアウトプットが最終的にどのような成果につながったかであるからだ。したがって、リーダーとしては、チームのアウトプットではなく成果に対して、常にフォーカスを当てる必要がある。

実際、優秀なリーダーは、部下たちに計測可能な数値目標を持たせ、それを遂行するためのスペースを与えている。つまり、部下たちのキャパシティが満杯にならないようにタスクを割り振り、それぞれが最終目標の成果を達成できるまで、幾度もタスクを繰り返せるようにしているのである。

心得その6:情報の透過性を確保する

リーダーは、自分の率いる組織やチーム内の信頼関係を築くために、情報の透過性の確保に力を注ぐ必要がある。また、自分の部下たちが、チームや組織、ひいては会社の目標/構想をしっかりと理解し、それと自分の仕事とを結び付けられているかどうかも点検する必要があるだろう。

実際、アトラシアンが独自に行った調査では、チームのパフォーマンスと、仕事の最終目的に対するチームの理解度との間に正の相関関係があることが明らかになっている。具体的には、成果を上げる優れたチームの場合、その66%は、自分たちの仕事が顧客やビジネス上のベネフィットにどう結び付くかを理解しており、成果が出せないチームの場合は、その比率が25%に過ぎなかったのである。

心得その7:部下のキャリア開発につながる意味あるディスカッションを行う

自分の部下のスキルアップやキャリアアップを支援したり、リーダーとしての素質を伸ばしたりすることは、リーダーの重要な役割である。もちろん、その役割の遂行に力を注ぐことで、結果的に、優秀な部下を失うことになるかもしれない。とはいえ、それが部下の将来にとってベストであれば、リーダーとしてそれを後押しすることが重要と言える。

そうした人材開発の使命を果たすうえでは、キャリアに対する部下の考え方や希望を把握しておくことが大切だが、そのためのディスカッションは1 on 1の形式で年2回程度の頻度で行うのが適切と言える。また、ディスカッションの際には、部下が自由に回答できるような質問を投じることが大切である。参考までに、その質問のサンプルを以下に示しておく。今後の参考にされたい。

  • 現在の仕事の中で、最も嫌いなこと、最も好きなことは何か?
  • 今から2~5年後に、どんな自分でありたいと願っているか?
  • 私たちのチーム、部門、会社に足りないものがあるとすれば、それは何か?
  • どういったプロジェクトにかかわることが、自分のキャリアップに有益だと考えているか?

心得その8:部下への期待を明確に伝える

部下に対して、自分の期待を明確に伝えることは、部下のモチベーションを高めるコミュニケーション手法の一つだ。また、優れたリーダーは、部下たちのチーム貢献意欲(エンゲージメント)を高めるコミュニケーションにも気を配り、部下を観察しながらエンゲージメントのためのルールを確立し、日々の仕事の中に取り入れている。というのも、そうすることが、品質の高い仕事を、スケジュールや予算どおりに完遂させるという、自身に対する会社の期待にこたえることにつながるからである。

このほか、チーム固有のコミュニケーションルールを敷くことも、チーム内での意思疎通の円滑化やメンバーの意欲向上につながる場合がある。そのルールとは例えば、「会議進行の邪魔になるものはすべて排除する」「仕事中のヘッドフォン着用は“仕事に没頭中!話かけないで!”のサインにする」といった具合である。このようなルールを作り上げる最も効果的な方法はブレストによってチーム内での合意を形成することだ。また、1年に1~2回の頻度でルールの見なおし会議を開き、調整を図っていくとよい。

心得その9:自分の専門性を証明する

リーダーのポジションにいる方は、おそらく、自分のチームが担当するビジネスに対して模範的な貢献をしてきたはずである。リーダーになったのちも、そうした個人のスキルの鮮度を保ち、メンバー個々の仕事の内容を把握し、彼らに対して有益なフィードバックが行えるようにしておくことが大切である。

とはいえ、あまり深く知ろうとするのは避けたほうがよく、それを行ったところでリーダーとしてのスキルは上がらない。したがって、現場仕事に関しては、あなたがリーダーになる直前まで行ってきたことと同じことをするだけでよく、それだけで、あなたの仕事に対する専門性を十分に証明することができるはずである。

イノベーションも部下に任せる

グーグルが従業員に投じている13項目の質問の中には、リーダーに取って欲しい行動やリーダーに求める資質のほかに、「自分の上司を他者に推薦したいかどうか」「今のリーダーの下で働くことに満足しているか」「リーダーは何を続けるべきか」「リーダーは何を変えるべきか」といった項目が含まれている。また、印象的な点として、13項目の質問のうち1つしか技術力(専門性の高さ)に触れていない。

その他の質問は、コミュニケーション能力やメンターシップに焦点が合ってる一方で、「イノベート」「ビジョナリー」といった言葉はどこにも見当たらなかった。これは、優れたリーダーシップに何が必要とされているかを端的に物語るものと言えるかもしれない。

要するに、リーダーは、率いるチームの中で最も大胆で革新的である必要もなければ、最高のプログラマーである必要もないということである。その代りに絶対にしなければならないのは、自分のチームのメンバーを引き立てることである。部下たちが地に足をつけて、それぞれの能力をいかんなく発揮できる確かな土台を築き、かつ、彼らが自分史上最高の仕事ができるように、それぞれの行く手を遮らず、邪魔にならない場所から見守ること─。それが、リーダーの成すべきことであり、それができるリーダーが優れたリーダーと言えるのである。

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