アトラシアンには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

集団思考を排除するために

今の時代、競合相手は多様化と増殖を続けている。その中で、他社の一歩先を行く一手は、組織の集団思考を排除することである。なぜならば、集団思考は、人が斬新なアイデアを生み、ビジネスを発展・進化させる力を削ぎ落していくからである。

そんな集団思考と戦うために、Amazonでは、すべてのアイデアに関して「デフォルトで“Yes”」という、なかなか品格の高いアプローチを採用している。新しいアイデアは、ビジネスケースの上に成り立つものだが、既存の道筋の延長線上にあるものではない。現状維持は簡単なことだが、新しいアイデアを育てることはとても難しい。それゆえに、マネージャーも他のスタッフと同様に、常に新しいアイデアを取り入れ、それらを実行可能にする方法を考え抜かなければならない。

集団思考を排除することは、批判や反対意見を尊重する文化を築くことでもある。この文化を醸成するには、経営層が、現場で働く社員たちからのインプットを常に評価することが大切で、“オープンドア”のポリシーを持つだけでは不十分と言える。ただし、オープンドアポリシーは、「現場の意見に耳を傾ける用意がある」という社内のトーンを定めるうえでは有効である。今日の企業組織においては、あらゆる地位の従業員が、それぞれのチーム、部門、あるいは競合他社で何が起きているかを、包み隠さず、ストレートに幹部に言えるようでなければならない。

あらゆる文化に共通して言えることだが、一夜にして変化することはまず起こりえない。ゆえに、現場のリーダーは、トップダウンでの文化の変革を待つのではなく、集団思考を排除するための行動を、自ら率先してとることが大切だ。また、それに際しては、以下に示す5つの戦術を習慣にすることをお勧めしたい。

戦術1: 討議を演出する

かの有名な“ライト兄弟”は、絶えず意見を戦わせていたが、最終的には、論争を“ゲーム化”していたという。昼食のときに毎日役割を交換して、必ず互いの問題点を指摘していたようだ。

このコンセプトは、新しいアイデアを練ったり、ビジネス上の課題を解決したり、あるいは、何らかの意思決定を下したりするための会議に適用することができる。

まず、会議を催す際に、“かく乱役”を演じる人をあらかじめ決めておく。そしてこの人には、メインのアイデアや意見に対して、建設的で批判的な見解を必ず出させるようにするのである。その批判的な見解とは、例えば、以下のような具合である。

「あなたの言う、仮説が間違っていたらどうなるのか?」
「失敗しないのか?」
「そのアイデアに魅力を感じない人、あるいは、その実現のために働こうとしない人がいるとすれば、それはどのような人か?」
「そのアイデアを実行するのに今が最適なタイミングなのか?」

言うまでもなく、かく乱役の見解・批判もロジカルであることが大切であり、討議する内容を事前に共有し、相応の準備をさせる必要がある。そのため、この戦術の実践には意外と手間がかかるが、例えば、人の意見やアイデアに対して、シニカルに笑うだけで何も言わないような人間をかく乱役に抜擢することで、グループにおける「ネガティブな批判のパワー」を「ポジティブで創造的な批判のパワー」へと転換することが可能になる。

戦術2: 多様性に富んだチームを築く

これは、私が毎週月曜に行われる定例会議に自分のアイデアを持っていったときの話である。私はそのアイデアが気に入っていたし、週末にブラッシュアップもしていたので、完璧に近いと思い込んでいた。

ところが、会議が始まり、そのアイデアを議論のテーブルに乗せたとたん、グループの仲間たちは1時間をかけて私のアイデアを粉々に打ち砕いてしまったのである。結果として、私たちが手にしたのは、私のアイデアよりもはるかに優れたアイデアだ。これこそが、グループのダイバーシティの効果と言える。グループの各人が、私とはまったく別の視点を持ち、別角度から物事をとらえ、私がまったく気づかなかったこと、あるいは思いもしなかったような新しい可能性やリスクに気づかせてくれたのである。

ここでもう1つ、自動車のエアバッグの話をしておきたい。エアバッグが世の中に登場した当初、それが女性や子どもを傷つけてしまう可能性が指摘され、問題になった。なぜそのようなことが起きたのかと言えば、開発に携わった人がすべて男性だったからである。

こうした事態を避けるためにも、先天的な多様性(年齢、人種など)と後天的な多様性(軍隊経験やマルチリンガル、など)の双方を可能なかぎり保持することが、チームにとってきわめて大切だ。このような人材のダイバーシティよって、より多くの視点を会議のテーブルに持ち込むことができれば、何らかのブレークスルーを実現する画期的なソリューションを創造できるチャンスが広がるのである。

戦術3: 自分に批判的な誰かの意見を聞く

オフィスにおけるあなたの席から、遠く離れた席にいる誰かが、あなたと正反対の意見・視点を持っている可能性は大いにある。ゆえに、プロジェクトを深く進行させ、後戻りが困難になる前に、遠く離れた場所にいる誰かに、プロジェクトの問題点について尋ねみるとよいだろう。これによって、次の3つのどれかが起きる可能性が高い。

1つは、アイデアの弱点を指摘され、補強のチャンスを手にすることだ。もう1つは、既存のアイデアを破棄して、より興味深い何かに目を向けるようになることである。残る1つは、現状のアイデアを維持しつつ、アイデアへの批判に対処するためのプランを追加することである。

戦術4: 思考回路に制約をかける

グループでのブレインストーミング(ブレスト)は、新鮮でイノベーティブな発想を生む究極的な手法とされている。ところが、長くともに働いているグループの場合、各自の思考がかなり似てきてしまうので、いくらブレストを重ねても画期的なアイデアが生まれにくくなる。このようなときには、ブレストに制約をかけるのが一手だ。

例えば、サイトの「404エラー」ページを改善しなければならないとしよう。その際には、ブレスト参加者に5分間を使ってユーモアを用いたページのアイデアをいくつか想起させ、次の5分間で、それらのアイデアに基づき、利用者の好奇心を刺激するためのアイデアを考えさせ、次の5分間で具体的な画像のあるアイデアを考えさせる。そして最後に、「まずまず」レベルのアイデアをすべて消去していくといったかたちである。

こうすることで、参加全員が意義を唱えるための安全なスペースを確保しつつ、良質なアイデアのみを残すことができる。手にできるアイデアの数は少ないが、それでまったく問題はない。ブレストで得るアイデアは一つで十分なのである。

戦術5: 顧客と対話する

顧客との対話は常に恐怖を伴う。というのも、顧客は、自分の仕事に対する究極の批判者となりうるからだ。彼らは、あなたが組織しうるチームの誰よりも厳しい目を、あなたの仕事、商品、サービスに向け、その批評には、何の忖度(そんたく)も、ためらいもない。だからこそ、顧客は、チームが遂行すべきアクションを考えるうえでも、アイデアを練るうえでも、最高の情報源となりうるのである。したがって、顧客との対話のエッセンスは、必ず、関係者全員と共有することが大切である。

もっとも、将来的には、ロボットたちが、顧客と同じような役割を演じて、集団思考を排除してくれるようになるかもしれない。米国カリフォルニア州立大学バークレー校とタタ コミュニケーションズ社が発表した最近のレポートによれば、未来の会議では、AI(人工知能)が建設的な意見を出し、より意味のある議論へと私たちを導いてくれるようになるという。また、AIの働きによって、仮説にもとづく意思決定や分析のための議論のあり方も大きく改善されるとのことだ。さらに、プロジェクト管理のためのツールも、プロジェクトメンバーに足りない視点や知見を補うアルゴリズムを備えるようになり、会社の他部門・他部署のなかから、プロジェクトに貢献しうるエキスパートを自動で提案するようになるかもしれない。

そんな時代がくるまでは、“創造的な摩擦”を模索し続けることが大切である。


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