アトラシアンには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

デザイン主導の会社はどうして高業績なのか?

コンサルティングファームのマッキンゼー&カンパニーによると、デザイン主導の企業は業績が好調なところが多いようだ。その理由として、同社が挙げるのが「顧客中心主義」である。つまり、デザイン主導の企業に共通して見られる特徴が顧客中心主義であり、彼らがエンジニアリング主導、あるいは営業主導の競合他社を上回る業績を上げられている理由でもあるという。

また、デザイン主導の企業は、今のところ少数派だ。ゆえに、彼らの顧客理解のテクニックを取り込むだけで競争優位が確立できる可能が高いとされている。

では、そのテクニックとはどのようなものなのだろうか──。

おそらく、デザイン主導企業に聞いても、彼らにとっては“差別化の技術”なので、なかなか教えてくれないはずである。そこで今回は、デザイン主導で顧客とのつながりを強化し、満足度を高めるための5つのテクニックを紹介する。ここで紹介するテクニックを活用すれば、企業のチームは、顧客との強いつながりを保ち、より高い顧客価値を継続的に提供していくことが可能になるはずである。

テクニック①顧客のコンテキストを調査する

あなたが、営業やマーケティングのチームに属しているならば、電話やイベント会場で顧客と対話した経験をお持ちだろう。だが、“素”の状態にある顧客を長時間、観察した経験はほとんどないはずである。

実のところ、顧客が普段どのような状況に置かれ、どのような考えを持っているかの「コンテキスト」に対する理解がないと、ベーシックなヒアリングや調査を重ねても、顧客の本当のニーズは把握できない。ゆえに、顧客のコンテキストを知るための調査が必要になる。また、コンテキストの調査は、顧客がどのように自社の製品・サービスを使用し、そのうえで、どのようなニーズを有しているかをとらえる絶好の機会でもある。調査は2~3時間をかけて行い、基本的に以下のような要素から成る。

  • オフィスや自宅など、顧客の仕事・生活の環境を把握する
  • インタビューはシャドウ形式で行い、個人、ないしはグループに対して実施する
  • 後日、チーム内でインタビュー内容のブリーフィングを行う
  • インタビューから得られた気づきをまとめて記述しておく

こうしたコンテキスト調査で得られた顧客に関するインサイト(洞察)は、良質な顧客体験によって顧客との関係を強化しようと考えるチームにとって非常に有用である。

とはいえ、このテクニックだけで、デザイン主導が実践できるわけではない。あくまでも、デザイン主導を実践するためのテクニックの1つにすぎないということを覚えておいていただきたい。

テクニック②ジャーニーマップを作る

自社のブランドに対する顧客のロイヤルティを高める道のりは長くて険しい。この厳しい道のりを歩むうえでは、顧客の「ジャーニーマップ」を描き、あなたの会社の製品やサービスが、どのような体験を顧客に与え、それが顧客の行動や感情にどのような影響を与えているかを見える化することが重要である。

このマップの中には、製品の選択から購入完了に至るプロセスにおいて、顧客が、どのような体験をしたかを細かく記録していく。また、製品購入に至るステップを詳細に可視化しながら、そのジャーニーの中で、顧客の感情がどのように変化したかも注意深く観察する。これによって、早急に解決すべき顧客の課題を正確に特定し、かつ、より多くの価値を提供するチャンスがどこにあるかを把握することが可能になる。

テクニック③共感マップを描く

顧客と一緒に散歩を楽しむことはできないとしても、彼らの思考に入り込み、1時間過ごすことは不可能ではない。それが「共感マップ」を描く演習である。

この演習では、あなたは、特定のペルソナを持った顧客になりきり、その人の希望や不安、ニーズを想像する。また併せて、その顧客が信頼の置ける情報を、どこから入手しているかもイメージする。そのうえで、顧客があなたの会社の製品/サービスを使っている間に、どのような情報を見聞きし、どのような感情を抱くかも想像してみるのである。

こうすることで、「自分の顧客は何者か」について、より鋭い感覚を獲得することができる。その感覚は、サービスを運営したり、製品を販売したりするうえで、ただちに活かせるものと言える。また同様に、自分の仕事の改善につながる適切な問いかけを顧客に向けて投じたり、顧客についての仮説を立てたりすることも可能になる。

テクニック④問題フレームを作る

顧客のために解決すべき問題がしっかりと定義できないとすれば、あなたには問題解決のチャンスが巡ってこないことになる。問題フレーム作りは、そのような事態を避けるためのテクニックと言える。具体的にはまず、四角形のスペースを4つの領域に分けて、それぞれのセクションに以下の質問に対する答えを記述していく。

  1. Who(誰なのか): その問題を抱えているのは、一体、誰なのか? そのような問題を抱えている顧客は本当に存在するのか? その問題にはリアリティがあるのか? そのリアリティを証明できるのか?
  2. What(何なのか):問題の特性は何か? その特性を証明する調査や証拠はあるのか?
  3. Why(なぜなのか):なぜ、その問題を解決しなければならないのか? 解決によって、顧客にどのようなインパクトを与えられるのか?
  4. Where(どこなのか):その問題はどこから湧き上がったものなのか? あなたのチームは、その問題が発生するのを本当に観察したのか?

こうして問題のフレームを作り上げることで、問題に対する理解をより強固なものにできる。それによって初めて問題解決のソリューションが検討できるようになる。

テクニック⑤顧客体験キャンバス

「顧客体験キャンバス」は、顧客行動理解の古典的な手法とも言える「リーンキャンバス」から生まれたテクニックである。「顧客体験キャンバス」を使うことで、問題解決の方法や問題解決のターゲットとしている顧客の姿、問題解決の「成功」によって何が得られるかを、明確にすることができる。

そのキャンバスではまず、自分の「仮説」を一番上に記載し、キャンバスの各エリアを順番に埋めていく。この作業中、必要に応じて、エリアとエリアの間を自由に行き来して、エリアの修正を繰り返す。キャンバスでの作業を完遂したのちには、前述したジャーニーマップをすぐに描けるようになるだろう。また、バーチャル(仮想)とフィジカル(物理)の2つの世界における顧客との各接点(タッチポイント)において、どのようなソリューションを提供すれば、顧客とのつながりが強化できるかが、より鮮明になる。

もっとも、ここで留意いただきたいのは、顧客体験キャンバスでの作業は、決してリーンなプロセスではなく、実に厄介で面倒な仕事であるという点だ。投資への見返りも「少しずつ」でしか見えてこない。だが、少しずつとは言え、確実に見返りが見えることに意味がある。

以上、5つのテクニックについて駆け足で紹介してきた。これらのテクニックは、グループで使うことでより効果的になる。また、そのグループは、異なるスキルやバックグラウンドを持った人員で構成されていることが、より望ましいと言える。


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