アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのジェネヴィーヴ・マイケルズ(Genevieve Michaels)が、組織全体でナレッジを共有し合う文化と仕組みの築き方について、「文化+働き方」と「システム+ツール」の両面から10の実践的な習慣を紹介する。

本稿の要約を10秒で

  • ナレッジ共有は自然には起きない。信頼と仕組みの両方を意図的に整えていくことが大切
  • 「人に聞く」前にAIやナレッジベースで自己解決できる状態をつくることで、対面の時間をより価値ある仕事に使える
  • 成功も失敗もオープンに共有し、組織全体の学びとして蓄積していくことが成長につながる
  • ドキュメントは「詳しさ」より「使いやすさ」を優先し、日常的にメンテナンスしていく

1人の知識だけでは、本当に重要な仕事をやり遂げるには足りない。1つのチームだけでも不十分である。何か大きな成果を出したいのであれば、組織全体で知恵を持ち寄る必要がある。

ナレッジ共有は、組織全体のイノベーション、創造性、そして生産性*1を高める*2。ナレッジ共有がうまくいっていないと、情報は部門やチーム、個々人の頭の中に閉じ込められたままになる(いわゆるサイロ、つまり組織の縦割り状態である)。それでは、超高度にネットワーク化され、競争も激しい今の世界で、私たちが直面している複雑な問題に立ち向かうことはできない。

そして、ナレッジ共有はビジネス指標を押し上げるだけではなく、その背後にいる「人」にとってもプラスになる。自分の知識が意味を持ち、役に立っていると実感できることで、人は大事にされていると感じられるし、自分のベストな仕事をするための支えも得られるからである。

ナレッジ共有の土台は「文化+仕組み」

ナレッジ共有は、特に大企業や分散型の組織において、自然発生的に起こるものではない。そこには、時間とエネルギー、そして明確な意図を持って整えるべき「基盤」が必要である。

この基盤は大きく2つの要素から成り立つ。人と人がどうつながるかという「関わり方」と、それを支える「システムやツール」である。これらの実践と、それを支えるツールをきちんと整えれば、人が自分は組織の一員だと感じ、大事にされていると感じ、そして自分の知識を進んで共有したくなるような文化を育てることができる。

⚫︎文化+働き方

ナレッジを自由に行き渡らせたいのであれば、信頼と包摂、そして上下関係にとらわれない協働の文化を築かなければならない。結局のところ、肩書や社歴に関係なく、人の話にきちんと耳を傾けるかどうかに尽きる。

ナレッジ共有が進みやすくなる文化的な要素には、例えば次のようなものがある。

  • 自律性とオーナーシップ: 人は、細かく管理される環境ではなく、自律性が尊重される職場のほうが、ナレッジを共有しやすい。すでに「こうすれば対応できる」とナレッジを共有しているのに、同僚が追加の作業を頼みに何度も戻ってくるようなことがない、ということである。
  • 「なぜ」の明確さ: 人にナレッジ共有を求めるときは、説明もなく一方的に義務だけ課すのではなく、なぜ*1それを共有してほしいのかを伝えるべきである。たとえば「各自がもっと素早く意思決定できるようにしたい」といった狙いを説明すれば、「自分の仕事がなくなるのでは」「代替可能な存在にされるのでは」といった不安を和らげられる。
  • 働き方の多様性: ナレッジ共有とは、あらゆるコミュニケーションスタイルや専門分野、職業経験(場合によっては個人的な経験も含む)といったすべての貢献を尊重すること*3を意味する。自分が価値のある存在だと感じられれば、人は自分の知恵を進んで共有したくなる。

⚫︎システム+ツール

ツールが最適に機能していなければ、かえって協働の足を引っ張り、人の時間を浪費し、重要な情報を埋もれさせてしまう。実際、労働者の56%*4が「重要なナレッジを得るには、誰かに直接聞くか、会議を設定するしかないことが多い」と回答している。

ここでの目標は、会議を全廃したり、対面でのやり取りをなくしたりすることではない。一人ひとりが自分で答えにたどり着ける状態をつくり、対面の時間を本当に仕事を前に進めるために使えるようにすることである。

ナレッジ共有文化を育てるための10の習慣

ナレッジがオンラインでも対面でも自由に行き交う職場をつくるための、いくつかの実践的な方法を紹介する。

1. 経営・リーダー層にナレッジ共有の手本を示してもらう

研究によると*3、ナレッジ共有の文化はトップから築かれる。リーダーが信頼や包摂性、協働といった価値観を体現していなければ、人々にそれを日々の実践として求めることはできない。

実践例: 意思決定を発表するときには、その結論に至るまでに貢献してくれた従業員の名前を挙げ、「一人ひとりのナレッジが会社を動かしている」ことを示すとよい。例えば「地域のサポートチームとお客様の行動について議論した結果、フランスでのローンチを延期することにしました」のように伝える。

2. 発言の機会を広く開く

同じ役職の高い人たちばかりがいつもアイデアを出し、意思決定を行い、物事の語られ方を形づくっているとしたら、多くの貴重なナレッジを取りこぼしていることになる。より多様な視点を積極的に取り入れるためのコミュニケーション手法*5を学び、その実践を日々の仕事に組み込むべきである。

実践例: ふりかえりや週次のチェックインでは、ファシリテーション役を持ち回りにする。自分が進行役のときは、ふだんあまり発言しない人にもこちらから声をかけて、より幅広い人の意見を引き出すようにする。

3. 能動的にフィードバックを集める仕組みをつくる

チーム全員からフィードバックを引き出したいのであれば、きちんとした「型」が必要だ。会議の最後に「何か意見はありますか?」と聞くだけでは不十分である。

実践例: その場で発言してもらうだけでなく、会議後に非同期でもフィードバックを共有できるような選択肢を用意する。また可能であれば、あらゆるワークマネジメントツールを統合・標準化し、チーム同士が互いの仕事の内容を把握しやすくし、意見を出しやすくなるようにする。

4.「原則オープン」でサイロをなくす

進捗や意思決定、その背景となるコンテキストは、プライベートチャネルではなく共有スペースで共有しよう。こうしたナレッジベースを継続的に更新し、常に内容の質を高く保つことを習慣にすることが大切である。

実践例: Loomを使って会議の音声を保存し、自動でメモを生成して、その両方をナレッジスペースにアップロードする。こうすることで、会議があとから参照できる「検索可能なテキスト」に生まれ変わる。

5. 社内ナレッジを探すなら、まずAIに聞く

ナレッジをシステムに蓄積しておくことの利点は、疑問が生じるたびに同僚へ連絡しなくて済む、という点にある。チームには、まず既存のナレッジベースやドキュメントを検索するよう働きかけよう。理想を言えば、RovoのようなAIツールを使って、より速く、より質の高い答えを得られるようにしたい。

実践例: Slackで、単純で自動回答できそうな質問を検知したらドキュメント検索を提案してくれるオートメーションを構築する。また、AIが解釈しやすいようにドキュメントの形式を整えることも重要だ。たとえば長文をだらだら書くのではなく、はっきりした小見出しで区切ることで、役に立つ回答が生成されやすくなる。

6. ナレッジの「カオス化」を防ぐために日常的なメンテナンスを行う

技術ドキュメントから戦略プランまで、あらゆる情報を1つのワークスペースに放り込むだけでは、誰の役にも立たない。人がそれらの共有資料をどう読み解けばよいか分かるように、内容を整理し、構造化し、分かりやすく整理された状態に保つべきである。

実践例: ナレッジベースの中で、その仕事が初期段階なのか、進行中なのか、正式に承認済みなのかをラベルで明示する。あわせて、コンテンツを最新の状態に保ち、古い情報をアーカイブする習慣もつくるとよい。例えば、すべてのプロジェクト計画に、ナレッジベースのメンテナンスを定期タスクとして組み込んでおく。

7. 保存されたナレッジを、使いやすい形で整理する

直感に反するようだが、あまりにも細かく書き込まれたドキュメントは、かえって役に立たない*6ことがある。長大で一から十まで指示が書かれた手順書は、情報過多を引き起こし、個別の状況に合わせて応用することも難しくなる。そうではなく、ドキュメントは簡潔にまとめ、本当に重要なステップがどれかを明確に示すべきである。

実践例: 詳細なドキュメントには、箇条書きの要約やLoom動画といった「要点だけを押さえた振り返り」を組み合わせ、読みやすく、行動に移しやすい形にする。さらに、必要に応じて読者が詳細を展開できるよう、情報をネストしておくとよい。たとえばConfluenceのExpandマクロを使えば、そのような構成を実現できる。

8. 会議の時間は厳選する

これは会議の終わりではなく、「メールで済んだはずの会議」の終わりである。お互いのナレッジに非同期でアクセスできるようにしておけば、会議はただ話す場ではなく、実際に仕事を前に進める場として使えるようになる。

実践例: 進捗報告のように一方向の伝達が中心になる会議は、Loomによるアップデートに置き換える。どうしても必要な会議の前には、既存の資料を事前に共有しておき、参加者全員が同じ前提知識を持った状態で集まれるようにする。

9. チーム間の関係性に投資する

ナレッジ共有やコラボレーションは、信頼関係やつながり、心理的安全性がなければ成り立たない。分散型やハイブリッドな組織では、オフィスのように自然なつながりが生まれにくいため、なおさら意図的な取り組みが求められる。

実践例: オフサイトやチームビルディングの日を設けたり、オンラインでのコーヒーチャットやランチ、気軽なおしゃべり用のSlackチャンネルを用意したりする。

10. 成果は良し悪し問わず共有し、学びにつなげる

ナレッジ共有の一部には、成功だけでなく失敗や苦労も含めて共有することがある。そうすることで、どのような意思決定がビジネス上の目標達成にどう結びついたのかを人々が理解しやすくなる。組織学習*7とは、失敗から学ぶことも含めた概念である。

実践例: 成果に関するドキュメント用フォルダを作成し、四半期ごとにすべてのプロジェクトのふりかえりやレトロスペクティブから、重要な成功と失敗を集約する担当者を決める。それらの知見をチーム横断の会議で取り上げ、「そこから何を学べるのか」を議論する。

This article is a sponsored article by
''.