アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのSarah Goff-Dupont(サラ・ゴフ=デュポン)が、AIによって生まれた新しい余白の時間を、成長・つながり・イノベーションの機会へと生かす方法を紹介する。
本稿の要約を10秒で
- 生成AIで生まれた余白の時間は、単なる効率化ではなく、成長や創造性への投資に使える。
- 趣味や学び、ゲーム、地域活動などは、人間ならではの思考力や共感力を鍛える土台になる。
- 周囲と知識を分かち合い、人を育て、コミュニティに貢献することで、良い影響を波及させられる。
- 時間の使い方を意図的に選び直すことが、AI時代のキャリアとチームワークの質を左右する。
ほんの1年前までは、AIツールは「あれば便利」くらいの存在だと見なされていた。しかし今や、AIは戦略的なパートナーとして台頭しつつある。Atlassianの新しい調査結果*1によれば、AIツールを日常的に使っているナレッジワーカー(知的労働者)の数は、2024年から2025年にかけて2倍に増え、そうした人たちは1日あたり1時間強の時間を節約しているという。
そうなると当然、次の問いが浮かぶ。この新たに生まれた時間を、いったい何に使うべきか。今回の調査で人気が高かった答えとしては、たとえば次のようなものがある。
- スキルアップやトレーニングに充てる
- ブレインストーミングや試作、あるいはサイドプロジェクトを立ち上げる
- ボトルネックを解消し、チームの足を引っ張っている非効率なプロセスを改善する
いずれも、AIで生まれた時間を投資する先としては申し分ない選択肢である。とはいえ、特定の能力をより深く生かせて、なおかつもっとワクワクできるような使い道もある。
AIが仕事の世界を劇的に変えつつあるとはいえ、創造性、論理的・分析的思考、問題解決力は依然として企業から強く求められているスキルであり*2、共感力や適応力といった特性も同様である。こうした背景を踏まえ、本稿では、AIによって生まれた時間を投資し、リーダーとして、そして頼れるチームメイトとしての存在感を高めていくための7つの方法を紹介する。
1. チームでのAI活用力を一段引き上げる
AIシステムは、利用できるデータの質と量に応じてしか役に立たない。そこでまずは、あなたのシステムが扱う情報の「量」と「質」を高めるための、いくつかの方法から始めてみたい。
- チームのドキュメントやConfluenceページを見直し、AIが自由にアクセスして内容を理解・推論できるよう、公開設定にできるものがないか確認する。
- 社内のナレッジベース全体に、より多くの文脈情報を追加できるよう、ナレッジのデジタル化をさらに進める方法を試してみる。たとえば、チームの会議でAIによる自動メモ取りを有効にしたり、ダイレクトメッセージではなく公開チャンネルで会話することをメンバーに促したりする。
- チームの目標を文書化し、そのうえでプロジェクト計画やタスクから、対応する目標へのリンクを張っておく。これによって、AIにとって有用なコンテキストが追加される。
あわせて、各プロジェクトにおいてAIが担う役割を明確に定義しておくとよい。データ分析をさせるのか、プロジェクトのロードマップを作らせるのか、アナウンス文のドラフトを書かせるのか。あらかじめAIの役割を考えておくことで、とくに新しい使い方を試すときに、より戦略的にAIを活用できるようになる。詳しくはアトラシアンのチームプレイブックを参照してほしい。
2. 何か一つでも「ここを良くしよう」という取り組みを立ち上げる
あなたが「こうなったらいいのに」と思っている変化を、自分からつくり出すチャンスだと捉えてほしい。たとえば、あまり使われていない会議室を自転車置き場に変えて、クルマに頼らない通勤を後押ししてみる。あるいは、チームのふりかえり(レトロスペクティブ)のやり方を見直し、マンネリを防ぎつつ、新しい気づきを引き出せるフォーマットを試してみるのもいいだろう。
さらに踏み込むなら、アトラシアンのShipIt Daysにならって、「タイガーチーム(tiger team)」を結成し、チーム横断のワークフローを抜本的に見直したり、長年持ち越されてきた改善要望を実現したりして、お客様を良い意味で驚かせ、喜ばせる取り組みにしてみてほしい。
3. 自分の成長に投資する
もちろん、取り戻した時間のすべてをこの使い方に充てるべきだと言うつもりはない。しかし、新しい趣味を始めることが、そのまま仕事上の成長につながる場合もある。たとえば、お菓子作りが好きなマーケターが、キッチンでの試行錯誤から得た学びを「失敗からの学び」「小さく試して改善する」といった形で言語化し、仕事のノウハウとして社内外に発信していけば、それ自体が専門性や発信力を高めるトレーニングになる。
また、海外のチームと仕事をしている人が、語学学習アプリでコツコツ勉強を続けるのも、単なる「お楽しみ」以上の意味を持つだろう。コミュニケーションの幅が広がるだけでなく、相手の文化や背景への理解も深まり、仕事の進め方にも良い影響が出てくる。
たとえそうした直接的なつながりがなかったとしても、新しい個人的なチャレンジは、次の課題に立ち向かうためのエネルギーを充電してくれる。仕事とは少し離れたところで夢中になれるものがあることで、結果的に仕事のパフォーマンスも上がっていくはずだ。
4. 周りの力を引き出す存在になる
キャリアの中盤以降に差しかかっているなら、後輩の相談に乗ったり育成に時間を割いたりすることを意識してみてほしい。同じ専門領域の後輩をコーチすることは、あなたが長年かけて磨いてきたコツや技術を受け継いでもらい、相手の時間とストレスを大きく減らしてあげる、すばらしい方法である。また、自分の専門外の若手にとっても、キャリアの築き方や「この会社でどう立ち回ればいいのか」を相談できる頼れる存在になれるだろう。
たとえ社会人になったばかりでも、あなたにはきっと共有できる知識がある。毎日のように使っているAIの時短テクニックについて、まだ詳しくない年上のメンバーに教える「リバースメンター(reverse mentor)」になってみるのもよい。さらに、自分のチームの仕事を他チームに深く理解してもらい、「どうすればもっと一緒にうまくやれるか」を一緒にブレインストーミングできるワークショップを開くことで、チーム間の関係性を強化することもできる。
5. 業界カンファレンスで登壇するトークを企画する
カンファレンスで登壇することは、人脈を広げたり専門的な話を深めたり、自社の評判を高めたり、行ったことのない土地を訪れたりできる、すばらしい機会である。また必須ではないものの、渡航費を会社が負担してくれるのが一般的なので、自分の費用で1〜2日だけ滞在を延長して、その街をゆっくり探索することもできる。ちょっとしたおまけ付きの特典だ。
6. ゲームプレイヤーのように考える力を身につける
状況を読み取り、取りうる選択肢を洗い出し、それぞれを見極めて最善の一手を選ぶ――そんな「瞬発力のある思考」は、仕事だけでなく、数独のようなロジックパズルやボードゲーム、チェスのような戦略ゲームでも鍛えることができる。
また、複数人でプレイするゲームは、ほかのプレイヤーの一手一手に応じて自分の戦略を変えていく必要があるため、変化への適応力を養うのにも役立つ。対象年齢が低いシンプルなゲームであっても、十分に分析力を育ててくれる。お昼休みにゲーム仲間を募って遊ぶ時間をつくってもいいし、午後の中休みに15〜20分ほど、一人でパズルやゲームに取り組む時間をとってみるのもよいだろう。
7. 地域コミュニティに貢献する活動に参加する
ボランティア活動のための有給休暇を福利厚生の一環として設ける企業は、年々増えている。年間の付与時間はおおむね20時間前後だが、多いところでは40時間に達する場合もある。この制度を使わない手はない。ふだんなら出会わないような人たちと一緒に活動できる、継続的なボランティアの機会を探してみてほしい。時間をかけて関わることで、新しい視点に触れたり、さまざまな人生経験を聞いたりするチャンスが生まれ、それらは創造的な思考や問題解決力を高めるうえでも役に立つ。何より、こうした形で社会に貢献すること自体が、純粋に気持ちのよいものでもある。

