アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのマイク・デ・ソシオ(Mike De Socio)が、職場で「フレネミー(友人のふりをした敵)」を作ることのリスクや対処の方策について説く。

本稿の要約を10秒で

  • 「フレネミー(Frenemy)」とは「友人(Friend)」と「敵(Enemy)」とを掛け合わせた造語。「友人のふりをする敵」を意味している。
  • フレネミーの中心を成すのは「競争心」「嫉妬心」「不信感」という3つの要素である。
  • 職場でフレネミーを作ること、自分自身がフレネミーになることは絶対に避けるべきである。

職場における「フレネミー」とは?

「フレネミー(Frenemy)」とは「フレンド(Friend)」と「敵(Enemy)」を掛け合わせた造語であり、日本では一般的に「友人のふりをした敵」、あるは「敵対的友人」とされている。このフレネミーがどんな人物かを定義した学者の一人に、米国チャールストン大学のコミュニケーション学教授(参考文書(英語))、ジェナ・アベッツ(Jenna Abetz/参考文書(英語))氏がいる。同氏の調査によれば、フレネミーは、外見上は友好的に見えるものの、心の内は「競争心」や「嫉妬心」「不信感」に満ち溢れており、彼らは多くの場合、状況的な結びつきや社会的つながりの中で出現するという。

また、人材のコーチングサービスを展開する米国キャリア ノマド(Career Nomad/参考文書(英語))社CEOのパトリス・リンド氏は、フレネミーを「羊の皮をかぶった狼のような存在」と表現する。つまり、フレネミーは親切な人のように振る舞うが、それは、心の裏側にあるネガティブな感情を覆い隠すための手段に過ぎないというわけだ。

アベッツ氏によるとフレネミーには、先に触れた「競争心」「嫉妬心」「不信感」という 3つの要素があるという。

  • 競争心:アベッツ氏の調査によると、フレネミーは相手を仕事上の「ライバル」、ないしは「打ち負かすべき相手」、あるいは「自分との比較対象」と見ているという。
  • 嫉妬心:アベッツ氏の調査によると、フレネミーが嫉妬する対象はさまざまだが、その嫉妬心はフレネミーが抱える不安の裏返しでもあるという。
  • 不信感:アベッツ氏の調査に参加した人々は「フレネミーとの関係は、根本的に、かつ一貫して信頼性に欠けるものである」としている。

これら3 つの要素は、フレネミーの中心を成すものだ。例えば、あなたにも、職場の中で「親しい友人でも敵でもない、複雑な感情を抱いている同僚」がいるかもしれない。ただし、その相手はフレネミーではない可能性が高い。アベッツ氏によれば、フレネミーは主に嫉妬心や不信感を露わにするので、フレネミーとの関係はより特殊なものになるという。

加えて、上で触れたとおり、フレネミーは「状況的な結びつきや社会的つながり」の中で生まれる。ゆえに、職場はフレネミーの温床となりやすい。つまり、会社組織やオフィスといった社会的ネットワークの中でフレネミーとの交流を余儀なくされることが多いのである。

では、職場の中で、フレネミーとの交流はどのようにして生まれるのか。

例えば、あなたが職場で毎日会う、あるいはほぼ毎日会う同僚がいるとしよう。また、その人は親しみやすく、出会うたびに雑談を交わしたりしているとする。ところが、付き合いを重ねる中で、その人に態度に、いわゆる「友人」とは異なる「不穏さ」を感じたとしよう。仮にそうならば、その人はフレネミーである可能性が高い。

この点について、アベッツ氏は「同僚がフレネミーであるならば、皮肉っぽい褒め言葉をあなたに投じたり、微妙な妨害行為をしていたりするはずです。そのことに気づいたあなたは、その同僚と周囲からの注目度やリソースの確保などの面で争う立場にあることに気づくはずです。そして、そのフ

フレネミーを作ってはならない理由

アベッツ氏によれば、職場のようにヒエラルキーがあり、リソースの奪い合いが発生しやすい場所は「フレネミーを育む肥沃な土壌」となりうるという。しかも、社会の生き物である人間は、職場でも人とのつながりを強く求めがちだ。ゆえに、フレネミーとの付き合いが魅力的に思えてしまうことが多い。

ただし、それが魅力的に思えても、職場でフレネミーを作らないよう心がけるべきである。というのも、フレネミーがもたらす組織文化は「心理的安全性」(参考文書(英語))よりも「表面的な調和」を優先するものだからだ。この点について、リンド氏は次のように述べている。

「企業は、外部の人たちが心地良いと感じる組織文化を良質な文化であると勘違いすることが多くあります。この勘違いは『外見上の調和』を優先させようとする考えや行動につながり、それがフレネミーの横行を許す結果になります。ただし、フレネミーの横行は、組織の成長や発展、あるいはイノベーションに不可欠な心理的安全性や『健全な対立』(参考文書(英語))を阻害するものでしかありません。言い換えれば、フレネミーたちは、企業で働く人々が互いに敬意を持ちながら自分とは異なる視点、意見を受け入れ、それぞれの欠点も認め合うといった健全な組織文化を構築する機会を奪う存在なのです」

しかも、フレネミーとの付き合いは、自分の貴重な時間やエネルギーを無駄に費やすことでもある。実際、自分に悪意をもった人と「偽りの友情」を育むことに意味はなく、そのようなことに時間とエネルギーを使うのは、職務における目標の達成から、自身を遠ざける行為といえる。

自分がフレネミーにならないための方策

ところで、フレネミーとの付き合いを続けていると、自分が誰かのフレネミーになってしまうリスクもある。リンド氏とアベッツ氏は、そうならないための方策をいくつか提示している。その方策とは以下のとおりだ。

  • うわさ話を避ける:フレネミーによる他者のうわさ話に乗ったり、フレネミーのうわさ話をしたりするのは避けるべきである。それを避けることで、自分がフレネミーになってしまうリスクが引き下げられる。
  • 自分の成果を記録する:フレネミーにならないためには、同僚に対する競争心を抑えることが必要とされる。そのためには、同僚との競争ではなく自身の優先事項に集中して、「自分の成果を記録として残すこと」(参考文書(英語))が大切だ。リンド氏は「大切なのは、自分の成功を自身で評価するための環境づくりです。これによって他者に対する競争心を抑えられるようになります」と説く。
  • 境界線を引く:自分のフレネミー化を避けるには、フレネミーに対して一定の距離を保つことが必要とされる。それには、職場での対人関係について「明確な境界線」(参考文書(英語)) を引き、交流を制限することが効果的である。
  • 個人的な情報の共有を控える:この点について、アベッツ氏は「フレネミーと共有する個人的な情報を最小限に抑えることで、フレネミーとの対立を和らげることが可能になります」と指摘している。
  • 前向きな人間関係の構築にフォーカスする:フレネミーとの交流を制限した際には、それによって生まれた時間とエネルギーのゆとりを、職場における前向きな人間関係の構築に振り向けるべきである。アベッツ氏は「フレネミーではない人たちの交流を深めることは、あなたに向けられたフレネミーのネガティブな感情の緩衝材となります」と説く。

健全な人間関係を築くコツ

フレネミーとの交流を断ち切る際には、それに代わる仕事上の適切な人間関係とは何かを理解しておくことも重要である。これに関して、リンド氏は「職場における人間関係を築く際には、すべての同僚を親友、あるいは友人にする必要はないという点に留意すべきです」と述べ、こう続ける。

「職場での人間関係は、仕事を遂行するために必要な範囲で築くだけで良いといえます。もちろん、親しみやすい態度で周囲に接することは大切ですが、同僚たちと必要以上に親しくなる必要はなく、それよりも互いに尊重し、協力し合える仲間を作ることのほうが大切です」

では、そうした人間関係は、どのようにすれば構築できるのか。それに向けた取り組みとしては、以下のような事柄が挙げられる。

  • プロジェクトの共通目標にフォーカスする:自分と同僚の双方にメリットのある共通の目標にフォーカスを当てる。これにより、同僚たち(ないしは、フレネミー)と競争したいという衝動を抑えることが可能になる。
  • 自分の意見を率直に伝える:調和を重視するあまり、自分を偽る態度を取り続け、相手の不信感を募らせないようにする。同僚たちからの信頼を得るうえで重要なのは、自分の期待や意見を誠実に、かつ、積極的に、そして率直に相手に伝えることである(参考文書(英語))。
  • 対立を解消するスキルを磨く参考文書(英語)相手の話に全神経を集中して耳を傾ける「アクティブリスニング」(参考文書)や、相手のことを思いやり、共感する「エンパシー」(参考文書)をスキルとして身につけるようにする。これにより、同僚たちとの意見の相違を乗り越えることが容易になる。
  • 大切なことを重視する:リンド氏は「職場では、無理に友情を育もうとするよりも、達成すべき事柄に集中することのほうが大切であり、それを優先すべきです」としている。

「嘘」や「偽り」から抜け出すために

フレネミーとの交流を避ける大きな目的は、仕事上の「偽りの友情」が実際の対立を覆い隠してしまうリスクを回避することにある。

職場において、さまざまな人と交流することは大切だ。しかし、それをフレネミーとの交流を続けるいいわけにしてはならない。職場における人付き合いで重要なことは、人間関係の境界線を保ちながら、誠実さやエンパシーをもって周囲と接することなのである。そうした人との付き合い方について、リンド氏は次のような説明を加える。

「例えば、月曜日の朝に同僚から『週末はどうだった?』と聞かれることがよくあるはずです。そんなとき、その同僚とあまり深く付き合いたくないと思っているなら、詳細を省きながら、週末における出来事の要点を伝えるだけで良いといえます。また仮に、週末が最悪だったとしても『大変だったけど、新しい週が始まったので大丈夫』と答え、話題を他に切り替えることをお勧めします。さらに、相手が過剰にプライベートの話をし出したときには、その話に興味がないことを率直に伝えて、対話を早々に切り上げるべきです」

このように、仕事上の人間関係を適正化するうえでは、フレネミーを含むすべての同僚に対して正直であることが必要とされる。リンド氏は「組織内では嘘や偽りは不要です。それらを排除することが、フレネミーとの関係を断ち切るうえでも、職場の健全性を保つうえでも重要なのです」と指摘している。

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