アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。作家のエイミー・リグビー(Amy Rigby)が、人事やキャリア開発の専門家のアドバイスを参考にしながら、新入社員が新しい職場で最高のスタートを切るためのTIPSを紹介する。

本稿の要約を10秒で

  • 新入社員は、新しい職場でのスタートを成功させるべく最大限の努力を払う必要がある。
  • 新しい職場では、良好な第一印象を周囲に与えることが大切であり、それがのちの成功にもつながる。
  • 本稿では、専門家の意見を参考にしながら、新入社員が職場で最高のスタートを切るための10のTIPSを紹介する。

右も左もわからず途方に暮れる

新しい職場での初日、何もわからないまま出社する人はおそらく少数派だろう。ただ、某社に入社した私は、まさにその少数派だった。

それまで住んでいたところから2,000マイル離れた、知り合いもいない街に引っ越してきた私は、右も左もわらない状態で新しい職場に足を踏み入れた。職場でのドレスコードもわからなければ、昼食休憩をどこでとって良いのかもわからない。それでも、周囲に世間知らずと思われたくないので、あまり質問もできない。結果として、ただただ途方に暮れることになった。

このような新入社員が出ないよう、企業の人事部は「オンボーディングプロセス」(参考文書(英語))をきちんと整備しておく必要がある。また、新人社員を受け入れるマネージャーたちは、新人が歓迎されていると感じられるよう力を注ぐべきである(参考文書(英語))。

とはいえ、企業の中には、人事の専任組織を持たないところがある。また、すべてのマネージャーが新入社員の受け入れ体制の整備に協力的であるわけではない。したがって、働く側も、新しい職場でのキャリアのスタートを成功させるべく最大限の努力を払わなければならない。

そこで私は今回、人事の専門家やキャリアコーチ、企業経営層などから話を聞き、新入社員(新卒入社か転職組かによらず、すべての新入社員)が新しい職場で正しいスタートを切るためのアドバイスを入手することにした。

良好な第一印象が長期的な成功につながる

新入社員にとって、新しい職場の人たちに良好な第一印象を与えることは大切だ。また同様に、新入社員を受け入れる側(=企業側)も、新入社員に好印象を与えなければならない。そしてお互いの第一印象は、新入社員が働き始めてから最初の一週間、ないしは数カ月で決定づけられ、その良否が新入社員の長期的なキャリア形成にも影響を及ぼすことになる。実際、市場には人の第一印象の大切さを示す調査データがさまざまにある。例えば、以下のようなデータだ。

  • 米国の人材会社ロバート・ハーフ社の2016年の調査(参考文書(英語))によると、CFOの54%は新入社員に3カ月以内に自身の価値を証明するよう求め、9%は1カ月以内にそれを行うよう求めている。
  • 世界11カ国9,000人の求職者を対象としたロバート・ハーフ社の別調査(参考文書(英語))によると、ワーカーの91%は、入社後1カ月以内にその会社で働き続けるか、すぐに辞めるかを決定するという。退社の決定に影響を与える要素としては「マネジメントの不手際」「求人広告の内容と実際の業務内容との相違」「企業文化への適応の失敗」「入社時における企業側の不十分な対応」などが挙げられている。

他者に対する第一印象は、人の心に根強く残り、変化しにくいことも科学的に証明されている。例えば、カナダにあるウェスタンオンタリオ大学の研究(参考文書(英語))によれば、自分に対する周囲の印象を変容させるべく、何らかの自己アピールをしたとしても、周囲はなかなか最初の印象(第一印象)を捨て去ろうとしないという。より具体的には、私たちは他者に対する見方のベースを第一印象に置き、その印象に反するような行動を他者がとったとしても、それを「特定の状況が生んだ例外的なケース」と見なす傾向が強いというのである。

こうした人の傾向について、ウェスタンオンタリオ大学のレポートは次のように表現している。

「例えば、職場で新しい同僚ができて、その人に対する第一印象が非常に悪かったとしよう。そして、その最初の出会いから数週間後に、同僚とパーティーで偶然再会し、実はなかなか親しみやすい人間であり、自分の最初の印象に間違いがあったことに気づいたとする。これにより、その同僚に対するあなたの直感的なイメージは、パーティーと似た状況下では新しい経験による影響を受ける。だが、それ以外の状況においては第一印象が依然として支配的であり続ける」

この傾向は、新入社員にとって喜ばしいものではない。ただし、良い点もある。それは、たとえ人づき合いの出だしでミスがあり、悪い印象を相手に与えてしまったとしても、異なる複数の状況で相手の印象を改善する行動をとり続ければ、いつかは、自分に対する相手の見方を全面的に変容させられる可能性があることである。

以下では、以上の内容を踏まえながら、新入社員が職場で仕事を始めるうえで役に立つ10のTIPSを紹介したい。

TIPS① 勤務開始の1週間前:勤務先の下調べを行う

人事や働き方の専門家たちは、初出勤前に、その会社について下調べをしておくよう推奨している。したがって、入社する会社やその従業員によるSNS投稿などをチェックして、オフィスの雰囲気や適切な服装について確認をしておくと良いだろう。また、電力業界に特化した米国の人材紹介会社エナジスト(The Energists/参考文書(英語))の会長兼CEOであるジョン・ヒル(Jon Hill)氏はこうも提案する。

「多くの企業では、採用担当者が勤務前に確認しておくべき事項をリスト化して新入社員に提供してくれます。ただし、会社の中には、そうしたリストを提供しないところもあります。その場合には、勤務開始の数日前に会社に連絡をとり、初日に持参すべきもの、あるいは準備しておくべき事項を確認するようにしてください。加えて、初出勤前に『従業員ハンドブック』を入手して事前に目を通し、初日に確認したい事項をまとめておくのも良いでしょう」

加えて中途採用の場合、役職や職務に応じて、会社の競合相手について調べておいたり、仕事で使用するソフトウェアを試したり、同僚の「LinkedIn」プロフィールを調べたりするのも有効である。

TIPS② 勤務開始の1週間前:事前にテストできることはすべて試しておく

オフィス勤務の場合は「通勤経路」を、在宅勤務の場合は「インターネット接続」を実際に試しておく。このほか、仕事に使うコンピューターやソフトウェア類、機器類がきちんと動作するかどうかも点検しておく。そうすることで、勤務初日を、余裕をもって過ごすことが可能になる。

TIPS③ 勤務開始の3日前:マネージャーに連絡する

新しい職場で、あなたが配属されたチームのマネージャーは、あなたが成功することを望んでいる。ゆえに、初出勤の3日ぐらい前にはメールやチャットを通じてマネージャーとつながり、いくつかの事項について確認をとるべきである。

この点に関して、キャリア開発のソリューションプロバイダー、Intoo USA(参考文書(英語))の副社長であるクリスタ・ユエンガー(Christa Juenger)氏は、マネージャーへの連絡時に次のような事項を確認するよう勧める。

  • オフィス(ないしは、在宅勤務)では通常、どのような服装で仕事をしているか
  • 勤務初日までに知っておいたほうが良いことは何かあるか
  • 勤務の際に持参すべき何か特別なものはあるか
  • 勤務開始の最初の1週間で、仕事上、自分に何を期待するか

「これらの事項の確認をとることは、自分の前向きな姿勢と入社の準備ができていることをマネージャーに示すものでもあります」とユエンガー氏は指摘し「この行動は非常に良い印象をマネージャーに与えるとともに『自分は可能な限り最高のスタートを切り、初日から効果的に働きたい』という意欲もアピールできます」と続ける。

TIPS④ 勤務開始の前日:勤務初日のスケジュールを最終確認する

勤務開始の前日には、初日のスケジュールについて最終確認をとるのが適切である。事前に入手している(であろう)職務内容には、出社時間や昼休みがいつなのかといった基本情報が記載されているはずである。ただ、それで勤務初日のスケジュールについて把握していると思い込んではならない。職務内容にある勤務時間の記載には重要な情報が抜けている可能性があるからだ。

その点に関して、ポーランドに本拠地を置くソフトウェア開発会社フューチャープロセシング(Future Processing/参考文書(英語))のシニアアソシエイト、ジャック・ズムジンスキ(Jack Zmudzinski)氏は、次のように自身の経験を述べる。

「以前、ある仕事に就いたとき、求人情報に書かれていたとおり午前9時に出社しました。ところが、私がオフィスに到着したときには、チームの全員がすでにそこにいて、朝食を食べながら雑談をしていました。それが日常であるとは誰も教えてくれなかったので、午前9時ジャストに出社した私を誰も責めたりしませんでしたが、心地の悪さを感じました」

このような事態を避けるためにも「本当は何時に出社する必要があるのか」「通常、皆は何時ごろ退社するのか」「ランチ休憩はいつ、どのくらいの時間を取るのか」など、日ごろの勤務スケジュールや働き方についての確認を怠ってはならない。

TIPS⑤ 勤務初日:チームに自己を紹介する

勤務の初日、あなたがオフィス(ないしはオンライン上のワークスペース)に登場したとき、チームのメンバーがそれに驚くようなことがあってはならない。通常は、人事の担当者や直属のマネージャーが、チームにあなたを紹介する。ただし、それが行われなかった場合には、自分から率先して自己紹介をしなければならない。

また、あなたが誰で何をする人かをマネージャーに紹介してもらうべく、事前にメッセージを送っておくのも良いだろう。

TIPS⑥ 勤務初日:定刻よりも早めに出勤する

勤務初日や勤務開始後1週間のうちに遅刻をしてしまうと、かなり悪い印象を周囲に与えるリスクがある。ゆえに初日の出勤時には、渋滞や電車の遅れ、あるいは道に迷うことなどを考慮し、かなり早めにオフィスに到着できるよう計画を立てておくことが大切である。

この点について、英国の人材会社フランク リクルートメント グループ(Frank Recruitment Group/参考文書(英語))の社長であるゾーイ・モリス(Zoë Morris)氏は、定刻よりも30分から40分早く出勤することを勧めている。

「十分な時間的余裕を持ってオフィスに向かえば、多少の渋滞や電車の遅延があったとしても慌てることなく定時にはオフィスに到着できます。また、通勤途中に何も起きなかった場合には、出勤前にコーヒーを飲んで30分程度リラックスするチャンスも得られます。つまり、勤務初日に通常よりも30分から40分早く出勤することは、初日に遅刻せず、かつ心にゆとりも持てる最善策なのです」(モリス氏)。

TIPS⑦ 勤務開始後1週間:仲間を見つける

一部の企業は、新入社員全員に「オンボーディングバディ(指導役)」や「メンター」を割り当てている。とはいえ、そのようなすばらしい制度を採用している企業は多くなく、大抵の新入社員は、自助努力によって『仲間』となりえる人を探し当てなければならない。その際に役に立つのがLinkedInなどのSNSの情報だ。SNSの情報は、仕事仲間となりうる人物を見つけ、その人の興味・関心事を知り、会話のきっかけをつくるうえでかなり有効である。

勤務を始めてすぐのころは、誰かから昼食に誘われるか否かでやきもきするのが通常だ。ただし、実のところ、ランチに誘われるのを待つのではなく、自分から誰かをランチに誘ったほうが良い。

「初日から皆のデスクに押しかけてハグや握手を求める必要はありません。とはいえ、他者をよせつけないような、気取った態度を取ることも避けるべきです」と、欧米を中心に活躍するヘッドハンティング会社イントリンシック エグゼクティブ サーチ(Intrinsic Executive Search/参考文書(英語))のマネージングディレクター、ポール・フレンチ氏は言う。要するに、初日から同僚に親しみを持つことが大切であるというわけだ。

加えてフレンチ氏は、勤務初日にチームメイトをランチに誘うことを勧める。同氏は「チームメイトをランチに誘う行動は、チームの一員になれた自分の喜びと、皆と素晴らしい関係を築こうとしている意志を示す有効な手段です」

また、在宅勤務でチームに参加する場合には、新しいチームメイトとバーチャルなコーヒーチャットの時間を設定し、各人と1 on 1で対話する機会を持つようにすると良い。これは、リモートにいるチームメイトとの信頼関係を早期に築くための有効な手段だ(参考文書(英語))。

TIPS⑧ 勤務開始後1週間:マネージャーと1 on 1ミーティングを行う

マイクロソフトでは、約3,000人に上る新入社員の初期行動を調査・分析し、結果として、入社後1週間以内に上司と1 on 1ミーティングを行った新入社員は、以下に示す3つのメリットを得ていることが判明したという(参考文書(英語))。

①社内ネットワークが広がり、会社への帰属意識が高まり、長く勤められる可能性が高まる。

②より良いミーティングができる。

③チームとの共同作業に多くの時間を費やすことができる。
こうしたメリットを得るためにも入社後最初の1週間は、上司と対話する時間をしっかりと確保することが大切であり、長い目で見ても、そうすることが得策といえる。

TIPS⑨ 勤務開始から毎日:質問することを恐れない

新入社員(特に中途採用の新入社員)は「自分が有能で自信があるように見せたい」、あるいは「自分の価値を証明したい」と思うものだ。ただし、だからといって自分のわからないことを周囲に尋ねるのを躊躇してはならず、特に在宅勤務の場合は、質問をすることを恐れてはならない。

この点について、カナダの高齢者施設プロバイダー、アミカ シニア ライフスタイル(Amica Senior Lifestyles/参考文書(英語))の人事リーダーであるトニー・ジャコビー氏は「在宅勤務(リモートワーク)中心で働いている人はよく、自分の業務内容についてマネージャーに頻繁に質問をすると『マネージャーから、しつこい性格と思われるのではないか』『マネージャーの仕事の邪魔になるのではないか』と考えがちです。ただし実際には、自分の業務遂行能力を高めようとする部下の質問に対し、マネージャーが苛立つことは非常に稀です」と指摘する。

また、ジャコブ氏は、リモートワーカーに対し、チャットツールなどを通じて、マネージャーへのリクエストを具体的に、かつ控え目に伝えることを提案している。「そのリスクエストは、例えば『●●●についてお聞きしたいので、2分ほどお時間をいただけますか』といったシンプルなもので構いません」(ジャコブ氏)。

さらに、米国ハーバード大学の研究(参考文書(英語))によると、同僚と親しくなるための会話を行う場合には、数多くの質問をするのが好ましいという。特に「フォローアップの質問」をすることで、相手に好かれる可能性が高められるようだ。

ここで言うフォローアップの質問とは、会話の相手が言及したトピックについて、追加での説明を求める質問を指している。以下はその一例である。

【フォローアップ質問の例】

自分:あなたはいま、何の仕事を担当しているのですか。
相手:コンテンツマーケティングのチームを率いています。
自分:それは素晴らしい! 私は、うちの会社のブログ記事を読むのが大好きなんです。記事のアイデアはどのようにして思いつくのですか。

なお、ここでの相手の答えに対する最悪の切り返しは、話題を完全に変えてしまう「フルスイッチの質問」である。その例は以下のとおりだ。

自分:あなたはいま、何の仕事を担当しているのですか。
相手:コンテンツマーケティングのチームを率いています。
自分:それは素晴らしい! ところで、あなたの趣味は何ですか。

なお、ハーバード大学の研究によると、上記のようなフルスイッチの質問は、相手に最悪の印象を与えるようだ。というのも、フルスイッチの質問は、相手に対して「話題を替えたい」「話を聞いていなかった」というシグナルを送るものだからだ。

TIPS⑩ 勤務開始から毎日: セルフケアを怠らない

キャリアコーチのレスリー・スミス(Lesli Smith)氏(参考文書(英語))は「業務経験の多寡にかかわらず、入社から最初の1週間は緊張し、ある程度のストレスを感じるはずです。そのストレスを感じたら、睡眠や水分補給、栄養摂取など、セルフケアの基本に立ち返るべきです」と指摘する。

さらに、スミス氏は、瞑想、日記、呼吸法、運動、あるいは自分が感謝していることをリストアップするなど、心を落ち着かせるうえで役に立つことは何でも試してみることを勧めている。

とにかくリラックス!彼らはすでにあなたを気に入っている

入社前に緊張するのは当たり前のことである。ただし、忘れないでいただきたいのは、その会社は、あなたを自社に適した人材と判断したから採用したという事実だ。したがって、以上に示したTIPSを参考に行動すれば、あなたに対する会社の判断が正しかったことを証明できるはずである。

それでも、入社後最初の1週間についてあれやこれやと思い悩み、眠れない夜を過ごしているなら、次に示すアドバイスを心に留めておくことをお勧めする。これは、自分の会社で頻繁に人材を採用しているマネージャー兼ソリューションアーキテクトのクルディープ・アンドハーレ(Kuldeep Andhare)氏のアドバイスである。

「あなたが入社する会社の採用担当者は、間違いなくあなたを気に入っています。そして採用担当者が気に入っているのは、あなたの才能や経験だけではありません。それ以上の何かなのです。」

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