2024年6月7日に催されたアトラシアンのイベント「Atlassian TEAM TOUR Tokyo」では、「Jira」のプロダクトマネージャー(Principal Product Manager)、ターニャ・マッダレーナが「世界一流エンジニアリング環境の整え方」と題した講演を行った。本公演でマッダレーナは、開発者体験の向上を目的とした AI機能によって業務遂行上の摩擦や所要時間を低減する「世界一流のエンジニアリング環境」を整えるための方法について紹介した。
画像: Atlassian Principal Product Manager, Jira ターニャ・ マッダレーナ

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Principal Product Manager, Jira
ターニャ・ マッダレーナ

良質な開発者体験がビジネスの成功へとつながる

今回の講演でマッダレーナはまず、今日におけるソフトウェア開発の主要なトレンドに言及した。

マッダレーナによれば、ソフトウェア開発の主要なトレンドは「AIをいかに活用するか」「開発における摩擦をどう減らすか」「開発をチームスポーツへといかに転換するか」という3つに集約できるという。

「いまの時代、ソフトウェア開発にAIを活かす方法を学ばなければ、開発のスピードで他に遅れをとることになるのは確実です。ゆえに、AIを使ってソフトウェア開発のワークフローを再創造しなければなりません」

「また、多くのソフトウェア開発者は、生産性の向上を阻む『摩擦』と対峙しています。例えば、ある調査によれば、開発者の4分の1以上が毎日1時間以上を課題解決の施策のリサーチに費やしているといいます。これは1週間の仕事の10%以上に当たります。開発のあらゆる側面でそうした摩擦を減らしていかなければ、ソフトウェアのイノベーションを加速させることは困難です」

「さらに企業は、ソフトウェア開発を、他部門のチームを巻き込んだ『チームスポーツ』に変えていくことが大切です」

こうしたAIの有効活用や摩擦の低減、そしてチームスポーツ化は、良質な「開発者体験」へとつながる取り組みであるという。また、良質な開発者体験は、最終的に企業の発展・成功へとつながっていくとマッダレーナは説く。

「今日、ほぼすべての企業がソフトウェアカンパニーとなり、ソフトウェアがあらゆる商品(製品、サービス)の中心を成しています。ゆえに、優れた開発者体験を提供することは、ソフトウェア開発チームにとっても、会社のビジネスの成功やさらなる成長を実現するうえでも重要な取り組みといえます」

より良い開発者体験を実現するためのアトラシアンのソリューション

良質な開発者体験を実現するための3つの取り組みを改めてまとめると以下のようになる。

  1. AIでソフトウェア開発のワークフローを再創造する
  2. 開発のあらゆる側面で摩擦をなくす
  3. ソフトウェア開発をチームスポーツ化する

マッダレーナは、これらの取り組みを推進するうえでアトラシアンの製品がいかに有効かを、仮想事例を交えながら提示した。

この仮想事例は「スタッキーズ」という積み重ね式の弁当箱をインターネット上の直販サイトで販売する会社の例だ。事例に登場するアトラシアンの主な製品は以下のとおりだ。

  • Loom AI:アトラシアンの非同期型ビデオコミュニケーンツール「Loom」に搭載されているAI
  • Jira:組織内のあらゆるチームが連携しながら課題の管理、プロジェクトを管理が行えるツール
  • Bitbucket:開発チーム用に構築された Git ベースのコードホスティング/コラボレーションツール
  • Compass:分散型アーキテクチャにおけるソフトウェアコンポーネントの状態を可視化して開発チームのコラボレーションを効率化させるツール
  • Jira Product Discovery:製品担当チームが製品のアイデアの優先順位付けをし、ロードマップをステークホルダーに共有することで製品の目的地をしめすためのツール

仮想事例は、スタッキーズのプロダクトマネージャー(仮名:ブルック)が、スタッキーズの売上増進策として、顧客が自分の好きなNBAチームのロゴを弁当箱に付与できるようにするアイデアを想起したところから始まる。

そのプロダクトマネージャーは、自分のアイデアを開発チームやデザインチーム、マーケティングチームと共有すべく、Loomを使いアイデアを説明するビデオを作成、投稿した。

画像: 投稿されたLoomビデオのイメージ

投稿されたLoomビデオのイメージ

「このときLoom AIを使うと、ビデオが自動的に最適化されます。また、ビデオ内容の要約が自動的に作成され、Jiraで管理できる課題として整理されます」

画像: Loom AIの働きにより、ビデオの内容が自動でサマライズされ、課題化される

Loom AIの働きにより、ビデオの内容が自動でサマライズされ、課題化される

LoomとJiraは連携して機能し、JiraにはLoom AIが生成したビデオの要約が課題として取り込まれる。

JiraのAIは、課題に関連したリソースへのリンク(Loomビデオへのリンクなど)を自動で作成するほか、課題を開発上の目的やタスクへと自動的にブレークダウンする。

画像: JiraのAIが課題を目的やタスクへと自動的にブレークダウンする

JiraのAIが課題を目的やタスクへと自動的にブレークダウンする

「こうした一連のAI処理により、ブルックのようなプロダクトマネージャーは、デザインチームや開発チームとのやり取りを大幅に減らすことが可能になります」(マッダレーナ)

一方、Jiraを通じてブルックからアイデア(=課題)を知らされた開発チームは、JiraのAIが自動的にブレークダウンしたタスクをチェックする。

「そのとき、タスクの中に不明な用語が含まれていても、AIの助けを借りて簡単に定義することが可能です」(マッダレーナ)

こうして自分たち成すべきことを把握した開発チームは開発の実作業に入る。

「このとき、課題解決のためのタスクの1つとして、開発メンバーの1人が、直販サイトの改変に乗り出したとします。その際には、Jiraからコンテキストを取り込み、課題を解決するための実装コードを提案してくれる『AIコードアシスタント』が有効に機能します」

画像: Jiraと連携する「AIコードアシスタント」は開発者との対話を通じて実装コードを提案してくれる

Jiraと連携する「AIコードアシスタント」は開発者との対話を通じて実装コードを提案してくれる

「コーディングを終えた開発者は、Bitbucketを使いレビュアーに対する評価の依頼(プルリクエスト:PR)を自動で生成することもできます。さらに開発者は、次に自分が成すべき作業をJiraのAIに提案してもらうことも可能です」(マッダレーナ)

開発タスクの効率化・自動化に向けたビジョン

マッダレーナは今回、ソフトウェア開発の一層の効率化・自動化に向けたアトラシアンのビジョンも示す。

「私たちが目指しているのは、JiraのAIエージェントが、コードを自動でレビューして改善案を提案したり、提案を受け入れた開発者の判断のもとでコードを自動で生成してPRの処理を自動で実行したりする世界です。これにより、開発チームがレビューに費やしてきた時間を大幅に減らすことができます。加えて、課題とコードとを照合してレビューを行ったり、最終的にコードを生成してテストし、デプロイしたりする作業も、AIエージェントの力で大幅に効率化したいと考えています」(マッダレーナ)

ソフトウェア開発の作業を進めていくうえでは、コンポーネントの品質と健全性を良好に保つ必要もある。そのために必要な作業を効率化・自動化するのがCompassのAIだ。

「コンポーネントのテストカバレッジに問題があったり、セキュリティ上の脆弱性があったりした場合には、それを修正しなければなりません。CompassのAIを使えば、そうした修正の作業を自動化することが可能になります」(マッダレーナ)

画像: 開発タスクの効率化・自動化に向けたビジョン

Compassでソフトウェア開発における摩擦をなくす

一方、ソフトウェア開発における摩擦を低減するツールとして有効に使えるのが、Compassとなる。

「Compassは、開発チームが必要とする情報を包括的に提供するポータルといえ、この製品によってあらゆるサービス、システムが追跡され、状態が可視化されます。これにより、ソフトウェアの健全性の向上やエンジニアリングの標準化が促進されます。加えてCompassには開発者体験を可視化する機能も備わっています」(マッダレーナ)

画像: Compassにおける開発者体験の可視化画面

Compassにおける開発者体験の可視化画面

今日における開発チームの多くは100~数千のソフトウェアコンポーネントを所有しており、どのコンポーネントに注意を払うべきかを適切に判断することが困難になっている。Compassを使うことで、あらゆるコンポーネントの健全性がスコアカードによって可視化され、開発チームはどのコンポーネントに注目を払うべきかが即座に判断できるようになる。

「さらに今日では、日々の業務の中で数千のマイクロサービスに扱わなければならない開発者も増えています。そうした開発者は多数のAPIのドキュメントを常に最新の状態に保たなければならず、その業務負担も相当大きくなっています。アトラシアンでは、Compassと先ごろ買収した『optic』とを統合し、そうしたAPIの管理作業を自動化できるようにしました。具体的には、Compassとopticとの連携により、APIに対するすべての変更が自動的に検出され、情報が更新されるようになったのです。また、APIの情報をCompassのスコアカードと連携させ、ドキュメントの正確性やカバレッジを測定して可視化し、APIに起因したインシデントを未然に防ぐことも可能になりました」(マッダレーナ)

Compassでは、インシデント発生時の「オンコールスケジュール」「エスカレーションポリシー」も確認でき、開発者と運用チームをつなぐ架け橋としても有効に機能する。

画像: Compassにおけるアラートのエスカレーションポリシーの確認画面

Compassにおけるアラートのエスカレーションポリシーの確認画面

ソフトウェア開発のチームスポーツ化を支えるJira Product Discovery

以上のとおり、AIの機能を備えたJiraやCompassによってソフトウェア開発の生産性とスピードは大幅に高められる。ただし、開発のスピードがいくら上がっても、それが間違った方向に進めばすべての作業が無駄になる。だからこそ、ソフトウェア開発のチームスポーツ化が必要とされ、開発チームは製品担当チームやマーケティングチームなどと目的を共有し、目線を合わせながら開発を進めていかなければならない。

そうした開発のチームスポーツ化を支える製品として、マッダレーナが紹介したのがJiraProduct Discoveryだ。

「Jira Product Discoveryを使うことで、製品担当チームはアイデアを整理して優先順位をつけ、プロダクトのロードマップを設定し、ステークホルダーたちの目標・目的との整合性をとることが容易になります。また、Jira Product Discoveryを通じて、開発チームとつながることで、開発チームを成功に導けるようにもなります」(マッダレーナ)

「繰り返すようですが、ソフトウェアの開発力が、企業競争力の源泉となりつつあります。その活力の強化に向けて、AIの力をフルに活用したいとお考えの方は、アトラシアンに一度ご相談ください。我々のソリューションであれば、お客様によるソフトウェア
開発のあり方を進化させられると確信しています」(マッダレーナ)

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