2024年6月7日、チームワークの革新について語り合うアトラシアンの年次イベント「Atlassian TEAM TOUR Tokyo」が催され、アトラシアンのプロダクトヘッド、ジョシュ・デヴェニーがオープニングキーノート(開幕基調講演)を行った。本講演内容のエッセンスを「前編」「後編」の2つに分けて紹介する。本稿はその後編として「Atlassian Cloud」と、新しいAI製品「Rovo」に関するデヴェニーの解説を中心にレポートする。
画像: Atlassian Head of Product, AI, Agile & DevOps ジョシュ・デヴェニー

Atlassian
Head of Product, AI, Agile & DevOps
ジョシュ・デヴェニー

AIによる進化とセキュリティの強化が加速するAtlassian Cloud

デヴェニーは講演の終盤でAtlassian Cloudと、本プラットフォームの新しい機能を詳しく紹介した。

Atlassian Cloudは「エンタープライズインフラストラクチャ」「TEAMWORK GRAPH」「エクスペリエンス」という3つのレイアから成るプラットフォームだ。

画像: AIによる進化とセキュリティの強化が加速するAtlassian Cloud

このうちエンタープライズインフラストラクチャは、クラウドプラットフォームやその上で展開されるアトラシアン製品の拡張性、パフォーマンス、信頼性、コンプライアンス性を担保するものだ。

「エンタープライズインフラストラクチャのレイアでは、特にセキュリティの強化に注力してきました。2018年にはアイデンティティ&アクセス管理のサービス『Atlassian Access』をリリースし、2023年には脅威の検出と対応をサポートする『Atlassian Beacon』の早期アクセスプログラムを始動。そして最近では、Atlassian AccessとAtlassian Beaconの機能を踏襲し、クラウド環境を包括的に保護するセキュリティ製品として『Atlassian Guard』をローンチしました。同製品のプレミアム版ではアイデンティティ管理やユーザー管理、シングルサインオン(SSO)、2要素認証などの機能に加えて、高精度での脅威検出や対応の機能が提供され、数カ月後(2024年内)にはそのすべての機能を使用可能にする予定です」(デヴェニー)

画像: Atlassian Guard スタンダード版とプレミアム版との機能比較

Atlassian Guard スタンダード版とプレミアム版との機能比較

エンタープライズインフラストラクチャの上位レイアであるTEAMWORK GRAFHは、目標やナレッジ、仕事など、膨大な数のデータオブジェクト間の関係をマッピングする「Object graph」、人とチームの関係や組織階層、最も頻繁にコラボレートする人を特定する「People graph」、製品を跨いだ標準化などのアクションを可能にする「Actions」、さらには「AI Models」といったコンポーネントによって構成されている。

「TEAMWORK GRAPHでさまざまなAIモデルがサポートできるようになったことで、製品を跨いだかたちでAI機能の提供が可能になったといえます」と、デヴェニーは説明を加える。

Atlassian Cloudの最上位レイアであるエクスペリエンスは「コラボレーション」「AI」「自動化」「分析」「拡張性」といった要素を、Atlassian Cloud上で展開されるすべての製品に付与するための層だ。

「エクスペリエンスレイアでは、きわめて数多くの機能が日々提供されています。今回の講演で発表できる新機能だけでも50以上に及びます」(デヴェニー)

画像: エクスペリエンスレイアに追加された新機能のイメージ

エクスペリエンスレイアに追加された新機能のイメージ

こうした機能の中で、特に人気の高い機能は「自動化」であると、デヴェニーは指摘し、こう続ける。

「自動化の機能は、Atlassian Cloudを使う20万強のお客様に愛用されていて、毎月10億以上の自動化ルールが実行されています。この自動化の機能にもAtlassian Intelligenceが適用されており、例えば、Jiraでは自然言語による依頼によって自動化ルール案のレコメンデーションが得られる仕組みが実現されています。この仕組みは、例えば『デプロイの失敗時にチームが使うチャットツールにメッセージを送信する』といった反復的なワークフローを自動化するうえでとても有用です」

Atlassian Intelligenceによって強化されているのは「分析」の機能も同様だ。Atlassian Cloudでは、組織内に散在するデータを集約し、分析する環境として「Atlassian Data Lake」と「Atlassian Analytics」を提供している。

画像: Atlassian Cloudにおける分析の環境

Atlassian Cloudにおける分析の環境

「このうちAtlassian Analyticsでは、自然言語による問い合わせからSQLを自動生成し、新しいチャートを作成・表示させる機能が(Atlassian Intelligenceを使って)実装されています。また、Atlassian Intelligenceがデータの傾向や異常をとらえて、そのサマリーをインサイトとして表示する機能も実装されています」(デヴェニー)

画像: Atlassian Intelligenceによるインサイトの表示イメージ

Atlassian Intelligenceによるインサイトの表示イメージ

チームの能力を拡張する「Rovo」

デヴェニーは今回、講演の最後としてRovoに関する解説を展開した。

「これまで述べたとおり、アトラシアンでは、組織におけるコラボレーションの効率化、変革に向けてAtlassian Intelligenceを使ったAI機能をさまざまに提供しており、最近リリースした新機能だけでも30以上に上ります。そして現在、組織が一層スピーディに意思決定を下し、行動するためのAIとしてRovoを製品化し、ローンチしました」(デヴェニー)

Rovoは自然言語による検索を可能とし、企業ネットワーク上に散在する多種多様なデータソースから目的の情報を引き出すことができる。

画像: Rovoによる検索のイメージ

Rovoによる検索のイメージ

「ナレッジワーカーの多くは、意思決定のための情報の検索に多くの時間を費やしています。Rovoを使えば、その時間を大きく削減することが可能です。加えてRovoは、チャット機能(Rovo Chat)を備えています。その機能を使うことで、重要なインサイトをすべて把握できるまで自分の知りたいことを調べることが可能になります」(デヴェニー)

画像: Rovoによるチャットで質問をするイメージ

Rovoによるチャットで質問をするイメージ

画像: Rovoによるチャットの回答のイメージ

Rovoによるチャットの回答のイメージ

さらにRovoは、バーチャルエージェントの機能として「Rovoエージェント」も提供している。

「Rovoエージェントに許可を与えれば、社内のあらゆるナレッジにアクセスすることが可能となり、アトラシアン製品を使って行動を起こします。例えば、バックログを整理したり、システムの改善・修正を提案したり、コードを書いたり、Confluence ページを編集したりしてチームをサポートするわけです。また、Rovoエージェントは、大量のバックログの中から重要なテーマを特定することもできるほか、チーム内の誰かが新しい役割に参加するのを手助けしたり、コードを特定の言語から別の言語に変換したりと、数千種のタスクをこなすことができます。しかも、各チームは、自分たちの仕事をサポートしてくれる専用のエージェントを開発することができるのです」(デヴェニー)

Rovoエージェントの働きをより具体的に示すべく、デヴェニーは今回、Rovoエージェントの1つ「COMMS CRAFTER」を取り上げた。これは、チームがコンテンツを作成し、レビューするのを手助けするエージェントだ。

「COMMS CRAFTERを使うことで、公開するコンテンツが自社のブランドガイドラインやネーミングガイドラインに沿っているかどうかを、マーケティングチームの誰かに問い合わせをかけることなく点検することが可能になります。しかも、マーケティングチームがガイドラインを更新した際には、COMMS CRAFTERのナレッジもリアルタイムで更新され、最新のガイドラインに基づいたアドバイスや情報を提供してくれます。さらに、マーケティングチームのナレッジに基づいて、文章の改善案を提示することも可能です」(デヴェニー)

画像: 「COMMSCRAFTER」エージェントによる文章改善の提案イメージ

「COMMSCRAFTER」エージェントによる文章改善の提案イメージ

デヴェニーはこのほか、特徴的なRovoエージェントとして、プロジェクトのタスクに優先順位を付けたり、不要なタスクをクリーンアップ(削除)したりする「BACKLOG BUDDY」や、プログラムコードから使われていない機能のフラグを削除する「FEATURE FLAG CLEANUP」なども紹介した。

画像: BACKLOG BUDDYエージェントの実行イメージ

BACKLOG BUDDYエージェントの実行イメージ

画像: FEATURE FLAG CLEANUPエージェントの実行イメージ

FEATURE FLAG CLEANUPエージェントの実行イメージ

「BACKLOG BUDDYもFEATURE FLAG CLEANUPも基本的に開発チームの生産性向上を目的に開発されたエージェントですが、アトラシアンでは、先に触れたCOMMS CRAFTERのように開発チーム以外のチームが便利に使えるRovoエージェントをさまざまに開発しています。例えば、『SOCIAL MEDIA SCRIBE』エージェントは、クリエイティブチームの要請に従ってSNS用素材のデザインをアシストしてくれるエージェントです。クリエイティブチームは、本エージェントから受け取ったデザイン案をもとにエージェントとやり取りし、デザインに調整をかけていくことができます」(デヴェニー)

画像: 「SOCIAL MEDIA SCRIBE」エージェントの活用イメージ

「SOCIAL MEDIA SCRIBE」エージェントの活用イメージ

Rovoでは、アトラシアンが開発したこれらのエージェントが20種標準でバンドルされている。また、簡単な手順でカスタムエージェントを構築することができるほか、アトラシアンのマーケットプレイス上ではパートナーから多くのRovoエージェントが提供されている。

「アトラシアンではすでに社内ワークフロー用に300以上のRovoエージェントを開発し、活用しています。将来的には数千のRovoエージェントがアトラシアン社内で働くようになるでしょう。それによって、アトラシアンにおけるすべのチームの潜在能力がさらに大きく解き放たれることになると期待しています。ぜひ、当社のお客様にもRovoとのコラボレーションによって、チームワークを変革し、その生産性と効力と高めていただきたいと願っています」(デヴェニー)

This article is a sponsored article by
''.