アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、グーグルの従業員アンケートの項目に基づきながら、優れたリーダーになるための方法について説く。

⑤成果を上げることにチームを集中させているか?

タスクを完遂することだけを目的にチームをマネージするのは心地の良いことだ。1つのタスクを完了させて、そのタスクを「To Doリスト」における「完了」欄に移動し、次のタスクに取り掛かる。その繰り返しによってリーダーは相応の満足感を得ることができる。

ただし、企業のビジネスにとって、チームリーダーのTo Doリストの状態がどうあろうと関係はない。ビジネスにとって重要なのは、チームがこなしたタスクの数量ではなく、どのような成果を上げたかである。

私の経験から言わせてもらえば、偉大なリーダーは、多くが部下に計測可能な目標を与え、その目標の達成に向けて自律的に走るためのスペースを与えている。

具体的には、メンバー各人の状態を定期的にチェックしながら、リーダーの望む成果を上げるまでタスクに反復して取り組めるようしたり、それぞれのキャパシティを超えたタスクを抱え込むのを避けたりしているのである。こうすることで、チームはその勢いを高いレベルで維持できるようになる。

また、優れたリーダーは、メンバーに可能な限り多くの意思決定権限を与えている。

⑥上層部からの情報をオープンにチームと共有しているか?

仕事にかかわる情報の透明性を保つことは、リーダーがメンバーからの信頼を得るための有効な手だてだ。

また、自分たちの仕事が会社の事業全体の中でどのように位置づけられているかを明示することで、チームはより多くのこと、より正しいことを成し遂げられるようになる。

実際、アトラシアンの調査によって、チームの「パフォーマンス」と「目的意識の共有」には強い正の相関関係があることが明らかになっている。具体的には、ハイパフォーマンスなチームの66%が、自分たちの仕事が顧客や自社の事業にどのようなベネフィットをもたらしているかを理解していたのである。それに対し、パフォーマンスの低いチームは25%しかそれを理解していなかった。

⑦メンバーのキャリアアップにつながる有意義なディスカッションを行っているか?

チームリーダーにとって、メンバーのキャリアアップの支援やメンターシップ(メンターとして機能すること)は大切な役割の1つだ。その役割を担ううえで心がけるべきことは、メンバーの将来を最優先に考えることである。言い換えれば、ある方向に進むことがメンバーの将来にとって最善と判断したならば、たとえ、メンバーがその方向を選ぶことでチーム、あるいは会社から離れることになるとしても、正しい方向に導くことに力を尽くす必要があるのである。

そうした心構えを持ちながら年2回程度の頻度でキャリアアップにフォーカスを絞った1 on 1ミーティングをメンバー各人と行うことをお勧めしたい。

また、そのディスカッションを円滑に進めるためのアイデア(質問のひな形)を以下に示すので参考にされたい。

  • 現在の職務で一番好きなことと一番嫌いなことは何か?
  • 2年後の自分はどうなっていると考えるか? また、5年後はどうか?
  • 私たちのチーム、部門、会社に足りていないものは何か?
  • 自分のキャリアを次のステップに進めるために、当面はどのようなプロジェクトに取り組むことができると考えているか?

⑧メンバーへの期待を明確に伝えられているか?

多くのチームリーダーは、メンバーに対して「質の高いアウトプットを、決められた予算内・期日内で納品すること」を期待している。

ただし、メンバーに期待すべきことは、そうした業務上のパフォーマンスだけではない。チームの一員として、価値観や目的意識を共有しながら、どのように働いてもらうか、あるいは、周囲とどのようにコラボレーションしたり、コミュニケーションしたりしてもらうかなど、メンバーに期待することはさまざまにある。そのため、優れたリーダーの多くは、メンバーと協力してコラボレーション上のルールを確立している。コラボレーション上のルールとは、例えば、以下のようなものだ。

  • 会議で他者が発言しているときは、発言の割り込みを行わない
  • 仕事中に「ヘッドホン」をつけることは「私はいま仕事に集中しているので、話かけないでください」というサインとする
  • 休暇を取る前には、最低限の連絡をメンバー全員に対して行う
  • チーム内での仕事上のコミュニケーションにメールは使わない

このような働き方への期待をチームの全員に伝える最も効果的な方法は、ブレインストーミングを行ってメンバー全員にコラボレーションルールを決めてもらい、ワーキングアグリーメント(作業合意)を形成することである。

また、コラボレーションのルールは効率性、合理性の観点から適宜見直しをかけるのが適切であり、ルール決めのブレインストーミングは年1~2回の頻度で行うのが適切である。

⑨専門知識を示せているか?

チームリーダーの地位に就く人は、大抵の場合、チームに大きく貢献してきた模範的なメンバーである。ただし、チームを取り巻くビジネス環境は目まぐるしく変化する。ゆえに、リーダーの地位に就いたのちも、自身のスキルの鮮度を適切に保ち、チームの置かれた状況や仕事の内容をしっかりと理解したうえで、効果的なフィードバックを提供することが必要とされる。

とはいえ、現場の仕事に深入りするのは避けたほうが良い。というのも、メンバーであったころと同じような仕事を続けることは、チームのリーダーが「リーダー失格」の烙印を押される最短のコースであるからだ。実際、私は個人的にその経験がある(英語)。

優れたリーダーはメンバーのために尽くす

以上、グーグルのアンケート項目に沿ったかたちで、優れたリーダーになるための方法について述べてきた。

先に触れたとおり、グーグルのアンケート項目は13あり、上述したような9つの項目のほかに「チームのメンバーは自分のリーダーを他者に推薦したいか」や「自分の仕事に対する全体的な満足度はどの程度か」といったことが問われるという。加えて「あなたのリーダーは何を続けるべきだと思うか」「あなたのリーダーは何を変えるべきだと思うか」といった質問もあるようだ。

いずれにしろ、この13のアンケート項目で特徴的なのは、リーダーの技術的な熟練度に関する質問が1つしかなく、残るすべての項目がコミュニケーションスキルや指導力に軸足が置かれている点である。加えて言えば「革新性」や「先見性」といった言葉は、アンケート項目のどこにも見当たらない。これは、優れたリーダーシップとは何かを明確に示すものと言えるだろう。

実のところ、チームをマネージするリーダーは、斬新なアイデアを出したり、最高のプログラマーであったりする必要はない。その代わりにメンバーのために尽くす姿を見せなければならない。そして、メンバー各人が人生で最高の仕事ができるよう、しっかりとした土台を築くこと、さらには、彼らの仕事の邪魔をしないようにすることが大切なのである。

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