本稿の要約を10秒で
- キャリアを積んでいく中で「メンター」は常に貴重な存在である。
- キャリアの各フェーズによってメンターに求めることは異なってくる。
- 良質な「メンターシップ」の構築は、キャリアの成功につながる可能性が高い。
「メンターシップ」が大切な理由
キャリアを積んでいく中で「メンター」は貴重な存在だ。ただし、キャリアのどの段階で、どのようなメンターと、どういった関係を構築すべきかについては、あまり明確になっていない。
言うまでもなく、キャリアを通じて人の目標は変化する。その変化に応じて、メンターに求めることも変化するのが通常だ。そこで本コラムでは、キャリアにおける5つの一般的な節目に応じて、どのような人物をメンターとすべきか、また、そのメンターに何を相談すべきかについて考察する。
なお、念のために付記しておくがメンターと「キャリアコーチ」は同義ではない。キャリアコーチによるコーチングは、短期的なキャリア目標を達成するために特定の行動を変えたり、特定のスキルを強化したりすることを主眼としている。
ゆえに、キャリアコーチは、あなたの仕事ぶりを観察して、改善すべき点を特定し、進歩のためのトレーニングを展開することになる。
一方、人とメンターとの関係、すなわち「メンターシップ」は、よりハイレベルでオープンな関係を意味しており、メンターは長期的なキャリア開発を視野に入れた知恵と支援の源となる。
メンターの語源
「メンター(Mentor)」という言葉はギリシャ神話に由来する。神話の一節「オデュッセイア(The Odyssey)」の中で、オデュッセウスは息子の保護と教育を大切な友人の一人に託す。その友人の名がメンターである。
キャリア初期におけるメンターとは?
仮にあなたが、初の社会人としてキャリアをスタートさせたとしよう。あなたは、会社のスタープレーヤーになるべくエネルギーに満ち溢れ、短期間(半年から1年半程度)で会社の戦力として活躍できるようになりたいと考えている。また、その会社には、あなたが輝く方法が数多くあり、自分のために会社があるように感じていたとする。
このように時間とエネルギーに余裕があるときは「あらゆるチャンスに対して『Yes(はい)』と言うことをデフォルトにしてみると良い」と、書籍『Tribe of Mentors』の著者であるティム・フェリス(Tim Ferriss)氏は言う。
この段階におけるメンターとは、あなたが探求・向上していく中で突き当たる日々のハードルを乗り越える手助けをしてくれる人物を指す。メンターはまた、あなたが何らかの仕事を引き受けたとき、それがあなたの将来にとって有益か否かを気づかせてくれたりもする。
そうしたメンターは、自分の職務と似たような職務に就いたことのある人だ。おそらく社内にいるか、社外のコミュニティーを通じて見つけることができるだろう。
【メンターと話し合うべき3つのこと】
- 自分の役割における困難な部分と、その困難を乗り越える方法
- 自分の職務を楽しみ、得意とする側面に傾注する方法
- これからのキャリアパスと選択肢
キャリアアップを真剣に考え始めた際に必要なメンターとは?
自分の専門分野が好きで、仕事にやりがいを感じているにもかかわらず、現在の職務に飽き始めている自分に気づいたとする。それは、キャリアアップに集中するときを迎えたサインにほかならない。
また、自分の目指すべき方向は大体わかっており、自分のスキルを伸ばして成長させてくれそうなプロジェクトに興味を抱くようになったとしよう。そんなときに必要になるメンターは、2~5年先のキャリア目標の達成を手助けしてくれる人だ。
理想的なメンターは、現在(あるいは過去において)あなたの目標とする職務に就いており、コンフォートゾーン(=楽ができる居心地のよい立場)から一歩踏み出した経験のある人である。
「ただし、自分のやり方をステップバイステップ方式でなぞるべきと説くメンターには注意したほうが良い」と、前出のフェリス氏は指摘し、こう続ける。
「特定の地位に昇った人の中には『私のやり方とまったく同じようにすべき』と説く人がいます。こうした人物には疑いの目を向けるべきです。代わりに、あなたが道を踏み外さないように鋭い質問をしてくれる人を探すのが賢明です」
いずれにせよ、キャリアアップの可能性を模索するのは、新鮮な視点をもたらしてくれる社外のメンターを探す良い機会でもある。社外のコミュニティやネットワーキングイベント、ないしはLinkedInの関連グループなどで、適切なメンターを探し当てられるはずである。
【メンターと話し合うべき3つのこと】
- 中期的なキャリアゴールとそこに到達するための方法
- キャリアアップの途上で突き当たるハードルと、それを乗り越える方法
- あなたがさらに伸ばせる強みと、補強すべきウィークポイント