アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのカット・ブーガード(Kat Boogaard)が、優秀なチームリーダーがかかりがちな思い上がり病「ヒュブリス症候群(Hubris Syndrome)」について説く。

ヒュブリス症候群への対処法

ヒュブリス症候群が厄介なのは、自分が常に正しいと思い込み、他人の意見を受け入れようとしないことが症状の一つであるがゆえに、この病気にかかっていることを本人が気づけない点にあります。ゆえに、ヒュブリス症候群に対処するうえで最善の、そして唯一の方法と言えるのは、ヒュブリス症候群にかからないようにすることとなる。具体的には、リーダーの立場になったときに以下のような予防策を講じることが必要とされるのである。

①定期的にフィードバックを求める

組織・チームのリーダーになった際に、部下との1 on 1ミーティングの場で自分に対するフィードバックを定期的に求めたり、自分のマネジメントに対するアンケート調査を定期的に実施したり、何らかの意思決定を下した際に、それに対する周囲からのフィードバックを必ず収集するようにする。そのうえで、フィードバックをもとに、何らかのアクションをとることを自らに課せば、ヒュブリス症候群にかかるリスクを低減することが可能になる。この施策展開で大切なのは、周囲からのフィードバックを単なる意見の相違としてとらえたり、あるいは「全体が見えていない人間の根拠のない批判」として受け止めたりしないことである。フィードバックを得た際には、個々の内容を掘り下げて、自分の行動や判断の間違い、あるいは自身の欠点を認識することが不可欠となる。

②自分に対する理解を深める

自分自身に対する理解を深めること、言い換えれば「自己認識」(参考文書 (英語))は簡単ではない。周囲からのフィードバックを定期的に求めることは、そのための有効な手段の一つと言えるが、自己認識のためのアセスメント手法や訓練手法を活用することで、リーダーとしての自分をより深く理解することができる。最も一般的なアセスメント手法(参考文書 (英語))やフレームワークには、以下のようなものがある。

いずれにせよ、ヒュブリス症候群にかかっている人は、客観的な視点で自己を認識しようとはしなくなる。ゆえに、この心の病気にかかる前に、自分の長所と短所をデータによって把握するように心がけることは大切である。ともあれ、権力を得たからといって、それによって自分が自動的に成長するわけではない点は、忘れないでいただきたい。

③自らの手をよごす

チームを率いるリーダーとして、ときには謙虚な姿勢で現場仕事に携わり、現場における自分の実力を再度確認することも、ヒュブリス症候群にかからないため有効な一手と言える。

したがって、もしチームのメンバーが何かに悩んでいたら、メンバーと一緒になってその仕事に挑戦することをお勧めしたい。また、チームが恐れている仕事があるのなら、それを自分でやってみるのも良いかもしれない。

チームのリーダーがメンバーの部下のように働き、その成功を後押しする「サーバントリーダーシップ」の姿勢や取り組みは、リーダーに対するメンバーの信頼を育み、好感度を高める。結果としてリーダーは、チームの課題と真正面から向き合い、地に足のついたマネジメントを遂行することが可能になる。よりシンプルに言えば、チームのメンバーから愛されるリーダーは、自分のやりたくなり仕事の遂行をチームに求めず、自ら行うのである。

謙虚さの威力

英国の小説家ジョージ・オーウェル(George Orwell)は、ディストピアSF小説の「1984」の中でこう記している。

Always there will be the intoxication of power, constantly increasing and constantly growing subtler.(常に権力者の陶酔があり、それは絶えず少しずつ増大し、成長していく)

この一文は、ヒュブリス症候群の現実を的確に描写していると言えるだろう。そして、この厄介な症候群は、企業のCEOやチームリーダーから政治家に至るまで、きわめて多くのリーダーに影響を与えてきたのである。

権力を持つことは爽快だ。ただし、権力を握った際には爽快さと同じレベルの謙虚さや現実主義、自己認識が必要とされ、力を持った自分に陶酔することを可能な限り抑制することが求められる。そうすることで仮に権力の頂点に立ったとしても、地に足をつけた行動をとることが可能になるのである。

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