アトラシアンでは2022年6月、日本のナレッジワーカーを中心にした就労者へのアンケート調査を実施した。テーマは「働く環境」と「働く満足度」との相関関係を調べることだ。その調査結果を「前編」と「後編」の2回にわけて報告する。

働き方の自由がもたらす満足感

以上の結果から言えることは、社員の働く満足度を高めたい、あるいは優れた人材を確保したいと考えるのであればオフィスワーク中心の働き方を強制するのは避けたほうが無難であり、働き方の選択肢としてリモートワークを柔軟に取り込むべきであるということだ。事実、今回の調査では、回答者の過半数(51.8%)が「リモートワークが認められないような職場では働きたくない」、ないしは「(そのような職場は)できれば避けたい」と答えている(図5)。

画像: 図5:リモートワーク(在宅勤務)の可否と職場選びとの関係(n=635) 資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

図5:リモートワーク(在宅勤務)の可否と職場選びとの関係(n=635)

資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

もちろん、リモートワークやハイブリッドワークがすべての就労者にとっての理想的な働き方ではない。今回の調査でも、(コロナ禍による)リモートワークの推進によって、チーム内外のコミュニケーションやコラボレーションがしづらくなったなど、問題点を指摘する声もいくつか寄せられている。

したがって、リモートワークやハイブリッドワークを採用するにしても、それを社員に「強制」することは、その満足度の低下につながるおそれがある。

また、リモートワーク、ハイブリッドワークを採用しても、働く時間帯などに厳しい制約を設ければ、働き方の柔軟性が損なわれ、それが就労者の不満につながる可能性も大きい。

では、今日の日本企業は、働く場所と時間にどの程度の自由を与えているのだろうか。その点を回答者に尋ねた結果が図6である。

画像: 図6:働く場所と時間の自由度(n=635) 資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

図6:働く場所と時間の自由度(n=635)

資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

図6を見てのとおり「働く場所と時間を自由に選べている」という就労者は全体の2割程度(22.7%)でしかなく、逆に半数近く(45.2%)が「働く場所と時間ともに会社に決められている」といった状況にあるようだ。

いうまでもなく、こうした働き方の自由度の違いは、組織・チームに対する就業者の満足度の高低に影響を与えるものだ。

以下の図7にあるとおり、今回の調査でも、働き方の自由度が高ければ高いほど、組織・チームに対して満足感を抱く人の割合が高まっている。

画像: 図7:働き方の自由度と組織・チームへの満足度の相関関係(n=635) 資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

図7:働き方の自由度と組織・チームへの満足度の相関関係(n=635)

資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

週休3日制(週4日制)の是非

今日、働き方の新しいスタイルとして「週休3日制(週4日制)」への関心が高まり、その採用の是非を巡る議論が世界規模で活発化している。また、先進的な企業はすでに週休3日制(週4日制)を導入し、運用し始めている。

もっとも、リモートワークやハイブリッドワークと同様に、週休3日制(週4日制)についても、すべての就労者にとって望ましい働き方ではなく、その導入が無条件で就業者の満足度向上につながることはなさそうだ。

例えば、今回の調査では、週4日制の導入に対して回答者の7割近く(66.6%)が「賛成」の考えを示したものの、無条件で賛成とした回答者は全体の26.6%でしかなく「条件付きで賛成」とした回答者が全体の40%に上っている(図8)。

画像: 図8:週休3日制(週4日制)に賛成か、反対か(n=635) 資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

図8:週休3日制(週4日制)に賛成か、反対か(n=635)

資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

今回の調査では、その「条件付きで賛成」と答えた回答者に対して、賛成する「条件」とは何かについても聞いている。結果は図9のとおりだ。

画像: 図9:週休3日制(週4日制)に賛成する「条件」(n=254)※回答者の考えに最も近いものを1つ選択 資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

図9:週休3日制(週4日制)に賛成する「条件」(n=254)※回答者の考えに最も近いものを1つ選択
資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

ご覧のように「給与が下がらない」ことが、週休3日制(週4日制)を受け入れる最も重要な要件なようだ。

これは当然の結果といえるが、経営者の視点でいえば、週休3日制(週4日制)の導入で現場の生産量が低下してしまうことが予想され、その中で、社員の給与を下げないという決断を下すのはかなり難しいはずである。言い換えれば、就労者の納得のゆく(あるいは、満足のゆく)かたちで週休3日制(週4日制)
を導入するのには相応の覚悟が必要であるというわけだ。

また、週休3日制(週4日制)を採用しつつ従業員の給与を下げないのであれば、現場の作業効率を大幅に高める何らかの仕組みを導入したり、業績評価/報酬決定の基準を「仕事量」や「アウトプットの数量」から、仕事の「品質」「成果」「効果」へとシフトさせたりといった施策を講じることが必須になるかもしれない。

前出の図8に示したように、週休3日制(週4日制)に反対する就労者も(少数ではあるものの)いる。その主な反対理由は図10のとおりだ。

画像: 図10:週休3日制(週4日制)に反対する理由(n=51)※回答者の考えに最も近いものを1つ選択 資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

図10:週休3日制(週4日制)に反対する理由(n=51)※回答者の考えに最も近いものを1つ選択

資料:アトラシアン株式会社 2022年6月調査(「働く環境の実態&意識調査」)

この結果と、先の図8に示した結果を総合してとらえると、週休3日制(週4日制)を巡る就業者の不安の中心が「生産力の低下」や「給与のダウン」にあることがわかる。

実のところ、週休3日制(週4日制)を推奨する識者や行政府は、この制度の導入によって就労者の働き過ぎが抑制されるうえに、働く人がより豊かな人生を送れるようになったり、副業を通じて多様な経験・スキルを積めるようになったりする(人生の選択肢が広がる)と主張している。ただし、日本の多くの就労者は、そうしたことよりも、現行の仕事の生産力、そして給与を維持・向上させることのほうに強いこだわりを持っているようだ。

以上、今回は、日本における就業者の働き方の実態をとらえるとともに、その実態と組織・チームに対する満足度との相関関係について見てきた。続く「後編」では、働き方と同じく、就労者の働く満足度に大きく作用するとされる組織・チーム内での人間関係やコミュニケーション、情報共有のあり方について、回答者の実態を見ていく。また併せて、人間関係やコミュニケーション、情報共有のあり方が、組織・チームに対する就労者の満足度にどう相関しているかについても明らかにする。


回答者属性

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