アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。ライターのアーサー・ボドロフ(Arthur Bodrov)とジェイミー・オースティン(Jamey Austin)が仕事でのユーモアの重要性を説く。

本稿の要約を10秒で

  • 大学の研究により、ユーモアを使うことで相手が将来あなたと交流したいと思うようになる確率が高まることが証明された。
  • 仕事上のプレゼンテーションにユーモアを取り入れる人は、有能で自信があると思われる可能性が高い。
  • 職場でユーモアを使ううえでは生来の陽気である必要はない。
  • ユーモアを理解することで、何らかの仕事上のベネフィットを手にする可能性がある。
  • ポジティブなユーモアを心がけることが大切である。

ユーモアは人間関係構築の近道

「ユーモアは人間関係構築の近道である」──。この原則は科学的にすでに証明されている。

例えば、ある実験では、お互いを知らない80組(2人1組)の大学生が参加し、それぞれが30分間対話した。そののちに参加者たちに「ペアを組んだ相手と今後も交流を続けたいか」と尋ねたところ、ユーモアのセンスのある学生は、他の学生よりもはるかに多くの「はい(今後も、この人と交流を続けたい)」との回答を獲得したという。すなわち、ユーモアは、初対面の人に対しても自分との距離を縮める効果があるというわけだ。

もちろん、これは学生の話であって、ビジネスパーソンによる仕事上のコミュニケーションの話ではない。仕事における対話の場は“お遊びの場”ではなく、真剣勝負の場である。ゆえに、仕事上の対人関係ではユーモアはそれほど重要ではないと思われがちだ。

ところが実際には、ユーモアが仕事上の人間関係においてもプラスの効果をもたらすことは、さまざまな研究によってすでに明らかにされている。

ユーモアが職場にもたらす効果とは?

米国スタンフォード大学のビジネススクールで「ユーモアとリーダーシップ」に関する講義を展開している行動科学者のジェニファー・アーカー(Jennifer Aaker)氏と企業戦略家のナオミ・バグドナス(Naomi Bagdonas)氏によれば、ユーモアはその威力の大きさに反し、職場の中できわめて低く評価されている資源の1つであるという。

両氏は、TEDで人気を博した講演の中で、ユーモアを「組織における『人同士の絆(きずな)』『組織力』『創造力』『回復力』を強める秘密兵器」と呼び、私たちビジネスパーソンはもっとユーモアを持つべきであると訴えている。

とはいえ、ビジネスパーソンはコメディアンになる必要はなく、ユーモアを持つというのは、世界をさまざまな角度から見つめながら、より人間的な他者とのつながりを持つことを意味している。

実際、1つのジョーク(たとえ、それが素晴らしいジョークでなくとも)が、職場にプラスの変化をもたらしうることが科学的に証明されている。

誰もが心地良くなる“笑い”を奨励する職場は、組織の結束力を強める
── ハーバード・ビジネス・レビューより、ブラッド・ビタリー(Brad Bitterly)氏およびアリソン・ウッド・ブルックス(Alison Wood Brooks)氏

『Harvard Business Review』に掲載されたブラッド・ビタリー氏とアリソン・ウッド・ブルックス氏のレポート「Sarcasm, Self-Deprecation, and Inside Jokes: A User’s Guide to Humor at Work」によると、プレゼンテーションの効果を計測したある実験において、ユーモアを交えたプレゼンターは、ジョークを使わなかったプレゼンターよりも自信と能力が高いとオーディエンスから評価されたという。また、ユーモアのあるプレゼンターは、のちのリーダーシップ研修においても、リーダーとして高い能力を発揮しうると評価されたようだ。

さらに両氏によれば、組織のリーダーのユーモアには、組織に対する従業員のロイヤリティや自発的な貢献意欲を向上させる効果が期待できるという。

「リーダーのユーモアは、従業員たちの仕事ぶりを前向きにするほか、仕事への満足度、組織への貢献意欲、ロイヤリティ、創造性、心理的安全性、リーダーとの交流を続けたいという意識など、リーダーシップの有効性を支える、従業員のあらゆる心理的要素にプラスの影響をもたらすのです」(ビタリー氏・ウッドブルックス氏)

仕事の場で使うべきユーモアとは?

人が面白いと感じるユーモアの種類はさまざまだ。また、自分では面白いと感じないジョークでも、周囲がそれを楽しんでいるのを見ると幸せな気分になる。

一方で、ユーモアにはリスクもあり、一線を越えたジョークは人とのつながりを強めるどころか、対人関係を悪化させるリスクが大きい。

「一線を越えたジョークには、周囲から知的で有能だと思われる効果はなく、逆に『非常識』で『知性が低い』と見なされてしまう恐れが強いと言い切れます」と、ビタリー氏とウッドブルックス氏は指摘している。

では、どのようなユーモアが職場では適切なのだろう。

米国ウェスタンオンタリオ大学の研究者らによると、あらゆるユーモアは次に示す2スタイル4タイプに類型化することができるという。

【スタイル1: ポジティブスタイル】

  • 親和的ユーモア:
    このタイプのユーモアは、他の誰かを笑いのネタにしたり、笑いの犠牲にしたりすることは一切なく、純粋に人を楽しませたり、人に親近感を持ってもらったりすることを目的にしている。また、不特定多数の人に広くアピールすることを意図しており、ユーモアを発信する対象を特定のターゲットに絞り込むことはない。
  • 自己強化型ユーモア:
    このタイプのユーモアは、後述する「自虐的ユーモア」と混同されやすいが、「自虐」とはまったく異なり、ポジティブなことに焦点を絞り、自分を高めたいという願望によって駆動される。例えば、困難な状況の明るい側面をとらえたり、自虐的な話が交わされたりするときに、このタイプのユーモアを使う人がいるかもしれない。このタイプのユーモアは、人と人との間に仲間意識を芽生えさせたり、人の憂鬱(ゆううつ)や不安を軽減したりする効果がある。

【スタイル2: ネガティブスタイル】

  • 攻撃型ユーモア:
    これは、他人を貶(おとし)めるタイプのユーモアであり、相手に良い印象を与えるつもりで用いても、分裂や不信感などを生んでしまうタイプのものである。
  • 自虐的ユーモア:
    自分を貶めることで、他人を楽しませようとするタイプのユーモアである。「自分を良い人」に見せようと考えて使われることが多いが、その逆の効果を生んでしまうことが多い。

言うまでもなく、良好な人間関係を築くうえで有効なのは、上述したポジティブスタイルのユーモアである。そのことは、カップルを対象としたある実験でも明確に示されている。

この実験は、ユーモアのスタイルの違いが、議論するカップルの心理状態にどのような影響を与えるかを調べるためのものだ。各カップルは、ビデオに撮られた状態で、互いの意見の対立を解決するよう求められた。そののちに、議論する相手にどのような印象を持ったか、議論に対する満足度はどうか、ストレスレベルはどうだったかなどのアンケートが各自に対して行われたのである。結果として、パートナーがポジティブスタイルのユーモアを使うカップルでは、パートナーへの親近感を強く感じ、かつ、議論への満足度も高く、ストレスレベルが低かった。それに対して、ネガティブスタイルのユーモア(攻撃型ユーモア)を使うパートナーと議論した人は、パートナーへの親近感が薄れ、議論への満足度も低く、ストレスレベルも大きかったようだ。

この実験結果は、仕事上の議論においても同様に当てはまるものだ。言い換えれば、ポジティブなユーモアは、議論を通じた人間同士のまとまりや問題への対処能力を強める効果が期待でき、ネガティブなユーモアは、議論を通じた知識の共有や相互信頼の醸成を阻害すると言えるのである。

仕事でユーモアを使うには

前出のビタリー氏とウッドブルックス氏は「ユーモアの欠如は、人生の喜びを少なくするだけではなく、仕事における自分と周囲の生産性や創造性を低下させるリスクがありますと」と指摘し、組織のリーダーに対して次のようにアドバイスしている。

「ユーモアを、組織の単なる補助ツールとして軽視するのではなく、職場でのキャリアアップや組織の繁栄に向けた中心的なパスであるととらえるリーダーには、大きな利益が待っていると考えるべきです」

ということで、先ほど紹介したアーカー氏とバグドナス氏のTEDでの講演を参考にしながら、ユーモアを職場で有効に活用するためのヒントをいくつか列記しておく。

  1. 面白い何かを探すのではなく真実を探す。
  2. 自分にとって面白いことではなく、他者にとって面白いこととは何かを考える。
  3. 誰かをジョークで貶めたり、ジョークのネタや犠牲にしたりしない。特に、その人の組織における地位が低い場合には絶対にしてはならない。
  4. 他人の(あるいは自分の)弱点をジョークにしない。また、人と人との距離を常に意識する。要するに、あなたは自分の両親をジョークのネタにできても、私はあなたの両親をジョークのネタにすることは絶対にできないということだ。

いずれにせよ、仕事の場でジョークを言うときには、言う前に必ず常識を働かせることや他者への配慮が不可欠となる。例えば、内輪だけで通じるジョークはサークルの"内側"にいる人たちのつながりを強める効果があるが、一方で、サークルの"外側"にいる人たちを疎外してしまう可能性がある。

また、ユーモアとして「皮肉」(=職場のユーモアで最も一般的なタイプ)を言う際には、背後の意図やコンテキストが重要となる。したがって、皮肉を言う際には、その意図が相手の否定なのか、それとも肯定なのかを自問し、前者の場合には皮肉を言うのは避けなければならない。さらに、自虐的なユーモアは一定の絆(きずな)を生み出すが、相手に気まずい思いをさせないようにすることが大切である。

実のところ、仕事の中にユーモアを取り入れる機会は無数にある。それだけに、ユーモアを働かせるときには、相応の機転を利かせながら、その場の状況や空気を読み、慎重に、かつ前向きな姿勢でことに当たらなければならない。

加えて言えば、すべての状況においてユーモアが適切であるとは限らない。例えば、相手に対するフィードバック(建設的な批判)にユーモアを絡めることで、批判を和らげることができるが、メッセージを曖昧にしてしまう場合がある。したがって、重要な指摘を直線的に伝えたい場合には、ユーモアのオブラートで自分の真意を包み込まないようにすることが大切だ。

以上のポイントに留意しながら、職場での日々の笑いを絶やさないようにする。それが大切である。

This article is a sponsored article by
''.