アトラシアンには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

垣間見えた光明

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の嵐が吹き荒れるなか、将来に向けて、いくつかの光明も見えてきた。

光明の一つは、企業に対する在宅勤務(リモートワーク)の強制によって、この働き方に対する凝り固まった、古めかしい考え方が大きく揺さぶられたことだ。

いまのところは、在宅勤務の有効性を正しく判断できるような状況にはない。ただし、少なくとも、「リモートワークは機能しない」と考えてきた人たちは、その間違いを改める必要に迫られているのではないだろうか。

実際、ガートナーが2020年3月に実施した調査によれば、調査に協力した企業の74% が、COVID-19対策終了後も、何らかの業務機能をリモートに残すと答えたという。

ただし一方で、リモートワーク用として、しっかりとした仕事部屋とZoom会議用の照明までを整えたにもかかわらず、「自分のフルタイムのリモートワークは失敗に終わりそう」と嘆く向きもいる。となれば、リモートワークを推進したいマネージャーの残る手段は、リモート雇用によってリモートワークに適した人材(以下、シンプルにリモートワーカーと呼ぶ)を採用することである。

幸いなことに、世の中には、優れたリモートワーカーが相当数いる。彼らの多くは働く意欲が高く、目的意識も明確に持っている。そのため、マネージャーの期待どおり、あるいは、期待以上の成果を上げてくれる可能性が高い。また、優れたリモートワーカーは、世界水準のコミュニケーションスキルと感情的知性を持ち合わせている。さらに、必要なときに人にサポートを求めることを躊躇(ちゅうちょ)したり、自分のキャパシティに余裕があるにもかかわらず、新しい課題に取り組むのを恐れたりすることもないのだ。

言うまでもなく、そのような優れたリモートワーカーを雇用するには、採用面接時に候補者の能力をしっかりと見極めなければならない。以下、その見極めに役に立つ面接時のインタビュー項目を9つ紹介する。ぜひ、今後の参考にされたい。

質問1「あなたが、夢として思い描く、あるいは追い求めている理想のプロジェクトとは、どのようなものですか?」

■ 設問の意図:自発性の確認

言うまでもなく、組織のマネージャーとリモートワーカーとの接触機会は、マネージャーと同じ場所で働く人と比べて、どうしても少なくなる。したがって、あなたがコンスタントに確認しなくても、地道にコツコツと働き続ける自発性に富んだ人をリモートワーカーとして採用しなければならない。

上記の質問は、そうしたリモートワーカーの自発性──つまりは、自発的にモノゴトに取り組む意志の強弱をチェックするための問いかけだ。自発性が強い人ならば、上記のような質問に対して、必ず明快でしっかりとした回答を返してくる。

また、自発性の強いリモートワーカーは、良質の挑戦を好み、たとえ、後退を余儀なくされたり、魅力的な他の何かが視野に入ってきたりしても、仕掛かりの挑戦を投げ出そうとはせず、取り組み続ける。この辺りの性格特性も、面接時に確認しておくとよい。

質問2「リスクをとって失敗したときのことを教えてください。また、その失敗から何を学びましたか?」

■ 質問の意図:自己成長のマインドセットの確認

リモートワーカーの採用面接で、前職における“コラボレーションによる成功体験”を聞くのは時間の無駄である。というのも、他チームとのコラボレーションに関する成功体験が、自分のチームで活かされることはまずないからである。特に、あなたのチームが、リモートワーカーとチームを組んだ経験がなかったり、候補者がリモートワークの未経験者であったりした場合には、コラボレーションに関する候補者の成功体験は、単なる他人事と見なすべきである。

ここで仮に、あなたが求めているリモートワーカーが、柔軟性に富み、粘り強く、実験を好み、自分がベストだと思う仕事の進め方についても、常に疑いの目を持てるような人物だったとする。そうした人物が必ず持っているのが自己成長のマインドセットである。

自身の成長や継続的な改善に熱心な候補者は、おそらくそれに関連した自身の物語──つまりは、失敗の経験談を1つは持っている。その物語に注意深く耳を傾け、候補者が過去の失敗体験を、どう捉えているかを確認されたい。

過去の失敗を自分の責任として語るのか、失敗の責任を他に転嫁しながら語るのか?ここで、失敗の責任を他に転嫁しているようでは、失敗から何も学んでいない可能性が高い。その逆に、失敗の全責任を自分で背負っている姿勢を示したとすれば、それは、「謙虚さ」と「自信」、そして「誠実さ」が理想的なかたちでブレンドされ、共存していることの表れと見なすことができる。

質問3「採用された場合に、最初に取り組みたいことは何ですか?」

■ 質問の意図:コミュニケーション能力の確認

この質問は、かなり“トリッキー”な問いかけだ。というのも、採用面接時点では、このような質問に即座に答えられるだけの十分な情報を、候補者たちは持っていないからである。

ただし、それがこの質問のポイントである。ここで主に確かめたいのは、質問に対する適切な回答ではなく、適切な答えを出せない質問をされた際のコミュニケーション能力なのである。

実際、優れたコミュニケーション能力を持つリモートワーカーならば、上記の質問に対して無理に答えようとはせず、次のような質問で切り返してくるはずである。
「現在、チームの優先事項は何ですか?」
「現在進行中のプロジェクトはありますか?」
「試みに失敗したのですか?ならば、すでに何かを試してみましたか?」…など。

面接する側は、これらの質問に1つ1つ丁寧(ていねい)に答えていく。そして、候補者が十分な情報を得たと判断したならば、再度、最初の質問を候補者に投じる。こうすることで、人の話の要点を理解し、整理する能力も確認することができる。

リモートワークの作業効率を高めるうえでは、コミュニケーションにおける“雑音”を可能な限り少なくすることが大切である。ゆえに、話の要点を理解し、整理できる力は、リモートワーカーには欠かせない能力の一つと言えるのである。

Tips
リモートワーカーには、メールやチャット、ビデオ会議などの複数の媒体を目的に応じて使い分け、チームと効果的にコミュニケーションをとる能力も必要とされる。したがって、これらのいくつかをインタビューのプロセスに組み込み、候補者のコミュニケーションスキルとスタイルを把握できるようにしておくとよい。

質問4「当社について、あなたが驚いたことを3つ挙げてください」

■ 質問の意図:積極性の確認

この質問の内容は、リモートワーカーにどのような役割を担わせようとしているかによって異なってくる。

例えば、リモートワーカーに担って欲しい役割が、デザインあるいはマーケティングであるならば、自社のコーポレートサイトについて、何が印象に残ったかについて尋ねる。また、財務・経理であるならば、自社の前四半期の業績(もちろん、自社の業績を公開していることが前提となる)について、どの数字が印象に残ったかを尋ねればよい。さらに、リモートワーカーに求める役割が何であれ、自社の価値観について、何が最も印象的だったかを尋ねるのも有効と言える。

この質問で突き止めたいのは、仕事に対する候補者の意欲である。仕事に対する意欲が高ければ、面接前に、その会社のコーポレートサイトをくまなく見て回り、必要な情報を全てチェックするのが当然の行動と言える。

もっとも、意欲はあっても、こうした当然の行動がとれないような候補者も稀にいる。そうした候補者は、人から具体的な指示を出されなければ、必要な行動がとれない人物と見なすべきである。マネージャーは、リモートワーカーに対して常に何をすべきか指示を出せるわけではない。したがって、候補者が、マネージャーからの指示を仰がずとも、自分のやるべきことを、自ら判断して、どこまできるかを確認しておくことは大切である。

This article is a sponsored article by
''.