アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、子どもたちが家にいる中で、在宅勤務をいかにストレス少なくこなすかの方法を説く。

小さな子どもたちも家にいる── そのとき在宅勤務中のあなたは……

2020年3月、私が家族と住む米国ミネソタ州の行政府は、新型コロナウイルス対策として州内全学校を3月18日から数週間閉鎖するとの州令を発布した(4月末時点での現状では、学年度が終わる5月ごろまで全学校が閉鎖される予定)。私たちの地区では、遠隔学習の準備を進めていたが、それが完了するまでの数日間、6歳と9歳の子どもたちには『雪の日休み』の“臨時ボーナス”が与えられることになった。

『雪の日休み』とは、雪深い北国(米国では、グレート ボールド ノースとも言う)ミネソタ州の臨時休校制度のこと。通常は、大雪によって登下校が困難な場合に発動される。今回の休みは大雪が理由ではなかったが、地域の小学校に通う子どもたちには、その辺りの名目はどうでもよく、重要なことは『数日間は、勉強せずに家で遊んでいていいよ』という許可が学校から正式に下りたことである。

その数日間は、もちろん通常の『ワークデイ(営業日)』。残念なことに、夫と私には『雪の日休み』は与えらず、普段どおりに仕事をこなさなければならなかった。ここでもし、私たち夫婦がともに、普段はオフィスで働くオフィスワーカーで、新型コロナウイルス対策で突然在宅勤務を余儀なくされた“リモートワーク初心者”だったとしたらどうだっただろうか。おそらく、子どもたちへの『雪の日休み』の支給に狼狽したはずである。そう、例えば、「えっ、子どもたちは明日からずっと家にいるの!? しかも、しばらくは勉強しなくていいの? 宿題もないの? うーん、今週分の仕事を予定どおりに終えられるかしら」といった具合である。

ただし、幸いなことに、私たち夫婦はともにフルタイムの在宅勤務者として何年もの経験がある。その中で、本当の大雪などで保育園や学校が急に休みになり、子どもたちに囲まれながら仕事をするといった場面が幾度もあった。要するに、仕事をしながら、家にいる子どもたちを扱う鍛錬を積み重ねてきたのである。

以下では、そうした経験に基づきながら、子どもたちの相手をしつつ、在宅勤務を最小限のストレスでこなす方法についてお伝えする。

期待のマネジメント

ここで言う『期待のマネジメント』とは、『自身への期待』『自分に対するチームの期待』『子どもたちへの期待』をマネージすることを指している。これは、子どもたちに囲まれながら仕事をするうえでの大切なポイントである。以下の3つが、その具体的な方法となる。

  • 自分への期待値を下げる:実のところ、子どもたちが家にいるときは、いないときに比べて仕事の生産性は間違いなく落ちる。ただし、それは当然のことで、それに劣等感や罪悪感を抱く必要はない。
    また、「子どもたちが家にいても、自分なら、いないときと同じように仕事ができるはず」といった期待も持たないほうがいい。むしろ大切なのは、自分の仕事の予定を軽くしておくことである。例えば、1週間分のタスクと目標の中から、2~3日程度後ろ倒しにできるもの、あるいは期限を設定しなくてもよいものを、マネージャーの同意の下で選んでおくのである。もちろん、子どもが幼ければ、幼いほど、仕事の予定には、より大きなゆとりを持たせておくことが大切だ。
  • 自分に対するチームの期待を調整する:家に子どもがいて、仕事のパフォーマンスが落ちのであれば、そのことをチームに伝え、自分がチームのボトルネックにならないよう、最善を尽くしていることを知らせると良い。
    また、いくつかの仕事を通常とは異なる時間帯で行うことによって、日々のストレスが軽減されるかどうかを検討する。検討の結果、ストレスが軽減されると判断したならば、チームメイトからの連絡に対する自分のレスポンスが、いつもとは違うタイミングになることを明確に伝え、理解を求めておかなければならない。ちなみに、チームメイトの何人かが、自分と同じ境遇に置かれている可能性は十分にある。その場合には、自分の働き方に対するチーム内の理解はよりスムーズに深められるはずである。
  • 子どもたちに期待を伝える:仮に、自分の子どもたちが、『いま、何が起きているか』を理解するのに十分な年齢だとする。その場合には、子どもたちの自律した行動に対する自分の期待感の大きさを、はっきりと伝えることが大切と言える。そのうえで、仕事の邪魔をしていいとき(例えば、怪我をして出血しているような緊急事態のとき)と、邪魔をしてはならないとき(例えば、お気に入りのゲームアプリが起動できないといった少しの我慢で問題が解決できるようなとき)の線引きを明確に示すことが重要である。

家族内のキックオフ会議を行う

我が家では、州政府から学校閉鎖の通達が出た翌朝、家族内で簡単なキックオフ会議を開催した。場所は自宅のキッチン。そこで家族の全員(私と夫、小学生の息子と娘の総勢4名)が集まり、今回の事態にどう対処していくかについて、およそ10分間話し合った。そのミーティングの議題は次の4点である。

  • 議題1: 学校が閉鎖している間、何をしたいか、何を得たいか?
    (家族の結論)
    • 息子:かくれんぼのスキルを磨く。
    • 娘:家族との時間を楽しむ。
    • 私と夫:とにかく正気を保ちながら、仕事をしっかりとこなし、この時期をどうにか乗り切る。
  • 議題2: 日々の時間をどのように構成するか?
    • 家族の結論:後述する内容を参照
  • 議題3: 毎日のベッドメイクは必要か?
    • 家族の結論:当然、必要。ただし、“パジャマの日”はその限りではない。
  • 議題4: 食事・おやつはどうするか?
    • 家族の結論:後述する内容を参照

この会議によって、子どもたちは自分たちの意見を聞いてもらえた気分になり、充実した表情で会議室(キッチン)から立ち去った。それだけでも、会議の10分間は価値があったと言える。また、子どもたちに、1日の時間をどう分割するかの決定を手伝わせると、彼らは、“自宅学習”にかかわる全てが、自分たちの既得権益であることに気づく。これは、仕事に対する子どもたちの協力を確実なものにする、長い道のりの始まりとも言えるのである。

毎日のルーティンを作り上げる

学校で機能している『時間割り』の構造は、自宅でも同様に機能する。理由は、子どもたちは時間で区切って何かをすることに心地よさや安定感を抱くからである。

1日のスケジュールをどこまで細かく設定するかは、子どもたちの年齢によって変わってくる。例えば、我が家の息子と娘のように小学生の年齢であるならば、1日の大部分を、およそ2時間の単位で区切るのが、それぞれの自律した行動を促すには適しているようだ。

ちなみに以下は、先に触れた『雪の日休み』の数日間において、我が家の子どもたちに適用したスケジュールである。

午前7:00~:起床、着替え、朝食、朝の家事手伝い
午前8:30~:読書、パズル、お絵かき
午前10:30~:“良質”なTV/ビデオ鑑賞
午後12:30~:昼食
午後1:00~:各自の部屋で静かに過ごす
午後2:00~:自由時間
午後4:00~: “良質”なTV/ビデオ鑑賞 Part2
午後5:00~:家族で集まり、夕食へ

ご覧のとおり、『TV/ビデオ鑑賞』の時間が少し多い。「少しどころか、多すぎじゃないの?」とのご批判があるかもしれない。ただし、1週間の仕事というのは短距離走ではなくマラソンである。そのマラソンを、小学生の子どもたちと一緒に走り続けて、勝利を収めるためには、子どもたちにとっても、自分たちにとっても、どこかに緩(ゆる)さが必要である。そうしないと在宅で働く親たちの気力・体力が続かない。

加えて、遠隔学習のプログラムが始まれば、当然、現状のルーティンはすべて見直す必要がある。よって上記のスケジュールはあくまでも“仮構成”で、時間の区切り方をイメージしていただくためのものとご理解いただきたい(もちろん、遠隔学習が始まっても、緩さを確保するのは大切である)。

また、仮にあなたのパートナーも、フルタイムの在宅勤務者だった場合には、子どもたちに対するケアを交互に行うようにすると互いのストレスが減らせる。この交代のルールは、シンプルであればあるほどよく、例えば、2人のうち1人が午前中、 もう1人が午後において、それぞれ子どもたちに対応するといった単純なルールが最も機能しやすい。

食事・おやつは事前に計画・準備する

理想は、1週間分の食事・おやつのメニューを子どもたちと作り上げ、必要な食材・スナック類を事前に調達・準備しておくことである。こうすることで、親たちが仕事モードに入る前に、計画された朝のおやつを食卓に並べ、午後のおやつも、子どもたちと合意したものをランチタイムの間に用意することができる。

もちろん実際には、1週間の食事・おやつについて、完全な統制が維持できる家族はわずかである。大抵は、大人たちも子どもたちも、計画にないものが食べたくなる。とはいえ、ここで完璧さを徹底追求する必要は特にはない。

また、在宅勤務には通勤時間が発生しない。ゆえに、その時間を有効に使いながら、朝のうちに、昼食の準備を済ませてしまうこともできる。ピーナッツバターサンドを手早く作り、牛乳をグラスに注ぎ冷蔵庫に入れ、チキンナゲットをお皿にセットする、といったかたちである。

このとき、ランチでいくつかのオプションを選択できるようにしておくと、ランチタイムに子どもたちが『これはいやだ、あれが食べたい!食べたいよー!』と、大騒ぎを始めるリスクを低減させることができる。

高品質のストリーミングコンテンツを活用する

子どもたちに向けた娯楽用のソースとして、ポッドキャスト(Podcast)は過小評価されてきたように思える。ポッドキャストでは実に豊富なコンテンツが提供されており、その中には、子どもたちが多くを学べる優れたコンテンツもたくさんある。

私は以前、ポッドキャストに対する子どもたちの反応を見るために、子どもたちがレゴなどで遊んでいるときに、いくつかのコンテンツをTVでストリーミング再生したことがある。すると彼らは、何をしている最中でも、ピタリと手を止めて、長い間、コンテンツを熱心に見続けたのである。

身体を鍛えることも忘れない

新型コロナウイルスの影響により、米国では(おそらく、世界の各地でも)ジムの多くが休業を余儀なくされた。また、地域によっては、公園でジョギングをするのも難しい状況に置かれている。そのような中で在宅勤務を続けていると、どうしても運動不足に陥りがちだ。

またそれは、子どもたちも同様であり、長期間、学校に通えず、体育の授業も受けられず、公園で遊ぶことも制限されてしまうような状況では、運動不足になり、ストレスも溜まっていく。

そこで、英語版となるものの、お勧めしたい一つが、『コズミック キッズ ヨガ(Cosmic Kids Yoga)』だ。その実践は、子どもたちの運動不足解消には最適な方法であると思う。YouTubeを少し探せば、子どもたち、あるいは10代の若者たちに向けたヨガのトレーニングビデオが数多く見つかると思うので、ぜひ、試していただきたい。

子どもたちとより多くの時間を過ごす

オフィスワークから在宅勤務へとシフトした親たちは、大抵の場合、オフィスにいるのと同じように日中の全ての時間を仕事に使いたいと考える。ただし、今回の事態を客観的、かつ冷静にとらえた場合、子どもと接する時間を、いつもよりも多くとれるチャンスと見なすこともできる。

したがって、例えば、在宅勤務での昼休みをオフィスにいるときよりも長めに取ったり、午後の適当な時間を見つけて30分間の休憩を挟んだりして、子どもたちと接する時間をより多く作ってみてはいかがだろうか。もし、そうすることに罪悪感を抱くのであれば、オフィスにいるときの自分の働き方を改めて思い起こしていただきたい。間違いなく、それほどキツキツの状態で働き続けてはおらず、30分、あるいは1時間程度の休憩時間を子どもたちのために作ったとしても、日々の仕事量にそれほど大きな変化がないことに気づくはずである。

そして、子どもたちと一緒に近所を散歩したり、新しいカードゲームを覚えたり、本を読んだり、炭酸飲料のボトルにメントスを落として、子どもたちを喜ばせたりする。ときには、そんなひとときをスライドショウやビデオのムービーとして記録に残し、この時期を家族で乗り切った記憶をいつでも再生できるようにしておく。そうすることで、ストレスの多い時期を特別な時間へと変えていくことが可能になる。

当たり前の日常が壊され、大きな不安やストレスを感じるのは、子どもたちも大人と一緒である。そんな時期だからこそ、家で働くことが可能な親たちは、やはり、家にいて、子どもたちのそばにいてあげるべきだと強く思う。そのうえで、自分自身、自分の子供、そして他の全ての人に対して普段以上に親切にする。そう振る舞うことで、自分たちを正しい方向へと導き、のちの人生が、これまでとは少し違った、より豊かなものになるのではないだろうか。

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